義兄皇子に囚われて溺愛されてます

浅葱

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三三、在庭園(庭にて)

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 久しぶりに二人きりで、部屋の前の庭でお茶を飲んだ。石造りのテーブルと、凳子(背もたれのない椅子)はひんやりしていてこの季節は気持ちよく感じられる。明玲は明るいところで久しぶりに見た偉仁を新鮮に感じた。

「お仕事、落ち着いてきたのですね」
「ああ、少しだけだがな」

 明玲は、上機嫌で頬が緩んでしまうのを止められないでいた。偉仁が忙しいのはそれだけ民の為に仕事をしている証拠である。だからまたすぐに忙しくなってしまうことは明玲でもわかっていた。蘇王領の発展の為、民の為に日々奔走している偉仁を明玲は誇らしく思う。もちろんそれは綺麗事ばかりではないだろうが、こんなにいい王はいないだろうと明玲は思うのだった。

「不自由はないか」
「ございません。とても……恵まれていると思っています」

 しみじみとそう言うと、偉仁は苦笑した。

「そなたは”いい子”すぎる。もう少しわがままを言ってもいいのだぞ」
「……いいのですか?」
「もちろん」

 明玲は小首を傾げた。最近は偉仁が好きすぎて、自分でも怖いと明玲は思っていた。ふと庭を見回す。月季花(庚申薔薇)が満開だった。毎日なんとなく見ていた景色だが、偉仁と共にいるだけでより鮮やかに映った。
 今なら言ってもいいのではないかと明玲は思う。だめならだめで仕方ない。いずれ自分は偉仁の妻になることが決まっているのだから……などと明玲は自分に言い訳をする。
 偉仁は明玲の返答を待っているようだった。
 明玲は唇を舐める。口の中がからからに乾いてきた。

「……私……偉仁哥ウェイレングァの……」

 頬が熱い。なんと言えば伝わるだろうか。抱いてほしいなんて、そんなことを直接言えるわけがない。明玲は俯いた。

「……本当のお嫁さんに、なりたいです……」
「……あまり可愛いことを言ってくれるな」

 偉仁がそっと明玲の手を取り、その指先に口づけた。

「……っっ……!?」
「私がそなたを抱きたくないと思うのか」

 ぶわり、と音がしたように偉仁から壮絶な色気が醸し出される。色を多分に含んだ眼差しに、明玲は胸を喘がせた。そんな雰囲気は昼間に出していいものではない。

「……哥……」
「今はまだその時ではない。……残念だがな」
「……はい」

 拒絶されたわけではない、と明玲は理解した。
 だが断られたことには変わりない。明玲はぷい、と顔を横に反らした。

「明玲、機嫌を直してくれないか」
「……っっ……別に……」

 へそを曲げたわけではないと明玲は自分自身に弁明する。そんな明玲を偉仁は愛しくてならないというように見つめていた。

「……明玲ミンリン、今宵は共に寝よう」
「……っっ……!? そ、それは……」
「奪いはせぬ。ただそなたを抱いて眠りたいだけだ」

 明玲は目を泳がせた。

「で、でも……趙姐ジャオジエが……」
「婚約はしているぞ?」

 以前共に朝まで眠ってしまった時は趙山琴と周梨に散々怒られた。だがそれはまだ明玲が公主だったからである。今は皇室から籍を抜き、曹家の養女となっている。そしてすでに偉仁との婚約も成った。
 ということは。
 明玲はぼんっと顔から火が出たかのように赤くなった。

「そなたを早く私のものにしてしまいたいのはやまやまだが、それを成すにはまだ準備が必要なのだ。もう少し待っていてくれ」
「……はい」

 切なそうな顔で言われてしまえば聞かざるを得ない。偉仁はなかなか手を離してはくれなかった。



ーーーーー
前話に三国志等の注釈を入れました。興味のある方はご参考ください。
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