16 / 70
15.また今宵も王太子はいらっしゃるそうで
しおりを挟む
「幻術? ああ、あれか……」
好奇心に抗えず、私はとうとうヴィクトーリア様に尋ねてしまった。王太子にかけた幻術とは、どのようなものなのかと。
それは、方向性と人物を固定してかけているという超上級な幻術の為、私は一切出てこないのだそうだ。設定をより細かくすると解かれづらくはなるが、そういった幻術をかけられる者は稀だという。
「シチュエーションを合わせたりする必要はある。かからないこともあるからな。王太子にかけたのは、相手が私だということと、初夜を順調に終えることを目的とした幻術だ。王太子がどれだけ腰を振ったかは知らんが、「獣のように」という表現は男にとって褒め言葉だからあえて使っただけだ。幻術にかかっている者がどんな夢を見たのかはわからない」
「そうなのですか……」
「獣のように」って褒め言葉だったんだ。初めて知った。この国の男たちはなんとも御しがたい。いや、御すつもりもないけどね。
それで、今私は寝室のベッドの上でヴィクトーリア様に抱きしめられています。王太子の部屋から続く扉のドアノブには厳重に鎖がかけられ、開けられないようになっています。どうしてこうなってしまったんだろう。
「あの……ヴィクトーリア様?」
「今はヴィクトールだ。抱かないから、キスだけ……」
「んっ……」
ヴィクトーリア様はキスが好きだという。今日は朝昼兼用の食事をしてから寝室に籠り、こうしてちゅ、ちゅと何度もキスをされていた。甘い、甘いよぉ。
「んんっ……ヴィクトーリア様、本は……?」
唇が離れたタイミングでどうにか聞いてみる。ヴィクトーリア様は少し考えるような顔をした。
「……こうしてキスをしているのもいいが、王宮の図書館に行ってくるか」
「そ、そそそそうしましょう! すぐ行きましょう! 早く行きましょう!」
いつまでもこんな甘い口づけを受け続けていたら身体が溶けてしまう。先ほど本でも読んで過ごすと言っていたのだからそうしなくてはいけないと思う。
ヴィクトーリア様はククッと笑った。
「本当に、ローゼは面白い。……色気がないのも考えものだが」
色気? そんなものはそこらへんの犬にでも食べさせておけばいいんです! 昼の間は甘いのダメ絶対! 夜ならいいのかって? ああううう……。
お仕着せを直し、ヴィクトーリア様のドレスや髪形を直してから私たちは王宮の図書館へ向かった。そうして午後はどうにか穏やかに過ごせたのである。
夕飯は王太子の部屋に招かれた。私はヴィクトーリア様側に立ち、いつでも対応できるように待機した。
「……ヴィクトーリア、ドアが開かなかったがどういうつもりだ?」
王太子が忌々しそうにヴィクトーリア様に聞く。ドア? 私は内心首を傾げた。
「ドア? なんのことですの?」
「しらばっくれるな!」
ドン、と料理の乗ったテーブルを王太子が叩いた。料理がこぼれちゃうかもしれないからやめてほしい。また私の中で王太子の株が下がった。
「私の寝室から繋がるドアのことだ。鍵はかけられないはずだ。どうやって開かなくしたのだ!」
「あら……殿下は昼間から私を訪ねていらっしゃったのですか? 私どうしても身体を休めたかったものですから……だって、昨夜は本当に「獣のように」求められてしまいましたから……」
ヴィクトーリア様が頬を染める。王太子の顔が赤くなった。
「そ、そうか……だが開かなくするのはやりすぎだろう。今度からは開けておくように……」
「夜は開けておきますから……それでご容赦ください」
「そ、それならしかたないな……」
なんかもう見てて乾いた笑いが漏れそうなやりとりだった。これ、もしもヴィクトーリア様が本当に女性で実際に王太子とヤッちゃってたら私の立ち位置って超微妙じゃない? こんなやりとりをしているクセに私を一番愛してるだって? 間違いなく刃傷沙汰になるよね。
「ならば、今宵も参ろう……」
ヴィクトーリア様は目を伏せた。
「はい、お待ちしておりますわ……」
それは恥じらっているようにも映ったが、実際にはめちゃくちゃ笑いをこらえてるということだけはわかっていた。
ヴィクトーリア様は罪な女性(?)だなぁとのん気に思ったけど、王太子がくるということはそういうことなのだ。
またヴィクトーリア様に抱かれちゃうのかなと思ったら、身体の奥がきゅんと疼いた。
好奇心に抗えず、私はとうとうヴィクトーリア様に尋ねてしまった。王太子にかけた幻術とは、どのようなものなのかと。
それは、方向性と人物を固定してかけているという超上級な幻術の為、私は一切出てこないのだそうだ。設定をより細かくすると解かれづらくはなるが、そういった幻術をかけられる者は稀だという。
「シチュエーションを合わせたりする必要はある。かからないこともあるからな。王太子にかけたのは、相手が私だということと、初夜を順調に終えることを目的とした幻術だ。王太子がどれだけ腰を振ったかは知らんが、「獣のように」という表現は男にとって褒め言葉だからあえて使っただけだ。幻術にかかっている者がどんな夢を見たのかはわからない」
「そうなのですか……」
「獣のように」って褒め言葉だったんだ。初めて知った。この国の男たちはなんとも御しがたい。いや、御すつもりもないけどね。
それで、今私は寝室のベッドの上でヴィクトーリア様に抱きしめられています。王太子の部屋から続く扉のドアノブには厳重に鎖がかけられ、開けられないようになっています。どうしてこうなってしまったんだろう。
「あの……ヴィクトーリア様?」
「今はヴィクトールだ。抱かないから、キスだけ……」
「んっ……」
ヴィクトーリア様はキスが好きだという。今日は朝昼兼用の食事をしてから寝室に籠り、こうしてちゅ、ちゅと何度もキスをされていた。甘い、甘いよぉ。
「んんっ……ヴィクトーリア様、本は……?」
唇が離れたタイミングでどうにか聞いてみる。ヴィクトーリア様は少し考えるような顔をした。
「……こうしてキスをしているのもいいが、王宮の図書館に行ってくるか」
「そ、そそそそうしましょう! すぐ行きましょう! 早く行きましょう!」
いつまでもこんな甘い口づけを受け続けていたら身体が溶けてしまう。先ほど本でも読んで過ごすと言っていたのだからそうしなくてはいけないと思う。
ヴィクトーリア様はククッと笑った。
「本当に、ローゼは面白い。……色気がないのも考えものだが」
色気? そんなものはそこらへんの犬にでも食べさせておけばいいんです! 昼の間は甘いのダメ絶対! 夜ならいいのかって? ああううう……。
お仕着せを直し、ヴィクトーリア様のドレスや髪形を直してから私たちは王宮の図書館へ向かった。そうして午後はどうにか穏やかに過ごせたのである。
夕飯は王太子の部屋に招かれた。私はヴィクトーリア様側に立ち、いつでも対応できるように待機した。
「……ヴィクトーリア、ドアが開かなかったがどういうつもりだ?」
王太子が忌々しそうにヴィクトーリア様に聞く。ドア? 私は内心首を傾げた。
「ドア? なんのことですの?」
「しらばっくれるな!」
ドン、と料理の乗ったテーブルを王太子が叩いた。料理がこぼれちゃうかもしれないからやめてほしい。また私の中で王太子の株が下がった。
「私の寝室から繋がるドアのことだ。鍵はかけられないはずだ。どうやって開かなくしたのだ!」
「あら……殿下は昼間から私を訪ねていらっしゃったのですか? 私どうしても身体を休めたかったものですから……だって、昨夜は本当に「獣のように」求められてしまいましたから……」
ヴィクトーリア様が頬を染める。王太子の顔が赤くなった。
「そ、そうか……だが開かなくするのはやりすぎだろう。今度からは開けておくように……」
「夜は開けておきますから……それでご容赦ください」
「そ、それならしかたないな……」
なんかもう見てて乾いた笑いが漏れそうなやりとりだった。これ、もしもヴィクトーリア様が本当に女性で実際に王太子とヤッちゃってたら私の立ち位置って超微妙じゃない? こんなやりとりをしているクセに私を一番愛してるだって? 間違いなく刃傷沙汰になるよね。
「ならば、今宵も参ろう……」
ヴィクトーリア様は目を伏せた。
「はい、お待ちしておりますわ……」
それは恥じらっているようにも映ったが、実際にはめちゃくちゃ笑いをこらえてるということだけはわかっていた。
ヴィクトーリア様は罪な女性(?)だなぁとのん気に思ったけど、王太子がくるということはそういうことなのだ。
またヴィクトーリア様に抱かれちゃうのかなと思ったら、身体の奥がきゅんと疼いた。
12
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる
マチバリ
恋愛
貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。
数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。
書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
【完結】愛する夫の務めとは
Ringo
恋愛
アンダーソン侯爵家のひとり娘レイチェルと結婚し婿入りした第二王子セドリック。
政略結婚ながら確かな愛情を育んだふたりは仲睦まじく過ごし、跡継ぎも生まれて順風満帆。
しかし突然王家から呼び出しを受けたセドリックは“伝統”の遂行を命じられ、断れば妻子の命はないと脅され受け入れることに。
その後……
城に滞在するセドリックは妻ではない女性を何度も抱いて子種を注いでいた。
※完結予約済み
※全6話+おまけ2話
※ご都合主義の創作ファンタジー
※ヒーローがヒロイン以外と致す描写がございます
※ヒーローは変態です
※セカンドヒーロー、途中まで空気です
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
完結(R18 詰んだ。2番目の夫を迎えたら、資金0で放り出されました。
にじくす まさしよ
恋愛
R18。合わないと思われた方はバックお願いします
結婚して3年。「子供はまだいいよね」と、夫と仲睦まじく暮らしていた。
ふたり以上の夫を持つこの国で、「愛する夫だけがいい」と、ふたり目以降の夫を持たなかった主人公。そんなある日、夫から外聞が悪いから新たな夫を迎えるよう説得され、父たちの命もあり、渋々二度目の結婚をすることに。
その3ヶ月後、一番目の夫からいきなり離婚を突きつけられ、着の身着のまま家を出された。
これは、愛する夫から裏切られ、幾ばくかの慰謝料もなく持参金も返してもらえなかった無一文ポジティブ主人公の、自由で気ままな物語。
俯瞰視点あり。
仕返しあり。シリアスはありますがヒロインが切り替えが早く前向きなので、あまり落ち込まないかと。ハッピーエンド。
すれ違いのその先に
ごろごろみかん。
恋愛
転がり込んできた政略結婚ではあるが初恋の人と結婚することができたリーフェリアはとても幸せだった。
彼の、血を吐くような本音を聞くまでは。
ほかの女を愛しているーーーそれを聞いたリーフェリアは、彼のために身を引く決意をする。
*愛が重すぎるためそれを隠そうとする王太子と愛されていないと勘違いしてしまった王太子妃のお話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる