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第4部 四神を愛しなさいと言われました
186.いつ頃離れるのか聞かれてしまいました
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植物園でいろいろな植物の名前と説明を聞いたりして、香子は有意義な午前を過ごした。
あとは自分がもう少し詳しければ、と香子は思った。本当に、香子は中国の歴史や中国茶以外のことはあまりよく知らないのである。
(知識が偏ってるって本当によくないよねぇ……)
そんなことを思いながら白虎の腕の中で過ごし、昼食は四神宮に戻ってから食べることになった。
白雲は要点をまとめたりすることがとてもうまいらしく、景山で働いている者が説明をしていた植物などを書き留めており、更に植物の特徴なども書いたものを香子に渡した。
『白雲ありがとう! すごいわ!』
香子は声を上げて喜んだ。しかも簡単なイラスト付きである。すごい才能だと香子は思った。
『いえ、喜んでいただけたなら何よりです』
白雲がさらりと言う。
眷属だからなんでもできるわけではないということを香子はもう理解しているが、物事の飲み込みなどについてはやはり眷属の方が早いのではないかと香子は思った。
(みーんなハイスペックなんだよね)
何もできないのは自分ばかりだと香子は思い、少しだけ落ち込んだ。
だがすぐに開き直る。
どこの世界に異世界トリップするからとあらゆることに精通しようとする者がいるというのか。異世界トリップは香子からすれば事故である。しかも絶対にありえないと思える事故だ。
事実は小説よりも奇なりというが、そんなことに備えられる者などいない。
そして今日もごはんがおいしかった。
それだけでも香子は満足である。筍料理が出てきて、香子は嬉しかった。冬筍ではないが、シイタケと合わせたうま煮である。料理名としては焼二冬だ。本当は冬菇と冬シイタケを使うからその名前がついている料理である。
『筍もシイタケもおいしい……』
留学中は好きでよく食べていたことを香子は思い出し、笑顔になった。
食べ終えてお茶を飲み、食休みをしてから着替えである。
今日はこれから張錦飛を迎えるのだ。
『話が終わったら、わかっておるな?』
白虎に言われて、香子は苦笑した。
『別に……四神がその頃のことを話してくださるなら張老師にお聞きしなくてもいいのですよ?』
『……我にはわからぬ』
『待っていてくださいますね?』
『うむ…だが香子、今宵は……』
『……それはみなさまと相談してくださいませ!』
それを決めるのは香子ではないと、香子は頬を染めて四神に丸投げした。
そうして張を迎えた。
いつも通り書を習う。筆が苦手すぎてなかなかうまく書けない香子だが、最初の頃よりは見られるようになってきている。
『ここはもう少し細く書きましょう』
『はい』
今日は白虎が見守っている。口を出さないという条件で、書を習っている間は四神が側にいるのだ。そしてその方が張も嬉しそうだった。
(張老師は四神の神官だものね)
正確には玄武の神官だと聞いているが、四神全てが好きらしい。
半刻ばかり習ってから、今日は四神宮の庭部分でお茶にすることにした。お茶をひと二口啜ってから、張が徐に口を開いた。
『花嫁様、花嫁様はいつ頃四神宮を離れるおつもりですかな? ……と聞いてくるように言われてしまいまして』
張はそう言うと、ほっほっほっと笑った。それを聞くとバル〇ン星人みたいだなと香子は毎回思ってしまう。
『そうですね……』
そういえばそんな話もあったと香子は思い出した。だから四神も香子を全力を口説いているのだ。
『もう一度老仏爺にも会いたいですし、本当はこの国の歴史を語れる方が四神の領地にいればいいんですけれども』
『花嫁様はこの国の歴史が好きでしたな』
『はい』
『ではまだこの日、というのは決められていないとおっしゃる?』
『……少なくとも、私は決めていません』
『わかりました。そう伝えておきましょう』
式典のようなことをされるのも香子としては勘弁である。皇帝はやりたいのかもしれないが、そんなことは香子には関係なかった。
『張老師、その……お聞きしたいことがあるのですが』
『なんなりと』
張は頷いた。
『この国の歴史はとても長いと思うのですが、この国より前の隋は短命王朝でした。その前のいろいろな国が乱立した時代では、四神はどこかの国に加護を与えていたのでしょうか?』
『ふむ……』
張は考えるような顔をした。
『そうですな……わしの記憶の限りでは特に加護を与えた国というのは存在しなかったように思います。確か、晋の後の時代に花嫁様が降臨されているはずですが、どの国が保護したとの記録もございませんでしたので、それは四神に聞かれた方がいいのではないでしょうか?』
『そう、ですよね……』
香子も今までの話を聞く限り、いつかの花嫁は三国時代から晋、その後の南北朝時代に降臨しているはずである。そこでどの国も花嫁を保護していないということは、確かに四神の加護は受けられなかっただろうということはわかっていた。
『そういった記録が晋の後では失われていたということなのでしょうか?』
『四神の加護の力を重視していなかった可能性はありますな』
『ああ、確かに……』
それならば確かにありえるかもしれないと香子も思う。
張との話はなかなか有意義だった。
『張老師、本日もありがとうございました』
『わしも楽しかったですぞ。またお会いできますかな?』
『はい、またお声がけさせてください!』
少なくともあと二回ぐらいは会えるのではないか。
だが四神宮を出たらそれこそ今生の別れとなることが予想できて、それは嫌だと香子は思ったのだった。
あとは自分がもう少し詳しければ、と香子は思った。本当に、香子は中国の歴史や中国茶以外のことはあまりよく知らないのである。
(知識が偏ってるって本当によくないよねぇ……)
そんなことを思いながら白虎の腕の中で過ごし、昼食は四神宮に戻ってから食べることになった。
白雲は要点をまとめたりすることがとてもうまいらしく、景山で働いている者が説明をしていた植物などを書き留めており、更に植物の特徴なども書いたものを香子に渡した。
『白雲ありがとう! すごいわ!』
香子は声を上げて喜んだ。しかも簡単なイラスト付きである。すごい才能だと香子は思った。
『いえ、喜んでいただけたなら何よりです』
白雲がさらりと言う。
眷属だからなんでもできるわけではないということを香子はもう理解しているが、物事の飲み込みなどについてはやはり眷属の方が早いのではないかと香子は思った。
(みーんなハイスペックなんだよね)
何もできないのは自分ばかりだと香子は思い、少しだけ落ち込んだ。
だがすぐに開き直る。
どこの世界に異世界トリップするからとあらゆることに精通しようとする者がいるというのか。異世界トリップは香子からすれば事故である。しかも絶対にありえないと思える事故だ。
事実は小説よりも奇なりというが、そんなことに備えられる者などいない。
そして今日もごはんがおいしかった。
それだけでも香子は満足である。筍料理が出てきて、香子は嬉しかった。冬筍ではないが、シイタケと合わせたうま煮である。料理名としては焼二冬だ。本当は冬菇と冬シイタケを使うからその名前がついている料理である。
『筍もシイタケもおいしい……』
留学中は好きでよく食べていたことを香子は思い出し、笑顔になった。
食べ終えてお茶を飲み、食休みをしてから着替えである。
今日はこれから張錦飛を迎えるのだ。
『話が終わったら、わかっておるな?』
白虎に言われて、香子は苦笑した。
『別に……四神がその頃のことを話してくださるなら張老師にお聞きしなくてもいいのですよ?』
『……我にはわからぬ』
『待っていてくださいますね?』
『うむ…だが香子、今宵は……』
『……それはみなさまと相談してくださいませ!』
それを決めるのは香子ではないと、香子は頬を染めて四神に丸投げした。
そうして張を迎えた。
いつも通り書を習う。筆が苦手すぎてなかなかうまく書けない香子だが、最初の頃よりは見られるようになってきている。
『ここはもう少し細く書きましょう』
『はい』
今日は白虎が見守っている。口を出さないという条件で、書を習っている間は四神が側にいるのだ。そしてその方が張も嬉しそうだった。
(張老師は四神の神官だものね)
正確には玄武の神官だと聞いているが、四神全てが好きらしい。
半刻ばかり習ってから、今日は四神宮の庭部分でお茶にすることにした。お茶をひと二口啜ってから、張が徐に口を開いた。
『花嫁様、花嫁様はいつ頃四神宮を離れるおつもりですかな? ……と聞いてくるように言われてしまいまして』
張はそう言うと、ほっほっほっと笑った。それを聞くとバル〇ン星人みたいだなと香子は毎回思ってしまう。
『そうですね……』
そういえばそんな話もあったと香子は思い出した。だから四神も香子を全力を口説いているのだ。
『もう一度老仏爺にも会いたいですし、本当はこの国の歴史を語れる方が四神の領地にいればいいんですけれども』
『花嫁様はこの国の歴史が好きでしたな』
『はい』
『ではまだこの日、というのは決められていないとおっしゃる?』
『……少なくとも、私は決めていません』
『わかりました。そう伝えておきましょう』
式典のようなことをされるのも香子としては勘弁である。皇帝はやりたいのかもしれないが、そんなことは香子には関係なかった。
『張老師、その……お聞きしたいことがあるのですが』
『なんなりと』
張は頷いた。
『この国の歴史はとても長いと思うのですが、この国より前の隋は短命王朝でした。その前のいろいろな国が乱立した時代では、四神はどこかの国に加護を与えていたのでしょうか?』
『ふむ……』
張は考えるような顔をした。
『そうですな……わしの記憶の限りでは特に加護を与えた国というのは存在しなかったように思います。確か、晋の後の時代に花嫁様が降臨されているはずですが、どの国が保護したとの記録もございませんでしたので、それは四神に聞かれた方がいいのではないでしょうか?』
『そう、ですよね……』
香子も今までの話を聞く限り、いつかの花嫁は三国時代から晋、その後の南北朝時代に降臨しているはずである。そこでどの国も花嫁を保護していないということは、確かに四神の加護は受けられなかっただろうということはわかっていた。
『そういった記録が晋の後では失われていたということなのでしょうか?』
『四神の加護の力を重視していなかった可能性はありますな』
『ああ、確かに……』
それならば確かにありえるかもしれないと香子も思う。
張との話はなかなか有意義だった。
『張老師、本日もありがとうございました』
『わしも楽しかったですぞ。またお会いできますかな?』
『はい、またお声がけさせてください!』
少なくともあと二回ぐらいは会えるのではないか。
だが四神宮を出たらそれこそ今生の別れとなることが予想できて、それは嫌だと香子は思ったのだった。
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