異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第1部 四神と結婚しろと言われました

15.四神宮が当座の拠点らしいです

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 四神と香子はどうやら同じように四神宮に部屋が用意されているようだった。
 香子が先に案内された部屋を起点として東西南北に四神の部屋があるらしい。一室一室が広く、香子の部屋も居間と寝室に別れている。香子の部屋から北東と南西に浴室が設けられ、最初香子が使ったのは北東の浴室だったようだ。北西には四神と香子がくつろぐ為の茶室があり、南東には食堂があるという。
 四神宮の入口は南側にあり、大きな赤い門があった。
 そういえばこんな門を通ったな、と朱雀に相変わらず抱き上げられたまま香子はぼんやり思った。

『今宵は我と休むか?』

 朱雀の甘いテノールに囁かれて香子は思いっきり首を振った。

『ご遠慮します!』
『それは残念だ』

 本当に残念とは思っていなさそうな声音で朱雀は部屋まで連れて行ってくれた。
 香子の部屋付きの侍女に、

『先に湯を使わせるように。明日の朝は無理に起こさずともかまわぬ』
『御意』

 朱雀はそう言いつけると釈然としない顔をしている香子の頬に口づけ、部屋を後にした。

『~~~~~~~!!!!』

 香子は顔を真っ赤にしながらも人懐っこそうに手を振る白虎に手を振り返し、柔らかく笑む玄武に会釈した。いつのまにか青龍の姿はない。

『白香様、浴室の支度ができておりますのでこちらへ』

 自分よりもよっぽど見目麗しい侍女たちに連れられて再び北東の浴室へ向かう。侍女たちは当たり前のように香子の体を磨きあげ、今にも透けてしまいそうな夜着を着せ、その上からサン(袖のないシャツのようなもの)を着せかけた。

(これって……)

 部屋に戻された時水差しと酒と杯が置かれているのが目に入る。

『それでは白香バイシャン様、私どもはこれで失礼いたします。なにかございましたら呼び鈴でお知らせくださいませ』

 侍女たちがしずしずと部屋を後にしてから、香子は寝室のベッドのそばに紐が下がっているのを確認した。おそらくこれを引っ張れば侍女たちがいるところに伝わるのだろう。

(これってもしかして初夜ってやつ……?)

 透けてしまいそうな夜着だけでは心許ないので衫は着たまま床に腰かける。

「……疲れた……」

 人の気配がないことを確認して、香子は久しぶりに日本語で呟いた。
 道中の宿でも一人部屋を用意してもらえたが、どれぐらい壁が薄いのかわからなかったので日本語は口から出さないように気をつけていたのだ。

四神しじんにはばれてるよねー……」

 白香と名乗った時に皆微妙な反応をした。
 四神の花嫁、というからには元の世界には戻れないのだろう。よしんば戻れる方法があったとしても教えてくれるとは思えない。それならば戻れないのと一緒だ。
 香子はため息をついた。
 彼らは総じて古めかしい物言いをするが、一応言葉がわかってよかったと思う。四年かけて中国語を習得したのに、異世界でまた一から言語を学び直すなんてことになったら発狂しかねない。
 よく異世界トリップを扱っている物語で、~は語学が得意だから異世界でもひと月で日常会話が大体わかるようになったとかいう記述をしたようなものがある(最初から通じるとか、習得しやすくなっている設定とかならいいと思う)がそんなのはありえないと香子は思う。半年専任の者に習ったとかいうならわかるが、そんな乱暴なことを書くのは言語を学ぶ難しさを知らない者だけだ。
 語学のセンスが余程ある者でもリスニングと会話が大体問題なくなるまでに最低一年はかかる。香子はそれほど語学のセンスがある方ではなかったので、なんとなく大丈夫だと感じるまでに二年近くかかってしまった。それでも香子が一日中中国語のみで暮らせるようになったのは語学系の大学で四年学んだからに他ならない。
 大学卒業の三か月前から卒論を書くことになる為、昼間は中国人の彼氏のところへ行き、夜卒論を書くと言う日々が続いた。まさに中国語漬けの生活である。同じ日本人の友人も大学卒業まではいない者が多かったのでその頃にはほとんど日本語を使わないで過ごしていた。
 だからここ三日間は中国語のみの生活ができた。あとは幸いにも趙文英と言葉が通じたこと。それからここは北京で、皆北京語がベースの標準語を話しているからどうにかなった。

(あれ? そういえば四神も標準語だったけど、彼らの領地ではどうなんだろう?)

 四神としか会話が成り立たないとかさすがに勘弁してほしい。
 そして香子はとても疲れていたせいか他にも大事なことがあったのを忘れていた。
 それに香子が気づくのは翌朝のことである。


※語学に対するこだわりは香子独自のものです。
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