25 / 653
第1部 四神と結婚しろと言われました
25.正論は時に人を激しく傷つけるものです
しおりを挟む
昼食を取っていなかった香子のおなかが空腹を訴えたので、玄武は苦笑しながらも床を出ることにした。内心ずっと床の中で香子を抱きしめていたかったのだが、そんなことを香子が知るはずはない。
玄武は香子の漢服をある程度まで整え、それから自分の漢服を整える。その手慣れた行動に、本当に世話係など必要ないのだなということが見て取れた。
玄武は部屋の中を改めて確認すると香子の為に侍女を呼んでくれた。
『食堂で待っている』
そう言って玄武は香子の手にそっと口づけを落とし、さっそうと部屋を出ていった。
香子は真っ赤になった。
(……キ、キザ~~~~~~!)
あの端正な顔も身長も甘いバリトンも全てがいけないと香子は思う。
(性欲なんて無縁ですって顔してたのに……)
最後まではされていないが結局玄武には全身を触れられ、何度も感じさせられてしまった。
侍女たちに改めて着替えをさせられながら、香子は眠りに落ちるまでの行為を思い出しては赤面した。
そうして身支度が整えられると当たり前のように食堂へ連れていかれる。
(あれ? 今って中途半端な時間じゃないのかな?)
昼食を食べなかったのは仕方ないことだし、夕食には時間が少し早い気がした。けれど食堂に足を踏み入れれば四神が揃っており、その後ろに眷族たちが付き従っている。
『あ、あの……ご迷惑をおかけしました……』
朱雀の面に気遣わしげな色を認めて、香子は自分がどれだけはしたないことをしたのか気づき頭を下げる。
『そなたが気にすることではない。……いろいろあって疲れたのだろう』
そう言われてお茶を勧められ、香子は一口飲んだ。
『おいしい……』
玄武とずっと一緒にいたとわかっているだろうに朱雀はどこまでも優しかった。けれど表面でしか物事を見れない者はいるものだ。
『……そんなに大事な物なら預けなければよかっただろう』
澄んだ声が柔らかい空気を切り裂く。
『青龍!』
『青龍様!』
朱雀と白虎、そして眷族の青藍が鋭い声を発した。
手が震える。香子はどうにか茶椀を取り落とさないようにそっと#卓__テーブル__に戻した。
青龍が言ったことは間違っていない。けれどそれは今更で。
青龍には香子の葛藤や、迷い、困惑は一切伝わらないし、想像もできないのだろう。それまで空腹だった胃が一気に縮んだような気がした。
本当は叫びたかった。
自分は中国人ではなくて、今話している言葉は母国語ですらなくて、だから間違って召喚されてきたのだと。
本当は自分が四神の花嫁のはずはないのだと。
けれど趙文英は優しかったし、玄武も朱雀も嬉しそうだったから言えないでいた。
(なんの為に私、ここにいるんだろう……)
『……そうですね……。離さないでおけばよかった……』
そう言って席を立つ。
『白香! そなたが気にすることではない!』
朱雀が慌てて香子を抱き寄せる。香子はいやいやをするように首を振った。
『私は……本当は……』
『言わなくていい』
そう言って後ろから香子の口を塞いだのは玄武の手だった。あれだけ泣いてもう枯れたと思ったはずの涙が再びぼろぼろと溢れてくる。
玄武は片手で香子の涙をぬぐいながら顔を上げた。
『青龍、そなたの言動は目に余る。これ以上白香を傷つけることしかできぬのなら戻るがよい』
その言葉に青龍、白虎と青龍の眷族である青藍が真っ青になった。青藍が無礼を承知で玄武の前に平伏する。
『どうか! どうかそれだけはお許しを! これは青龍様をきちんとお育て申し上げることができなかった我らの不徳! きちんと言って聞かせますのでどうか、どうか!』
香子は青藍のあまりの剣幕に涙が止まってしまった。そして玄武の手を自分の口から外し、どういうことかと玄武を窺った。
それに朱雀が嘆息した。まだまだ香子がわかりえないことがあるようだった。
玄武は香子の漢服をある程度まで整え、それから自分の漢服を整える。その手慣れた行動に、本当に世話係など必要ないのだなということが見て取れた。
玄武は部屋の中を改めて確認すると香子の為に侍女を呼んでくれた。
『食堂で待っている』
そう言って玄武は香子の手にそっと口づけを落とし、さっそうと部屋を出ていった。
香子は真っ赤になった。
(……キ、キザ~~~~~~!)
あの端正な顔も身長も甘いバリトンも全てがいけないと香子は思う。
(性欲なんて無縁ですって顔してたのに……)
最後まではされていないが結局玄武には全身を触れられ、何度も感じさせられてしまった。
侍女たちに改めて着替えをさせられながら、香子は眠りに落ちるまでの行為を思い出しては赤面した。
そうして身支度が整えられると当たり前のように食堂へ連れていかれる。
(あれ? 今って中途半端な時間じゃないのかな?)
昼食を食べなかったのは仕方ないことだし、夕食には時間が少し早い気がした。けれど食堂に足を踏み入れれば四神が揃っており、その後ろに眷族たちが付き従っている。
『あ、あの……ご迷惑をおかけしました……』
朱雀の面に気遣わしげな色を認めて、香子は自分がどれだけはしたないことをしたのか気づき頭を下げる。
『そなたが気にすることではない。……いろいろあって疲れたのだろう』
そう言われてお茶を勧められ、香子は一口飲んだ。
『おいしい……』
玄武とずっと一緒にいたとわかっているだろうに朱雀はどこまでも優しかった。けれど表面でしか物事を見れない者はいるものだ。
『……そんなに大事な物なら預けなければよかっただろう』
澄んだ声が柔らかい空気を切り裂く。
『青龍!』
『青龍様!』
朱雀と白虎、そして眷族の青藍が鋭い声を発した。
手が震える。香子はどうにか茶椀を取り落とさないようにそっと#卓__テーブル__に戻した。
青龍が言ったことは間違っていない。けれどそれは今更で。
青龍には香子の葛藤や、迷い、困惑は一切伝わらないし、想像もできないのだろう。それまで空腹だった胃が一気に縮んだような気がした。
本当は叫びたかった。
自分は中国人ではなくて、今話している言葉は母国語ですらなくて、だから間違って召喚されてきたのだと。
本当は自分が四神の花嫁のはずはないのだと。
けれど趙文英は優しかったし、玄武も朱雀も嬉しそうだったから言えないでいた。
(なんの為に私、ここにいるんだろう……)
『……そうですね……。離さないでおけばよかった……』
そう言って席を立つ。
『白香! そなたが気にすることではない!』
朱雀が慌てて香子を抱き寄せる。香子はいやいやをするように首を振った。
『私は……本当は……』
『言わなくていい』
そう言って後ろから香子の口を塞いだのは玄武の手だった。あれだけ泣いてもう枯れたと思ったはずの涙が再びぼろぼろと溢れてくる。
玄武は片手で香子の涙をぬぐいながら顔を上げた。
『青龍、そなたの言動は目に余る。これ以上白香を傷つけることしかできぬのなら戻るがよい』
その言葉に青龍、白虎と青龍の眷族である青藍が真っ青になった。青藍が無礼を承知で玄武の前に平伏する。
『どうか! どうかそれだけはお許しを! これは青龍様をきちんとお育て申し上げることができなかった我らの不徳! きちんと言って聞かせますのでどうか、どうか!』
香子は青藍のあまりの剣幕に涙が止まってしまった。そして玄武の手を自分の口から外し、どういうことかと玄武を窺った。
それに朱雀が嘆息した。まだまだ香子がわかりえないことがあるようだった。
112
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる