異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
61 / 653
第1部 四神と結婚しろと言われました

61.勉強した甲斐があったというものです

しおりを挟む
 それにしても相手は神様なので香子の言うこと(どんな言語であっても)が理解できるというのはなんとなく納得してしまうのだが、一体どういうメカニズムなのだろうかとは考えてしまう。

『私が日本語で話しても理解できるというのはわかりましたが、どういう風に聞こえるものなのですか?』

 聞くと青龍は難しい表情をした。どう答えたらいいのかわからないのだろう。

『うーんと、私がこうやって話しているのはそのまま聞こえて理解できますよね? でも日本語で話すと言語が違うからどういう風に理解しているのかなーって……』

 香子が考えながら言葉を紡ぐと、青龍は香子の髪を撫でた。

『そうだな……なんといっていいのかわからないのだが、我らは人の声を聞く時表面の音だけでなく頭の中から言っていることを聞いているのだ』
(……え……?)

 やっぱりよくわからない。
 それは言語中枢というより心を読んでいる、という状態なのだろうか。

『えーと、それってもしかして人の心を読んでるってことですかね?』
『そうだな、それに一番近いかもしれぬ』

 さらっと言われてなんだか気が遠くなりそうである。読まれている方はたまったものではないが、青龍は大したことではないように答えた。

『だが、そなたの考えまでは読めぬ』
「……え……?」

 それはいったいどういうことだろうか。香子は青龍の顔を窺った。

『人の考えというのは透けて見えるが、そなたの考えはわからぬ。唯一そなたが元の言葉を紡ぐ時は一瞬だけ垣間見えるが、何故かそなたがこちらの言葉を使っている時はまるで霧がかかったようにその内心までは読めぬのだ』

 それは、香子の中国語はあくまで外国語に過ぎないということだろうか。香子は難しい顔をした。

『だが、本来花嫁の思考は我らにはわからぬものだと玄武兄や朱雀兄は言う。そしてそれは我らに与えられた試練なのだと』
『試練?』

 香子はいぶかしげに聞き返した。

『そうだ。我らには人の考えていることがわかる。そなたの考えまでわかってしまったらそなたの望むように行動をすることも可能だ。それでは意味がないということだろう』

 それはそれで一理あると香子も思う。

『でも私が日本語を使っている時は見える、んですよね?』
『その時だけだが。おそらくは意志の疎通に必要な情報を引き出す必要があるのだろう』

 ようは自動翻訳みたいなものか、と香子は自分なりに理解する。

『……しつこいようですけど、私が中国語を使っている時は見えない、んですか?』
『時と場合による。おそらくそなたにとって言いづらいことや複雑な会話をする時には見えることもある』

 ということは。
 香子は頭をフル回転させる。

『確か他国の者が参った時、自分の言語からこの国の言語に頭の中で訳して話すということを聞いたことがある。だがそなたにはそれがほとんどない』

 香子は青龍の言葉に確信した。

(日本語から中国語に訳しながら話してる時は見えるけど、中国語を中国語で考えて話してる時は見えないのかもしれない)

 あまり会話で使用しない単語は確かに思い出しながら話している気がするので、その際には日本語で文章の構築をしているのだろう。
 ということは大体中国語で物を考えて話せているということだ。
 香子は嬉しくなった。
 大学卒業まで勉強した甲斐があったというものである。

『大体わかりました、ありがとうございます』

 香子は口元に笑みを浮かべた。それに青龍も柔らかい笑みを浮かべる。

(ってことは会話しててもおかしなものを感じたってことだよね?)

 頭の中が見えたり見えなかったりするというのはなんとも落ち着かない気がする。
 まだ若い青龍が香子をして得体がしれないものと断じるには十分だったわけだ。
 そんなことを考えていると再び青龍に抱き込まれた。

『まだ早い。もう少し寝ていよう』

 そう言って青龍は香子の目尻に口づける。
 どんなに得体がしれなくても香子を花嫁だと確信した今、青龍を押し止めるものはないということに彼女はまだ気づいていなかった。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

処理中です...