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第1部 四神と結婚しろと言われました
77.女って怖いのです(侍女、香子視点)
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まもなく夕食の時間だったが香子はまだ目覚める様子がなかった。
このまま寝せておいた方がいいような気もするが、香子は食べることが好きなようなので起こした方がいいのか侍女たちも考えてしまう。侍女の一人が勇気を振り絞って朱雀の室に聞きに行くことにした。本当は玄武に聞きに行くのが順当なのだろうが、玄武は室に眷族を近寄らせない。だが朱雀は室の前に紅夏と黒月を控えさせているので声をかけやすいのだった。
おそるおそる声をかけてきた侍女に、紅夏は『朱雀様に聞いてきましょう』と応じてくれた。室の前で待つ間は長くないものの、黒月と二人だけでいる場の居心地は決してよくはない。四神の眷族が人間に絡むとは思えないが香子に対していい感情を持っていないように見えるだけに、できるだけ視線を向けないようにしていた。
黒月はそんな香子付の侍女の様子にいらいらした感情を抑えきれなかった。
『……なにか言いたいことがあるなら言ったらどうだ』
侍女はびくりとした。まさか黒月から声をかけられるとは全く思ってもみなかったからである。
『妾は別に……』
そう言いながらも侍女は少しそれを不満に思う。ここ何日か観察しているだけで、黒月が玄武に特別な感情を抱いているということが見てとれた。だから玄武が溺愛している香子を目の敵にしているのだろう。きっと朱雀もそれに気付いていて玄武の側に黒月を戻さないのだろうと思った。
それにしても魔が差したとしか思えない。
『……何故花嫁様を睨まれるのですか?』
侍女は黒月への不満を口に出していた。あっと思って口を押さえた時はもう遅い。黒月の顔が怒気で真っ赤になった。
『お前のような者に何がわかる……!』
『黒月、控えよ』
黒月が怒鳴った時扉が開き、紅夏が姿を現した。侍女があからさまにほっとした顔をする。それすらも黒月にとってはいまいましかった。
『ですが……!』
『我らに比べ人は弱いもの。慈しむことができぬのならば領地に戻るがいい』
紅夏の厳しい科白に黒月は唇を噛んだ。紅夏は侍女に向き直った。
『侍女殿、黒月の非礼をお詫びする。まだ成人していないとはいえあまりに失礼な物言いであった。どうかこらえていただきたい』
侍女は戸惑った。紅夏に丁寧に謝られたということもあるが、まさか黒月が成人していないとは思わなかった。
この国の女子の成人年齢は十五歳である。だが黒月の体つきはどう見てもとっくに成人しているそれである。
(15歳未満にはとても見えないけど……)
侍女がそう思った時、
『すいません、何かあったんですか?』
と香子の声がした。侍女は弾かれたようにそちらへ顔を巡らせる。その表情は明らかに焦っていた。黒月の表情があからさまに顰められたのを見て、香子はなんとなく状況を察した。
切れ切れに聞こえていたというのもあるが、なんとも厄介なことになっているようである。
『いえ、その、なんでもございません……』
侍女が顔を俯かせて言う。
香子は寝起きであまり頭が働いていなかった。随分と寝てしまったこともあり夜なかなか眠れないだろうとも思う。
(めんどくさいなー……)
通りかかったもののしばらくほっておこうかと思っていたのだが、何故か黒月と香子の部屋付きの侍女と揉めているように見える。
紅夏は平然とした顔をしているがこういうことは男が仲裁できることでもない。だからといって朱雀の室の前でやりあうのもなんなので移動することにした。
『黒月さん、なにか私に対して不満があるのでしたらお聞きします。ここではなんなのでせめて茶室の方へ行きませんか?』
『花嫁様……!』
紅夏が慌てたように香子を止めようとするのを視線で制する。伊達に中国で四年間揉まれてきていない。
侍女がおろおろしているのはわかっていたがこれは香子と黒月の問題である。他の人を巻き込んでいいわけはなかった。
このまま寝せておいた方がいいような気もするが、香子は食べることが好きなようなので起こした方がいいのか侍女たちも考えてしまう。侍女の一人が勇気を振り絞って朱雀の室に聞きに行くことにした。本当は玄武に聞きに行くのが順当なのだろうが、玄武は室に眷族を近寄らせない。だが朱雀は室の前に紅夏と黒月を控えさせているので声をかけやすいのだった。
おそるおそる声をかけてきた侍女に、紅夏は『朱雀様に聞いてきましょう』と応じてくれた。室の前で待つ間は長くないものの、黒月と二人だけでいる場の居心地は決してよくはない。四神の眷族が人間に絡むとは思えないが香子に対していい感情を持っていないように見えるだけに、できるだけ視線を向けないようにしていた。
黒月はそんな香子付の侍女の様子にいらいらした感情を抑えきれなかった。
『……なにか言いたいことがあるなら言ったらどうだ』
侍女はびくりとした。まさか黒月から声をかけられるとは全く思ってもみなかったからである。
『妾は別に……』
そう言いながらも侍女は少しそれを不満に思う。ここ何日か観察しているだけで、黒月が玄武に特別な感情を抱いているということが見てとれた。だから玄武が溺愛している香子を目の敵にしているのだろう。きっと朱雀もそれに気付いていて玄武の側に黒月を戻さないのだろうと思った。
それにしても魔が差したとしか思えない。
『……何故花嫁様を睨まれるのですか?』
侍女は黒月への不満を口に出していた。あっと思って口を押さえた時はもう遅い。黒月の顔が怒気で真っ赤になった。
『お前のような者に何がわかる……!』
『黒月、控えよ』
黒月が怒鳴った時扉が開き、紅夏が姿を現した。侍女があからさまにほっとした顔をする。それすらも黒月にとってはいまいましかった。
『ですが……!』
『我らに比べ人は弱いもの。慈しむことができぬのならば領地に戻るがいい』
紅夏の厳しい科白に黒月は唇を噛んだ。紅夏は侍女に向き直った。
『侍女殿、黒月の非礼をお詫びする。まだ成人していないとはいえあまりに失礼な物言いであった。どうかこらえていただきたい』
侍女は戸惑った。紅夏に丁寧に謝られたということもあるが、まさか黒月が成人していないとは思わなかった。
この国の女子の成人年齢は十五歳である。だが黒月の体つきはどう見てもとっくに成人しているそれである。
(15歳未満にはとても見えないけど……)
侍女がそう思った時、
『すいません、何かあったんですか?』
と香子の声がした。侍女は弾かれたようにそちらへ顔を巡らせる。その表情は明らかに焦っていた。黒月の表情があからさまに顰められたのを見て、香子はなんとなく状況を察した。
切れ切れに聞こえていたというのもあるが、なんとも厄介なことになっているようである。
『いえ、その、なんでもございません……』
侍女が顔を俯かせて言う。
香子は寝起きであまり頭が働いていなかった。随分と寝てしまったこともあり夜なかなか眠れないだろうとも思う。
(めんどくさいなー……)
通りかかったもののしばらくほっておこうかと思っていたのだが、何故か黒月と香子の部屋付きの侍女と揉めているように見える。
紅夏は平然とした顔をしているがこういうことは男が仲裁できることでもない。だからといって朱雀の室の前でやりあうのもなんなので移動することにした。
『黒月さん、なにか私に対して不満があるのでしたらお聞きします。ここではなんなのでせめて茶室の方へ行きませんか?』
『花嫁様……!』
紅夏が慌てたように香子を止めようとするのを視線で制する。伊達に中国で四年間揉まれてきていない。
侍女がおろおろしているのはわかっていたがこれは香子と黒月の問題である。他の人を巻き込んでいいわけはなかった。
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