異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第1部 四神と結婚しろと言われました

115.愛しい人(玄武、朱雀視点)

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 香子と黒月が浴室に行った後、四神は今後の話し合いをしてから解散した。
 白虎と青龍のスタンスは変わらず、香子の望むように、とのことだった。香子の香りが落ち着いたということもあるのだろう。そして彼らはそこまでして香子を奪いたい段階にはないということも大きい。
 ただもちろん白虎と青龍にも下心はある。あの香子のことだからきっと、玄武や朱雀にただ流されるだけでないことは想像できる。この間のように喧嘩をしたら、その逃げ道として少しはいい目を見ることもできるかもしれないとは思っていた。そんな白虎と青龍の考えを読めないはずもなく、朱雀に促され玄武は朱雀の室で今夜のことを考えていた。

『玄武兄は香子シャンズが我に抱かれても構いませぬか?』
『香子はそなたのことも好きだと言っている』

 そう言う玄武は昨日より落ち着いているように見えた。一度香子を抱いたことで玄武も多少安定したようだった。単純と言われればそれまでかもしれないが、惚れた相手と想い(身体も含む)を通い合わせられることほど幸せなことはないと朱雀も思う。

『では後ほど香子の室に迎えに参りましょう』
『そうしてやるといい』

 玄武の言葉に朱雀は目を見開いた。これまでと同じように玄武と共に香子を愛するものだとばかり思っていたからだった。

『……玄武兄は、香子を抱かないのですか……?』
『我はそなたに助けてもらったが、そなたは我がいなくても香子を十分感じさせることができるだろう』

 それが玄武の気づかいだということは朱雀にもわかる。
 朱雀は笑んだ。

『いえ、できましたら玄武兄も共にお願いします。その代わり、朝までは我が香子と過ごさせてください』

 玄武はそれに頷いた。
 あの騙し打ちのような朝以外、朱雀は香子と朝を過ごしたことはない。
 四神は花嫁に対する愛情が非常に深い。香子に許されるなら朝から晩まで抱いていたいと思っているのが四神である。だがまだそれは香子に言えるような段階ではない。だがなんとなく四神が常に香子と共にいたがっているのは香子にもわかっている。ただ今はまだそれを叶えられるような状況ではないので香子は黙殺していた。
 紅夏が入れたお茶を啜り、玄武は香子の所在を探った。
 一度肌を合わせたということもあるが、いつもより確認は早かった。

『部屋に戻っているようだな』
『ではしばらくしましたら迎えに参りましょう』

 少しは一人きりの時間も与えた方がいいのはわかっている。いくら想いを通い合わせたといえども常に側にいれば香子の息が詰まってしまうだろう。そういうところも以前の花嫁とは違うと朱雀は思う。
 彼女の置かれた環境の違いや、こちらに来た時の年齢などもあるだろうが、先代の花嫁であった張燕は明らかに四神に依存していた。四神とその眷族以外のことは一切気にも留めず、ただひたすらに彼らの愛を受け入れてくれた。
 それが悪いと朱雀は思わない。というよりも四神からすればどこまでも理想の相手であったと言えよう。
 対する香子はいろいろなことを考えている。好奇心は強いが線引きはそれなりにできる。だが情が深いので、やはりいずれ泣かせることにはなるだろうと玄武も朱雀も思っていた。

(せめて共にある間だけでも愛し続けたい)

 愛しい者の泣き顔など、誰が見たいと思うのだろうか。

『!?』

 玄武が眉をひそめた。

『泣いている……』

 呟きに朱雀もまた眉をひそめた。玄武ほどではないが香子の感情の揺れを探る。
 ひどく混乱しているように感じられ、それも仕方ないと思うことしかできない。
 玄武はしばらく目を閉じてそのままでおり、やがてゆっくりと立ち上がった。朱雀もその後ろに付き従う。
 本当ならすぐに飛び出して行きたいところを玄武は耐えた。
 泣くことで楽になることもある。玄武が行って泣きやませてしまうのは簡単だったが、それではいけない時もあるのだ。
 感情が落ち着いた頃合いを見計らって、二神は移動した。
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