115 / 653
第1部 四神と結婚しろと言われました
115.愛しい人(玄武、朱雀視点)
しおりを挟む
香子と黒月が浴室に行った後、四神は今後の話し合いをしてから解散した。
白虎と青龍のスタンスは変わらず、香子の望むように、とのことだった。香子の香りが落ち着いたということもあるのだろう。そして彼らはそこまでして香子を奪いたい段階にはないということも大きい。
ただもちろん白虎と青龍にも下心はある。あの香子のことだからきっと、玄武や朱雀にただ流されるだけでないことは想像できる。この間のように喧嘩をしたら、その逃げ道として少しはいい目を見ることもできるかもしれないとは思っていた。そんな白虎と青龍の考えを読めないはずもなく、朱雀に促され玄武は朱雀の室で今夜のことを考えていた。
『玄武兄は香子が我に抱かれても構いませぬか?』
『香子はそなたのことも好きだと言っている』
そう言う玄武は昨日より落ち着いているように見えた。一度香子を抱いたことで玄武も多少安定したようだった。単純と言われればそれまでかもしれないが、惚れた相手と想い(身体も含む)を通い合わせられることほど幸せなことはないと朱雀も思う。
『では後ほど香子の室に迎えに参りましょう』
『そうしてやるといい』
玄武の言葉に朱雀は目を見開いた。これまでと同じように玄武と共に香子を愛するものだとばかり思っていたからだった。
『……玄武兄は、香子を抱かないのですか……?』
『我はそなたに助けてもらったが、そなたは我がいなくても香子を十分感じさせることができるだろう』
それが玄武の気づかいだということは朱雀にもわかる。
朱雀は笑んだ。
『いえ、できましたら玄武兄も共にお願いします。その代わり、朝までは我が香子と過ごさせてください』
玄武はそれに頷いた。
あの騙し打ちのような朝以外、朱雀は香子と朝を過ごしたことはない。
四神は花嫁に対する愛情が非常に深い。香子に許されるなら朝から晩まで抱いていたいと思っているのが四神である。だがまだそれは香子に言えるような段階ではない。だがなんとなく四神が常に香子と共にいたがっているのは香子にもわかっている。ただ今はまだそれを叶えられるような状況ではないので香子は黙殺していた。
紅夏が入れたお茶を啜り、玄武は香子の所在を探った。
一度肌を合わせたということもあるが、いつもより確認は早かった。
『部屋に戻っているようだな』
『ではしばらくしましたら迎えに参りましょう』
少しは一人きりの時間も与えた方がいいのはわかっている。いくら想いを通い合わせたといえども常に側にいれば香子の息が詰まってしまうだろう。そういうところも以前の花嫁とは違うと朱雀は思う。
彼女の置かれた環境の違いや、こちらに来た時の年齢などもあるだろうが、先代の花嫁であった張燕は明らかに四神に依存していた。四神とその眷族以外のことは一切気にも留めず、ただひたすらに彼らの愛を受け入れてくれた。
それが悪いと朱雀は思わない。というよりも四神からすればどこまでも理想の相手であったと言えよう。
対する香子はいろいろなことを考えている。好奇心は強いが線引きはそれなりにできる。だが情が深いので、やはりいずれ泣かせることにはなるだろうと玄武も朱雀も思っていた。
(せめて共にある間だけでも愛し続けたい)
愛しい者の泣き顔など、誰が見たいと思うのだろうか。
『!?』
玄武が眉をひそめた。
『泣いている……』
呟きに朱雀もまた眉をひそめた。玄武ほどではないが香子の感情の揺れを探る。
ひどく混乱しているように感じられ、それも仕方ないと思うことしかできない。
玄武はしばらく目を閉じてそのままでおり、やがてゆっくりと立ち上がった。朱雀もその後ろに付き従う。
本当ならすぐに飛び出して行きたいところを玄武は耐えた。
泣くことで楽になることもある。玄武が行って泣きやませてしまうのは簡単だったが、それではいけない時もあるのだ。
感情が落ち着いた頃合いを見計らって、二神は移動した。
白虎と青龍のスタンスは変わらず、香子の望むように、とのことだった。香子の香りが落ち着いたということもあるのだろう。そして彼らはそこまでして香子を奪いたい段階にはないということも大きい。
ただもちろん白虎と青龍にも下心はある。あの香子のことだからきっと、玄武や朱雀にただ流されるだけでないことは想像できる。この間のように喧嘩をしたら、その逃げ道として少しはいい目を見ることもできるかもしれないとは思っていた。そんな白虎と青龍の考えを読めないはずもなく、朱雀に促され玄武は朱雀の室で今夜のことを考えていた。
『玄武兄は香子が我に抱かれても構いませぬか?』
『香子はそなたのことも好きだと言っている』
そう言う玄武は昨日より落ち着いているように見えた。一度香子を抱いたことで玄武も多少安定したようだった。単純と言われればそれまでかもしれないが、惚れた相手と想い(身体も含む)を通い合わせられることほど幸せなことはないと朱雀も思う。
『では後ほど香子の室に迎えに参りましょう』
『そうしてやるといい』
玄武の言葉に朱雀は目を見開いた。これまでと同じように玄武と共に香子を愛するものだとばかり思っていたからだった。
『……玄武兄は、香子を抱かないのですか……?』
『我はそなたに助けてもらったが、そなたは我がいなくても香子を十分感じさせることができるだろう』
それが玄武の気づかいだということは朱雀にもわかる。
朱雀は笑んだ。
『いえ、できましたら玄武兄も共にお願いします。その代わり、朝までは我が香子と過ごさせてください』
玄武はそれに頷いた。
あの騙し打ちのような朝以外、朱雀は香子と朝を過ごしたことはない。
四神は花嫁に対する愛情が非常に深い。香子に許されるなら朝から晩まで抱いていたいと思っているのが四神である。だがまだそれは香子に言えるような段階ではない。だがなんとなく四神が常に香子と共にいたがっているのは香子にもわかっている。ただ今はまだそれを叶えられるような状況ではないので香子は黙殺していた。
紅夏が入れたお茶を啜り、玄武は香子の所在を探った。
一度肌を合わせたということもあるが、いつもより確認は早かった。
『部屋に戻っているようだな』
『ではしばらくしましたら迎えに参りましょう』
少しは一人きりの時間も与えた方がいいのはわかっている。いくら想いを通い合わせたといえども常に側にいれば香子の息が詰まってしまうだろう。そういうところも以前の花嫁とは違うと朱雀は思う。
彼女の置かれた環境の違いや、こちらに来た時の年齢などもあるだろうが、先代の花嫁であった張燕は明らかに四神に依存していた。四神とその眷族以外のことは一切気にも留めず、ただひたすらに彼らの愛を受け入れてくれた。
それが悪いと朱雀は思わない。というよりも四神からすればどこまでも理想の相手であったと言えよう。
対する香子はいろいろなことを考えている。好奇心は強いが線引きはそれなりにできる。だが情が深いので、やはりいずれ泣かせることにはなるだろうと玄武も朱雀も思っていた。
(せめて共にある間だけでも愛し続けたい)
愛しい者の泣き顔など、誰が見たいと思うのだろうか。
『!?』
玄武が眉をひそめた。
『泣いている……』
呟きに朱雀もまた眉をひそめた。玄武ほどではないが香子の感情の揺れを探る。
ひどく混乱しているように感じられ、それも仕方ないと思うことしかできない。
玄武はしばらく目を閉じてそのままでおり、やがてゆっくりと立ち上がった。朱雀もその後ろに付き従う。
本当ならすぐに飛び出して行きたいところを玄武は耐えた。
泣くことで楽になることもある。玄武が行って泣きやませてしまうのは簡単だったが、それではいけない時もあるのだ。
感情が落ち着いた頃合いを見計らって、二神は移動した。
47
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる