異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第1部 四神と結婚しろと言われました

121.信じられぬ夜(侍女頭視点) ※R13

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 誰かと肌を重ねるのは久しぶりだった。

 四神宮に勤める者は仕事こそできるが最初から出世街道を外れている者が多い。四神宮の侍女頭である陳秀美チェンシュウメイもまたそれほどいい家柄の出身ではなかった。
 彼女は十五歳で一度嫁いだが、夫が二年で身罷り、しかもその間に子ができなかったことで実家に戻っていた。そのまま実家にいてもただの厄介者でしかないことから働きに出ることにし、運よくこの四神宮に勤めることができたのである。
 それから三年、同僚が次々と辞めていく中彼女だけは主がめったに訪れることのない四神宮に勤め続けた。前の侍女頭が辞める際彼女の真面目な仕事ぶりを買って侍女頭に推してくれ、それから約一年が経とうとしている。
 気がつけば陳はもう二十一歳になっていた。
 それほど家柄もよくはなく、しかも夫を亡くして出戻った身である。このままずっと独身で四神宮に勤め続けるのだろうと思っていただけに、白雲からの誘いは青天の霹靂だった。
 四神宮に仕える使用人たちには四神宮のすぐ近くに寮が用意されている。侍女頭が使っている部屋は、大部屋の中に薄い板で仕切りをされただけの半個室のようなところだった。大部屋は他の侍女たちが使い、寝る時以外は侍女頭も含め大部屋でわきあいあいと過ごしている。
 侍女たちや護衛たちはみなそれほど家柄がいいわけではないので仲間意識が強かった。
 四神の眷族もこの寮で一人ずつ個室が与えられているがあまり使われた形跡はない。人ではないということもあるだろうが、彼らはあまり休息を必要としていないようだった。
 女性ということもあり黒月は使っているようだが、それでもかなり朝早く出ていく。
 いつもなら冷静沈着で通っている陳も今夜だけはどうしたらいいのかわからなくて困っていた。香子の湯あみの準備ということで休憩していた侍女たちが大部屋を出ていく。

(迎えに来られるとおっしゃられていたけど……)

 本当に白雲は自分を呼びに来るのだろうか。こられるとしたらいつなのだろうか。
 さすがに連れていかれる姿を他の侍女たちに見られたくはない。そうでなくても二十一歳というのはもう婚期を逃した歳なのだ。家柄がよければまだ貰い手はあるかもしれないが、それもそろそろ困難であるといえた。
 落ち着きなく大部屋の中できょろきょろと辺りを見回していると、部屋の扉を叩く音がした。陳は弾かれたように扉へ向かう。

「はい……」

 おそるおそる返事をすると、いきなり扉が開いて腕を引かれた。

「……あっ……!」

 驚いて顔をあげると、目の前に白銀の髪の、金の瞳を持った美丈夫がいた。

「遅くなってすまぬな。行くぞ」

 そう言って白雲は先ほどよりは優しく陳の腕を引いた。陳は信じられない気持ちでふらふらと白雲に着いて行き、眷族に用意されている部屋のベッドにいきなり押し倒された。

「そなた、経験は?」
「……結婚はしていましたので……」

 そう言うと白雲は眉をひそめた。慌てて説明を加える。

「……二年で死別したのです」
「そうか、すまなかった」

 そう言いながら唇が重なってくる。白雲の舌は少しざらりとしていた。痛みを感じるほどではなかったが、ほんの少しだけ陳は驚いた。
 やはりこの方は人ではない。
 伊達に長生きはしてない白雲は、ひどく甘く陳を啼かせた。夫が亡くなってから誰とも肌を合わせていなかった陳にとって白雲自身を受け入れるのはきつかったが、それも含めて最後にははしたないぐらい喘がされてしまった。
 慣れない快感にびくびくと震える陳を優しく抱きしめて、白雲は少し考えるような顔をして言った。

「そなた、我の妻にならぬか?」
「……は……?」

 陳は耳を疑った。

「返事は急がぬ。だが、花嫁様が(お相手を)決められた時にはそなたを連れていく」
「……え……」

 それは決定事項ではないのだろうか。陳の返事は必要ないということではないのだろうか。
 陳が頭の中でぐるぐる考えていると、

「もう眠れ。明日は花嫁様の状況を報告してもらわねばならん」

 そう言った白雲に抱き寄せられる。

(明日? 花嫁様の色香のことかしら……?)

 陳は戸惑いながらもその腕の中で眠ってしまった。久しぶりに心地よい思いができた喜びと共に白雲に縋りつきながら。
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