異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第1部 四神と結婚しろと言われました

122.真相究明は骨が折れます(趙、王視点)

 趙文英と王英明は頭を抱えていた。
 四神宮の侍女に扮した女たちは、堂々とはるばる皇帝の兄弟が住む宮の近くからやってきたのだという。そして彼女たちは朱雀の室のテーブルに料理を並べると、まっすぐに太極宮に戻ったというから驚きだ。太極宮に住まうのは皇帝の一番下の妹である昭正公主である。
 昭正公主は今年で十五歳になる。官僚の息子である徐衛と婚約しており、十五歳になる月に嫁ぐことが決まっていた。この公主が嫁いでしまえばもう宮廷内に皇帝の兄弟はいなくなる。もちろん弟たちは皇帝を助ける為にいつでも領地から馳せ参じるし、従兄弟たちの中には宮廷に仕えている者もいる。
 それにしても、である。

「……何を考えていらっしゃるのであろうな……」

 王がため息交じりに呟いた。数々の証言を照らし合わせると主犯は昭正公主としか思えない。一応このことは中書令にはすでに伝えてある。中書令は冷たい目で『そうですか』と言っただけだが、しばらくもしないうちに皇帝の執務室のある棟に向かったというから、すでに皇帝へ報告はされているだろう。

「……白香バイシャン様が全く気にされていないのは僥倖だったが……下手をすると四神の怒りを買うところだったな……」

 ただ今回のおかげで警備体制に穴があったことは認めざるを得ない。彼女たちは趙が四神宮の前を離れる時間を正確に把握して、堂々と正面から四神宮に足を踏み入れたのである。

「しかし、よく護衛が気付かなかったものだ」
「四神宮に仕える侍女の衣装を身に着けていたことと、ちょうど朝食の時間だったということが大きいだろう。今後は見慣れぬ者が入ってこようとしたら決して入れぬようきつく言い渡しておいた」

 趙の憤りを含んだ科白に王は頷いた。
 おそらく護衛たちも長いこと主人不在の宮に勤めていた為油断していたのだろう。

「一度四神宮に仕える者を集めて、彼らの置かれている状況を説明した方がよさそうだな」
「ああ、近々場を設ける予定だ。いくら朱雀様の室が一番入口に近い位置にあるからといって理由にはならぬ」

 そこで王は軽く首を傾げた。

「しかし何故朱雀様のところに花嫁様がいることがわかったのだろうな」

 王の科白に趙ははっとした。今朝香子が朱雀の室にいることを知っていたのは知らせを受けた侍女たちと趙ぐらいのものである。そうは言っても朝方朱雀の室の前に真っ赤に染まった床単シーツが出されていたことから、おそらく四神宮に仕える者たち全てが知っていたのかもしれない。

「……息のかかった者がいるということか……」
「全くの偶然かもしれないが」

 そこらへんは朱雀の室の前に控えていた紅夏に尋ねるのが一番早いかもしれない。

「ところで調理人は見つかったのか?」
「ああ、城里(城下のこと)の屋台街から無理矢理連れて来られたらしい。貴人への料理など作れないと言い張ったそうだが脅されて仕方なく、といったところだな」

 四十代ぐらいの親父で、一応必要最低限身なりは整えさせられていたと王は嘆息交じりに言った。

「屋台からとは……」

 趙は絶句した。
 せめて街の食堂から連れて来られた料理人ならともかく、屋台で売っている物は衛生観念などないに等しい。もちろん身なりは整えさせられ、材料は宮廷にある物を使って作られたというからおなかを壊すなどの心配はないだろうが。

「で、どうする? 中書令からは四神の望むようにとは言われているから、すぐに連れてくることも可能だが」
「……わかった、お尋ねして参ろう」

 これらが判明するまでに少し時間がかかり、もう夕方になっていた。一応昼過ぎには四神宮への出入りが認められ、それでもできるだけ香子と顔を合わせないように注意せよと言い渡された。理不尽な気がしないでもないが、朝食の際に香子の姿を目にしてその理由がわかった。
 四神に抱かれたせいなのか、香子はくらりとするような色香をまとっていたのだ。趙は初めから香子をどうこうしようという気持ちはないので目を見張るぐらいで済んだが、免疫のない男があの姿を見るのは目に毒だといえる。
 朱雀の室を出てから侍女頭の陳にも心配そうに尋ねられた。陳もまた言いづらそうに昨日はもっと匂い立つような色香をまとわれていたと言っていた。そこらへんも含めて報告や相談事項が多い。
 趙は気を取り直して眷族を探すことにした。
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