128 / 653
第1部 四神と結婚しろと言われました
128.あれもこれも後回しにしておきます
しおりを挟む
どうやら馬遼が香子を気に入って調理してくれたらしかった。宮廷の料理に不満はないが、たまにはこういった屋台でしか食べられない物が食べたくなる。
鶏肉や羊肉、牛肉、イカの串もあって香子はにまにましてしまった。これらの串は日本でいう焼鳥とは違い、鉄板に油を引いて焼くという形の物である。鶏肉、羊肉、牛肉等にはクミンや唐辛子などがまぶしてあり、イカは専用のたれ(甘辛いのだが材料は不明)のようなものがついていた。内臓系には手が出ないがいずれも屋台で食べていた物だけにこれでもかと食べてしまった。
香子の食べっぷりを見て気を利かせてくれたのか、馬遼が再び連れて来られた。恐縮しているようではあったが、
『すっごくおいしいです、ありがとうございます』
と香子が礼を言うと、『こ、こんなんでよけりゃいくらでも作ってやんよ……いや、作ります……』と少し照れたような顔を見せた。
詳しい話は馬遼の家族が来てからすることになっているので、彼はすぐに食堂を退出していった。
とはいえ四神宮にもコックはいる。その人たちの仕事を奪うようなことはできないだろうということぐらい香子にもわかっていた。ただそれは今考えても仕方ないことなので置いておくことにした。
それにしても、である。
(わざわざ巷の人まで攫ってやることなのかしら?)
皇帝の末の妹ということだからかなり甘やかされて育ってきているに違いない。
食後のお茶を啜りながら難しい顔をしていたらしい。
『香子、如何した?』
玄武に声をかけられた。
『……いえ、なんでもないです……』
と答えながらも香子はふつふつと怒りがこみ上げてくるのを感じていた。こちらについても理由如何によっては許すまじ! と思いながらも実際に昭正公主と会うことは可能なのだろうか。
(ま、今考えても仕方ないよねー)
何もはっきりしたことがわかっていない状態でいろいろ考えても仕方ない。
夕飯も終えて目下考えなければいけないことといえば……。
(今夜どうしよう……)
香子は横目でちら、と玄武と朱雀を窺った。彼らは香子からの視線を感じたのか、優しい笑みを返してきた。
(……う……)
その笑顔は反則だと香子は思う。
(ほ、他に考えなきゃいけないことーーーーーっっっ!!)
と頭をフル回転させて思い出したのは、元の世界のことだった。一応玄武が天皇に伝えてはくれているようだがその結果を聞いていない。そうはいっても相手は神様なのでそんなに早く対処してくれるかどうかもわからない。
なにせ天皇は何千年、いや、もしかしたら何万年も存在している神様である。そんな一週間や十日で対処してくれるとは考えにくい。けれど思い出したら聞かずにはいられなかった。
『あの……玄武様。お願いしたことは、ええと、天皇から返事とか来てないですよね……?』
声を届けることはできると言っていたが、一方通行のようなことも言っていたから返事はないのかもしれない。けれど戻れないならせめてそれぐらい叶えてくれてもいいのではないかと思う。
そうしたらきっと覚悟ができるのも早くなると思うから。
『すまぬ。おそらく声は届いているはずだが返答はまだない』
玄武が本当にすまなさそうに言うから、香子は悪いことをしたと思った。
『ご、ごめんなさい。返答がくるにしてもこんなに早くくるわけないですよね? 私、せっかちで……』
『そなたが謝ることではない。そなたが召喚されたのはこの世界の為。そなたには怒る権利がある』
そう言って玄武はそっと香子の手を取った。
(怒る、かぁ……)
大きくてキレイな手だなと玄武の手を見ながらぼんやりと思った。
こんなふうに大事にされて怒るなんてとんでもない。元の世界にいたら絶対こんな美丈夫に求愛されることなんてなかっただろう。
(そこらへんは役得っていうのかな)
香子はふふっと笑った。それだけで少し気が楽になったように、思えた。
鶏肉や羊肉、牛肉、イカの串もあって香子はにまにましてしまった。これらの串は日本でいう焼鳥とは違い、鉄板に油を引いて焼くという形の物である。鶏肉、羊肉、牛肉等にはクミンや唐辛子などがまぶしてあり、イカは専用のたれ(甘辛いのだが材料は不明)のようなものがついていた。内臓系には手が出ないがいずれも屋台で食べていた物だけにこれでもかと食べてしまった。
香子の食べっぷりを見て気を利かせてくれたのか、馬遼が再び連れて来られた。恐縮しているようではあったが、
『すっごくおいしいです、ありがとうございます』
と香子が礼を言うと、『こ、こんなんでよけりゃいくらでも作ってやんよ……いや、作ります……』と少し照れたような顔を見せた。
詳しい話は馬遼の家族が来てからすることになっているので、彼はすぐに食堂を退出していった。
とはいえ四神宮にもコックはいる。その人たちの仕事を奪うようなことはできないだろうということぐらい香子にもわかっていた。ただそれは今考えても仕方ないことなので置いておくことにした。
それにしても、である。
(わざわざ巷の人まで攫ってやることなのかしら?)
皇帝の末の妹ということだからかなり甘やかされて育ってきているに違いない。
食後のお茶を啜りながら難しい顔をしていたらしい。
『香子、如何した?』
玄武に声をかけられた。
『……いえ、なんでもないです……』
と答えながらも香子はふつふつと怒りがこみ上げてくるのを感じていた。こちらについても理由如何によっては許すまじ! と思いながらも実際に昭正公主と会うことは可能なのだろうか。
(ま、今考えても仕方ないよねー)
何もはっきりしたことがわかっていない状態でいろいろ考えても仕方ない。
夕飯も終えて目下考えなければいけないことといえば……。
(今夜どうしよう……)
香子は横目でちら、と玄武と朱雀を窺った。彼らは香子からの視線を感じたのか、優しい笑みを返してきた。
(……う……)
その笑顔は反則だと香子は思う。
(ほ、他に考えなきゃいけないことーーーーーっっっ!!)
と頭をフル回転させて思い出したのは、元の世界のことだった。一応玄武が天皇に伝えてはくれているようだがその結果を聞いていない。そうはいっても相手は神様なのでそんなに早く対処してくれるかどうかもわからない。
なにせ天皇は何千年、いや、もしかしたら何万年も存在している神様である。そんな一週間や十日で対処してくれるとは考えにくい。けれど思い出したら聞かずにはいられなかった。
『あの……玄武様。お願いしたことは、ええと、天皇から返事とか来てないですよね……?』
声を届けることはできると言っていたが、一方通行のようなことも言っていたから返事はないのかもしれない。けれど戻れないならせめてそれぐらい叶えてくれてもいいのではないかと思う。
そうしたらきっと覚悟ができるのも早くなると思うから。
『すまぬ。おそらく声は届いているはずだが返答はまだない』
玄武が本当にすまなさそうに言うから、香子は悪いことをしたと思った。
『ご、ごめんなさい。返答がくるにしてもこんなに早くくるわけないですよね? 私、せっかちで……』
『そなたが謝ることではない。そなたが召喚されたのはこの世界の為。そなたには怒る権利がある』
そう言って玄武はそっと香子の手を取った。
(怒る、かぁ……)
大きくてキレイな手だなと玄武の手を見ながらぼんやりと思った。
こんなふうに大事にされて怒るなんてとんでもない。元の世界にいたら絶対こんな美丈夫に求愛されることなんてなかっただろう。
(そこらへんは役得っていうのかな)
香子はふふっと笑った。それだけで少し気が楽になったように、思えた。
25
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる