異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
48 / 580
第1部 四神と結婚しろと言われました

131.朝はいつもいたたまれないのです ※R13

 昨日一昨日と違って痛みなど欠片もない交わりだった。
 甘い熱をただひたすらに受けて快感に翻弄される。

「……はぁ……」

 昨夜熱が冷めた後、気を失うようにして眠りについた。香子は自分の髪を一房手に取って色を確認した。
 こうやって毎晩のように熱を与えられて髪の色が定着していくのがわかるのがとても恥ずかしい。もちろんその理由を知っているのは四神と眷族だけなのだろうが、侍女たちもうすうす感づいているだろう。ただそれはまだ髪が赤い状態だからそれほど違和感なく受け入れられるのであって、黒に戻った後だったなら奇異な目で見られたに違いない。

(見たことない人からすれば大して変わらないか……)
『……随分と悩ましいため息だな』

 背後から甘いバリトンが届き、香子はふるりと身を震わせた。だからもう本当に朝からはやめてほしい。そういえば昨夜は玄武の室に連れて来られたのだったと思い出した。

『疲れてるだけです……おはようございます、玄武様』
『おはよう、香子シャンズ。……体がつらいのか?』

 意外そうに言われ、後ろから抱きしめられた。そのまま首筋をはまれ、香子はびくん、と身を震わせる。

『玄武様……』
『……しばしこのままで』

 それは真面目な声音であったから、香子は素直に体の力を抜いた。朱雀と違い、こういうところは信頼できると思う。首筋をやわやわとはまれているうちに、腰の辺りに溜った気だるさが払拭されるのを感じた。

(こんなこと、誰に対してもできるのかしら……)

 それとも香子が花嫁だからなのか判別はつかない。それでも体が楽になったのは事実だった。

『……ありがとうございます。大分楽になりました』
『礼には及ばぬ』

 体が軽くなってきたように思うのに、玄武の唇は離れない。それを拒絶するすべも持たないので、香子はそのままでいた。

『……おなかすいた』

 抱かれるとひどくおなかがすく。

『起きたことは伝えてある。今しばらく待て』
『はい……』

 おなかがすいているせいかいろいろな食べ物が頭に浮かぶ。あれも食べたいこれも食べたいとぼんやり思った。

猫耳朵マオアールドゥ(小麦粉で貝殻の形のように練って作った麺。パスタにも似たようなものがあるがあれほどの固さはない)が食べたいなぁ……』
『猫耳朵(猫の耳)?』

 玄武の不思議そうな問いに、そのままの意味に取られてしまったことに気付く。

『猫の耳の形をした麺の一種です。食べたことありません?』
『……あまり食には興味ないのでな……』

 そういえばそうだった。

『卵とトマト、チンゲンザイのスープに入ってるのがおいしいんですよ』
『ふむ……』

 というかその味でしか食べたことがないのでなんともいえないのだが、そういうものがこちらの世界にもあったらいいなと思って話してみる。

『あー、そういえばワンタンも食べたいかも……海苔の鶏ガラ醤油ベースのスープのがおいしいんですよねぇ……』

 食べ物の話をしているだけで顔がほころんでくる香子を、玄武は微笑ましくてならないというように見つめていた。

『猫耳朵とワンタン、他に何か食べたいものはあるか?』
『んー……毎朝春巻食べてたので春巻は絶対食べたいですね』
『そうか』

 こうなってくるともう色気より食い気である。実際抱かれた翌日はとんでもない飢えにさいなまれるのだ。それはどんなに甘く抱かれても仕方のないことらしい。それこそお菓子でもなんでも摘む物を置いておいてほしいぐらいである。
 そして香子を抱いた玄武や朱雀もまた食欲が湧くらしく、優雅に食べる姿を見られるのも不思議だった。
 朱雀は前の花嫁を抱いたことがあるはずだが、玄武は花嫁として抱いたのは香子が初めてだという。そうは言ってももう千歳の玄武が童貞であるはずがない。現に以前そういう関係を持った相手がいると言っていた気がする。香子はふと気になったことを聞いてみることにした。

『そういえば、玄武様っていつ頃からそういう経験があるのですか?』

 その問いに香子の項に顔を埋めていた玄武が顔を上げた。
感想 95

あなたにおすすめの小説

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)