131 / 653
第1部 四神と結婚しろと言われました
131.朝はいつもいたたまれないのです ※R13
しおりを挟む
昨日一昨日と違って痛みなど欠片もない交わりだった。
甘い熱をただひたすらに受けて快感に翻弄される。
「……はぁ……」
昨夜熱が冷めた後、気を失うようにして眠りについた。香子は自分の髪を一房手に取って色を確認した。
こうやって毎晩のように熱を与えられて髪の色が定着していくのがわかるのがとても恥ずかしい。もちろんその理由を知っているのは四神と眷族だけなのだろうが、侍女たちもうすうす感づいているだろう。ただそれはまだ髪が赤い状態だからそれほど違和感なく受け入れられるのであって、黒に戻った後だったなら奇異な目で見られたに違いない。
(見たことない人からすれば大して変わらないか……)
『……随分と悩ましいため息だな』
背後から甘いバリトンが届き、香子はふるりと身を震わせた。だからもう本当に朝からはやめてほしい。そういえば昨夜は玄武の室に連れて来られたのだったと思い出した。
『疲れてるだけです……おはようございます、玄武様』
『おはよう、香子。……体がつらいのか?』
意外そうに言われ、後ろから抱きしめられた。そのまま首筋をはまれ、香子はびくん、と身を震わせる。
『玄武様……』
『……しばしこのままで』
それは真面目な声音であったから、香子は素直に体の力を抜いた。朱雀と違い、こういうところは信頼できると思う。首筋をやわやわとはまれているうちに、腰の辺りに溜った気だるさが払拭されるのを感じた。
(こんなこと、誰に対してもできるのかしら……)
それとも香子が花嫁だからなのか判別はつかない。それでも体が楽になったのは事実だった。
『……ありがとうございます。大分楽になりました』
『礼には及ばぬ』
体が軽くなってきたように思うのに、玄武の唇は離れない。それを拒絶するすべも持たないので、香子はそのままでいた。
『……おなかすいた』
抱かれるとひどくおなかがすく。
『起きたことは伝えてある。今しばらく待て』
『はい……』
おなかがすいているせいかいろいろな食べ物が頭に浮かぶ。あれも食べたいこれも食べたいとぼんやり思った。
『猫耳朵(小麦粉で貝殻の形のように練って作った麺。パスタにも似たようなものがあるがあれほどの固さはない)が食べたいなぁ……』
『猫耳朵(猫の耳)?』
玄武の不思議そうな問いに、そのままの意味に取られてしまったことに気付く。
『猫の耳の形をした麺の一種です。食べたことありません?』
『……あまり食には興味ないのでな……』
そういえばそうだった。
『卵とトマト、チンゲンザイのスープに入ってるのがおいしいんですよ』
『ふむ……』
というかその味でしか食べたことがないのでなんともいえないのだが、そういうものがこちらの世界にもあったらいいなと思って話してみる。
『あー、そういえばワンタンも食べたいかも……海苔の鶏ガラ醤油ベースのスープのがおいしいんですよねぇ……』
食べ物の話をしているだけで顔がほころんでくる香子を、玄武は微笑ましくてならないというように見つめていた。
『猫耳朵とワンタン、他に何か食べたいものはあるか?』
『んー……毎朝春巻食べてたので春巻は絶対食べたいですね』
『そうか』
こうなってくるともう色気より食い気である。実際抱かれた翌日はとんでもない飢えにさいなまれるのだ。それはどんなに甘く抱かれても仕方のないことらしい。それこそお菓子でもなんでも摘む物を置いておいてほしいぐらいである。
そして香子を抱いた玄武や朱雀もまた食欲が湧くらしく、優雅に食べる姿を見られるのも不思議だった。
朱雀は前の花嫁を抱いたことがあるはずだが、玄武は花嫁として抱いたのは香子が初めてだという。そうは言ってももう千歳の玄武が童貞であるはずがない。現に以前そういう関係を持った相手がいると言っていた気がする。香子はふと気になったことを聞いてみることにした。
『そういえば、玄武様っていつ頃からそういう経験があるのですか?』
その問いに香子の項に顔を埋めていた玄武が顔を上げた。
甘い熱をただひたすらに受けて快感に翻弄される。
「……はぁ……」
昨夜熱が冷めた後、気を失うようにして眠りについた。香子は自分の髪を一房手に取って色を確認した。
こうやって毎晩のように熱を与えられて髪の色が定着していくのがわかるのがとても恥ずかしい。もちろんその理由を知っているのは四神と眷族だけなのだろうが、侍女たちもうすうす感づいているだろう。ただそれはまだ髪が赤い状態だからそれほど違和感なく受け入れられるのであって、黒に戻った後だったなら奇異な目で見られたに違いない。
(見たことない人からすれば大して変わらないか……)
『……随分と悩ましいため息だな』
背後から甘いバリトンが届き、香子はふるりと身を震わせた。だからもう本当に朝からはやめてほしい。そういえば昨夜は玄武の室に連れて来られたのだったと思い出した。
『疲れてるだけです……おはようございます、玄武様』
『おはよう、香子。……体がつらいのか?』
意外そうに言われ、後ろから抱きしめられた。そのまま首筋をはまれ、香子はびくん、と身を震わせる。
『玄武様……』
『……しばしこのままで』
それは真面目な声音であったから、香子は素直に体の力を抜いた。朱雀と違い、こういうところは信頼できると思う。首筋をやわやわとはまれているうちに、腰の辺りに溜った気だるさが払拭されるのを感じた。
(こんなこと、誰に対してもできるのかしら……)
それとも香子が花嫁だからなのか判別はつかない。それでも体が楽になったのは事実だった。
『……ありがとうございます。大分楽になりました』
『礼には及ばぬ』
体が軽くなってきたように思うのに、玄武の唇は離れない。それを拒絶するすべも持たないので、香子はそのままでいた。
『……おなかすいた』
抱かれるとひどくおなかがすく。
『起きたことは伝えてある。今しばらく待て』
『はい……』
おなかがすいているせいかいろいろな食べ物が頭に浮かぶ。あれも食べたいこれも食べたいとぼんやり思った。
『猫耳朵(小麦粉で貝殻の形のように練って作った麺。パスタにも似たようなものがあるがあれほどの固さはない)が食べたいなぁ……』
『猫耳朵(猫の耳)?』
玄武の不思議そうな問いに、そのままの意味に取られてしまったことに気付く。
『猫の耳の形をした麺の一種です。食べたことありません?』
『……あまり食には興味ないのでな……』
そういえばそうだった。
『卵とトマト、チンゲンザイのスープに入ってるのがおいしいんですよ』
『ふむ……』
というかその味でしか食べたことがないのでなんともいえないのだが、そういうものがこちらの世界にもあったらいいなと思って話してみる。
『あー、そういえばワンタンも食べたいかも……海苔の鶏ガラ醤油ベースのスープのがおいしいんですよねぇ……』
食べ物の話をしているだけで顔がほころんでくる香子を、玄武は微笑ましくてならないというように見つめていた。
『猫耳朵とワンタン、他に何か食べたいものはあるか?』
『んー……毎朝春巻食べてたので春巻は絶対食べたいですね』
『そうか』
こうなってくるともう色気より食い気である。実際抱かれた翌日はとんでもない飢えにさいなまれるのだ。それはどんなに甘く抱かれても仕方のないことらしい。それこそお菓子でもなんでも摘む物を置いておいてほしいぐらいである。
そして香子を抱いた玄武や朱雀もまた食欲が湧くらしく、優雅に食べる姿を見られるのも不思議だった。
朱雀は前の花嫁を抱いたことがあるはずだが、玄武は花嫁として抱いたのは香子が初めてだという。そうは言ってももう千歳の玄武が童貞であるはずがない。現に以前そういう関係を持った相手がいると言っていた気がする。香子はふと気になったことを聞いてみることにした。
『そういえば、玄武様っていつ頃からそういう経験があるのですか?』
その問いに香子の項に顔を埋めていた玄武が顔を上げた。
25
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる