異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

文字の大きさ
545 / 652
第4部 四神を愛しなさいと言われました

93.眷属は己の神が一番なのです

しおりを挟む
 四神宮は静かだった。
 正確には、四神宮の中は、である。
 趙文英はここのところ毎日朝から大忙しであるらしいと香子は聞いた。
 それについては申し訳ないと香子も思うのだが、ことがことだけにどうしようもなかった。
 四神の衣装の保管や管理については四神宮で行うこととなった。眷属たちがきちんと保管をすることになっているが、実はすでに四神が一旦領地へ戻しに行った。というのも、四神の衣装は全て四神の領地の者たちが作っているので、何かあってはいけないと領地にいる眷属たちが持って帰ってきてもらうよう四神に訴えたのだった。

(眷属に言われてお使いをする四神とか……)

 想像しただけでぷくく……と香子は笑ってしまう。
 眷属たちもありえないほどの身体能力を有しているので、四神宮と領地の往復ぐらいなんということはない。ただ丸一日大事な衣装を持って走るというのは眷属たちもやりたくはなかったらしく、一瞬で移動が可能な四神に運ばせたのである。四神も移動自体は一瞬であるからそれ自体は苦ではなかったが、四神はみな一様に眷属たちに文句を言われた。
 曰く、

『何故花嫁様を連れていらっしゃらなかったのですか?』

 と。
 それを食事の席で淡々と告げられて、香子はどんな顔をしたらいいのかわからなかった。

『そ、そうなのですか……』

 としか答えようがなかった。

『婚礼を挙げる前にまた衣装を取りに行くが、そなたを伴わなければ衣装を渡さない勢いであったぞ』

 朱雀が口元に笑みを浮かべて茶化すように言う。

『それは……』

 香子は助けを求めるように白雲の方を見た。白雲はすぐにそれに気づき、口元に笑みをはいた。

『おそれながら……我もそうですが、眷属というものは己の神が第一でございます。故に、己の神の元に花嫁様を迎え入れたいと望むものなのです』

 その割に、眷属は己の”つがい”が絡むと香子に対してひどくぞんざいになるということも、香子は知っていた。

『……それなら、花嫁は一人ではなく四人いればよかったのではなくて?』

 たった一人で四神の愛を受け止めるのは、香子としてもなかなかに大変なのだ。なのでつい以前から思っていたことが口から出てしまった。

『それはできぬ』

 玄武が即答した。
 以前も聞いたかもしれないが、香子には到底理解できない。何故花嫁はたった一人なのかと。

『それはたった一人しか召喚できないのか、それともあえて一人しか召喚しないのかどちらなのですか?』

 これだけは気になったので、香子は尋ねた。

『……あえて一人であるはずだ。こればかりは天皇ティエンホワンのご意志によるもの。我らが知るものではない』
『まぁ……なんとなく一人という理由もわからないではないですが』

 四人もいたらある意味収拾がつかなくなるに違いない。一人一人の相手が決まっていて、みながみなその相手を好きになる保証なんてない。すんなりいけばいいが、そうでなければ修羅場が起きそうだ。だからといって香子が一人で受け止めるのも違うような気はする。

『わかりませんよね……』
『天皇に尋ねることはできようが……』
『そもそも返事がありませんよね』

 何故召喚されたのが中国の人ではなく香子だったのか。それが香子としては最大の謎である。

(帰国しようとしてたのになぁ……)

 それがなんの因果か世界の強制力に捕まって、香子はこちらの世界に連れてこられてしまった。世界レベルの誘拐など、香子としては勘弁してほしいと思うが今となっては遠い昔のようである。

『声はかけているのだがな』
『……無視されてるわけじゃないですよね?』

 玄武は苦笑した。

『……元来神というのは気まぐれなものだ。答えたい時に答えるし、答えたくなければ聞いていない。無視とは違う』

 白虎が補足した。珍しいこともあるものだと香子は思った。

『……私には到底理解できませんが、長い年月を生きているとそういうものなのかもしれませんね』

 そこで話は終わった。
 天皇のことをああでもないこうでもない言ってもしかたがないからだった。
 それよりも香子にとって頭が痛いのは己の衣装についてである。布はだいたい決まったのだが、次は仮縫いだ。それをまたわざわざ慈寧宮に行ってやらなければならない。
 香子はもう体型が変わらないから、前の衣装の型紙を使って作ってくれればそれで十分だと思っていたが違うのだという。

『花嫁様のお胸は、以前に比べてとても豊かにおなりでございますから』

 そういえばそうだったと香子は自分の胸を見て思い出した。
 白虎に抱かれるようになってから、なんとなく胸が重いのである。以前と比べて身体を動かすとゆさっと胸が揺れるのだ。
 できれば胸の下の支えがほしいぐらいである。そういうものはないかと侍女に尋ねたら、香子の言う通りに侍女が手作りした。おかげで下乳を支える物ができて、香子としては満足である。

(結局、この胸なのね……)

 確かに香子は自分の胸がコンプレックスではあったが、こんなゆさゆさ揺れるほどの胸は求めていなかった。

(まだ大きくなるのかしら?)

 そうしたらまた衣装を作る度に香子は付き合わされることになるのだろう。この先はもう婚礼さえ挙げればと香子も考えてはいるが、まだもう少し四神宮にはいることになっている。(白虎と玄武の領地を回る予定)
 白虎には聞いてみなければいけないと香子は思ったのだった。
しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

蝋梅
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...