異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第4部 四神を愛しなさいと言われました

168.侍女たちは花嫁を助けたい(侍女視点)

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 四神宮の侍女たちにはいろいろな役割がある。
 部屋付きの侍女は文字通り部屋にいてお茶を淹れたり、主人の話を聞いたり、ちょっとした雑用をしたりする。軽く髪を整えたり衣裳を直したりもするが、それを専門にする侍女も存在する。
 衣裳や化粧など、香子の身だしなみについて担当する侍女たちは、普段は別のところにいることが多い。
 故に香子の人となりというか、言葉の使い回しについてあまり詳しくはなかった。

『花嫁様は四神に嫁がれることを憂いていらっしゃるのかしら……?』

 香子の髪を整えた侍女は悩んでいた。昨日の香子の呟きを聞いて、深く考えてしまったのである。
 香子はその時、四神の誰かの領地に行って自分は生きていられるのかというようなことを言っていた。
 その言葉の意味がわからなくて、侍女は苦悩してしまった。
 四神が花嫁を殺めるなどということはありえない。ではどういう意味なのか。
 すでに花嫁は四神と結婚している。だが四神宮を離れてはいない。だから本当の意味で花嫁は四神に嫁いだとはいえないのではないかと侍女は思う。
 香子はその夜、青龍、玄武、朱雀と共に過ごすことになった。三神と過ごすなど、香子の身体は大丈夫なのだろうか。

『わからないわ』

 四神宮の外側にある大部屋に戻った侍女はそう呟いた。

『どうしたの?』

 主に香子の化粧を担当する侍女は、その呟きを聞き逃さなかった。

『昨日の、花嫁様の呟きよ』
『どの呟き?』

 髪結いを主にしているその侍女は、昨日香子が呟いたことを話した。部屋付きの侍女である林雪紅はああ、と思う。
 雪紅はずっと香子の部屋にいるので、その性情を他の侍女たちよりは理解していた。

『おそらく……心配する必要はないと思います』
『どうして?』

 髪結いと化粧担当の侍女に詰め寄られ、雪紅は驚いた。

『あ、あの……花嫁様は四神が好きすぎるらしくて……抱き上げられるのも、その……四神の全てに反応してしまうからと……』

 侍女たちは香子の様子を思い返してみた。
 頬を染めて嘆息していた香子は、いつだって色気に溢れている。

『……私の……考えすぎってことかしら?』
『花嫁様を大事に思っているのですから、考えすぎということはないです。ただ花嫁様は四神とも対等に言葉を交わされているので、そこまで心配することではないかと……』
『わかったわ。私、花嫁様がもっと魅力的に見えるようにがんばるわ』
『私も花嫁様がもっと美しくなるように勉強しないと!』
『衣裳も重要よね。この間こういった衣裳が届いたのよ』
『それは是非花嫁様に着ていただかなくては!』

 髪結い、化粧、衣裳担当の侍女たちが一気に盛り上がるのを見て、雪紅はちょっと香子に悪いことをしたのではないかと思った。
 だが、花嫁がより魅力的になるのはいいことのはずである。
 四神が更に花嫁に夢中になれば、この国は安泰なはずだ。
 花嫁はこの国を愛しているのだから。

『でも……花嫁様はもう一月も四神宮にはいらっしゃらないのよね……』
『花嫁様がどなたかの領地に移られる際、一緒に連れて行ってはいただけないかしら?』
『頼むとしたら? どなたに言えばいいのかしら……ジャオ様は四神宮の主官だから付いてはいかれないわよね?』
小林シャオリン(林さん)~』

 雪紅はびくっとした。また話が雪紅に戻ってきてしまったらしい。他の侍女たちは黙って聞きながら時折くすくす笑っている。
 みな花嫁のことは大好きだが、その度合いは人によって違う。

『な、なんでしょう……?』
『あなたは花嫁様がどなたかの領地へ向かわれる際どうするの?』
『あ……』

 雪紅は困ってしまった。実は、朱雀に仕える眷属の紅炎に口説かれているのである。雪紅は同じく香子の部屋付きの侍女である馬紅児が紅夏に嫁いだこともあり、せめて香子が誰かの領地に向かうまでは考えられないときっぱり伝えていた。紅児の伴侶である紅夏は紅児を愛するあまり、朱雀の世話をしなくなってしまったからだった。
 雪紅としては、紅炎が雪紅にかまけて朱雀の身の回りの世話をしなくなるなどとんでもないと思っている。二人も眷属が朱雀の元を離れるなどありえない。

『わ、私はおそらく……四神宮に残るかと……』
『本当に?』
紅炎ホンイエン様に口説かれているわよね?』

 侍女たちに詰め寄られて、雪紅は困ってしまった。そこに方一燕が助け舟を出した。方は陳秀美の次点と目される侍女である。花嫁が誰かの領地へ向かう際、陳が白雲に嫁ぐことになるのは周知の事実だった。陳がいなくなった後は方がまとめ役になるだろうということはみな知っている。

『そろそろやめなさい、小林が困っているわよ。お風呂へ行きましょう』
『はーい』
『つまらないわあ』

 みなすぐに散り、入浴の準備を始めた。花嫁と四神がすでに湯を使った後なので、その湯は四神宮の外の風呂に運ばれている。侍女たちや武官が使った後は、下女や下男も使えることになっているので侍女たちは急いで風呂場へ向かった。


 そんなことを侍女たちが話していたとは知らない香子は、その夜も朱雀の熱を受け、朱雀と玄武にも身体に触れられながら青龍にたっぷり愛されたのだった。


ーーーーー
香子の呟きについては164話を参照してください。
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