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本編
102.不知道
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『』内はセレスト王国の言葉です。
叔父との二度目の話し合いは、前回と同じ謁見室で行われた。
今回も最初は花嫁が同席したが、
「エリーザは朱雀の眷属である紅夏と結婚したので四神の花嫁の手を離れました。これからは当事者同士で話し合ってください」
と言われ、叔父は絶句した。
朱雀に抱かれた花嫁が退室すると、それまではどうにか抑えていたらしい叔父が『どういうことだ!?』と大きな声を上げた。紅児はびくり、と体を震わせる。それを紅夏が優しく支えた。
『この度エリーザと結婚しました、紅夏と申します。まずは我の話を聞いていただきたい』
紅夏が流暢にセレスト王国の言葉をしゃべったことに叔父は目を見開いた。
『……いったい、どういうことなんだ』
呟くように叔父が己の膝を叩く。
『我が”人”でないことはご理解いただけますでしょうか』
そこから紅夏は淡々と話し始めた。
途中何度か口を挟み、それでも思ったより冷静に叔父は紅夏の話を最後まで聞いてくれた。通訳は紅夏がセレスト王国の言葉で話をし始めた時点で退室させているので、そこにいるのは叔父、紅夏と紅児だけだった。
その叔父は今頭を抱えている。
『……にわかには信じがたいが……そうだな、四神と眷属というのは人知を超えた存在、という認識でいいのだろうか』
『それで間違いありません』
呟くような何度目かの確認に、紅夏は無表情で応える。
『……ベティになんと説明したら……』
『もしエリーザが今回帰国できるようでしたら、我からご母堂に改めて説明させていただきます』
叔父は大仰にため息をついた。
『……エリーザは、君も一緒でなければ帰国することもできないのか』
『はい』
『しかも……船に乗ろうとすると発作が起きる、と』
叔父の呟きに紅児は目を伏せた。なんだか申し訳ないように思えて、叔父の表情を見られなかった。
『そのようです。ただ、エリーザはすでに人ではない身。実際船に乗ろうとしてみないことにはどうなるかはわかりません』
紅夏の科白に叔父は頷いた。
『……そうだな。もしエリーザが船に乗ることができたなら、途中で君を船から突き落とすことにしよう』
紅児は叔父の科白にばっと顔を上げた。そんなことを言うなんて信じられない。
『叔父様!?』
『その時はエリーザも一緒です』
紅児が顔色を変えたのに対し、全く表情を変えない紅夏に叔父は面白くなさそうな表情をした。
『……大した自信だな』
『自信ではありません。神の意志です』
淡々とした答えに叔父は鼻白んだ。
『……その”神”というものが私には理解できないが、君やエリーザもその中に含まれるということなのかね?』
『我らは神ではありません。我は神に仕える者であり、エリーザはその妻です。ですが人よりは神に近い位置にいる為に神の加護を受けている。あとは先ほど説明した通りです』
『……離れることは神の意志によって不可能だと?』
『それもあります。が、我自身、エリーザと離れるつもりはありません』
叔父はまた嘆息した。
『……そういうことなら仕方ない、が……私はまだ納得したわけではないからな。それだけは肝に銘じておいてくれ』
『はい』
偉そうな叔父の言葉に紅夏はなんとも思わなかったようだが、紅児はさすがにむっとしてしまった。
『……私だって叔父様と母のことは納得なんてしていません!』
そう叫ぶように言ってしまってから紅児ははっとした。慌てて口を押えてももう遅い。
『エリーザ……』
正面の椅子に腰かけた叔父が、一瞬切なそうな表情をした。
『……それも、そうだな……。では、お互いさまということにしておこう』
『…………』
紅児は顔を伏せた。そんなことを言うつもりはなかったが事実なだけになんのフォローもできない。
その後叔父は大人らしく話題を変えた。
帰国を前提として、紅児の養父母になんらかのお礼をしたいと言う。今夜紅夏が挨拶に行く旨伝えると、それまでにお礼の品を用意しておくということで話がまとまった。その間紅児はどうしても頭を上げることができなかった。
話が終り、立ち上がる。
一定の距離を置いて礼をとった。
『エリーザ』
叔父の静かな声に紅児はやっと少し顔を上げた。
『船に……乗れるといいな』
『……はい』
そう応えたものの、正直紅児は気がすすまなかった。
とても複雑な心境だった。
謁見室を出た後、困ったような表情をしている紅児を紅夏はそっと抱き寄せた。
昨日よりも今日の方が紅夏と寄り添えているように紅児は思えた。
謁見室の表には侍女や色々な人がいつ通りがかってもおかしくはなかったが、紅児は素直に身を寄せた。
(これが……”つがい”ということなのかしら……)
こうしているだけで安心する。
行きはかなりの速さでここまで来たが、帰りは通常の人の歩く速度で四神宮まで戻った。
できるだけ早く花嫁に報告しなければならないと思ったが、この胸のもやもやをもう少しどうにかしたかった。
母には会いたい。
なのに。
思考がぐるぐる回る。
(私はいったい、どうしたいの?)
まだ答えは、出ない。
不知道 知らない、わからない
叔父との二度目の話し合いは、前回と同じ謁見室で行われた。
今回も最初は花嫁が同席したが、
「エリーザは朱雀の眷属である紅夏と結婚したので四神の花嫁の手を離れました。これからは当事者同士で話し合ってください」
と言われ、叔父は絶句した。
朱雀に抱かれた花嫁が退室すると、それまではどうにか抑えていたらしい叔父が『どういうことだ!?』と大きな声を上げた。紅児はびくり、と体を震わせる。それを紅夏が優しく支えた。
『この度エリーザと結婚しました、紅夏と申します。まずは我の話を聞いていただきたい』
紅夏が流暢にセレスト王国の言葉をしゃべったことに叔父は目を見開いた。
『……いったい、どういうことなんだ』
呟くように叔父が己の膝を叩く。
『我が”人”でないことはご理解いただけますでしょうか』
そこから紅夏は淡々と話し始めた。
途中何度か口を挟み、それでも思ったより冷静に叔父は紅夏の話を最後まで聞いてくれた。通訳は紅夏がセレスト王国の言葉で話をし始めた時点で退室させているので、そこにいるのは叔父、紅夏と紅児だけだった。
その叔父は今頭を抱えている。
『……にわかには信じがたいが……そうだな、四神と眷属というのは人知を超えた存在、という認識でいいのだろうか』
『それで間違いありません』
呟くような何度目かの確認に、紅夏は無表情で応える。
『……ベティになんと説明したら……』
『もしエリーザが今回帰国できるようでしたら、我からご母堂に改めて説明させていただきます』
叔父は大仰にため息をついた。
『……エリーザは、君も一緒でなければ帰国することもできないのか』
『はい』
『しかも……船に乗ろうとすると発作が起きる、と』
叔父の呟きに紅児は目を伏せた。なんだか申し訳ないように思えて、叔父の表情を見られなかった。
『そのようです。ただ、エリーザはすでに人ではない身。実際船に乗ろうとしてみないことにはどうなるかはわかりません』
紅夏の科白に叔父は頷いた。
『……そうだな。もしエリーザが船に乗ることができたなら、途中で君を船から突き落とすことにしよう』
紅児は叔父の科白にばっと顔を上げた。そんなことを言うなんて信じられない。
『叔父様!?』
『その時はエリーザも一緒です』
紅児が顔色を変えたのに対し、全く表情を変えない紅夏に叔父は面白くなさそうな表情をした。
『……大した自信だな』
『自信ではありません。神の意志です』
淡々とした答えに叔父は鼻白んだ。
『……その”神”というものが私には理解できないが、君やエリーザもその中に含まれるということなのかね?』
『我らは神ではありません。我は神に仕える者であり、エリーザはその妻です。ですが人よりは神に近い位置にいる為に神の加護を受けている。あとは先ほど説明した通りです』
『……離れることは神の意志によって不可能だと?』
『それもあります。が、我自身、エリーザと離れるつもりはありません』
叔父はまた嘆息した。
『……そういうことなら仕方ない、が……私はまだ納得したわけではないからな。それだけは肝に銘じておいてくれ』
『はい』
偉そうな叔父の言葉に紅夏はなんとも思わなかったようだが、紅児はさすがにむっとしてしまった。
『……私だって叔父様と母のことは納得なんてしていません!』
そう叫ぶように言ってしまってから紅児ははっとした。慌てて口を押えてももう遅い。
『エリーザ……』
正面の椅子に腰かけた叔父が、一瞬切なそうな表情をした。
『……それも、そうだな……。では、お互いさまということにしておこう』
『…………』
紅児は顔を伏せた。そんなことを言うつもりはなかったが事実なだけになんのフォローもできない。
その後叔父は大人らしく話題を変えた。
帰国を前提として、紅児の養父母になんらかのお礼をしたいと言う。今夜紅夏が挨拶に行く旨伝えると、それまでにお礼の品を用意しておくということで話がまとまった。その間紅児はどうしても頭を上げることができなかった。
話が終り、立ち上がる。
一定の距離を置いて礼をとった。
『エリーザ』
叔父の静かな声に紅児はやっと少し顔を上げた。
『船に……乗れるといいな』
『……はい』
そう応えたものの、正直紅児は気がすすまなかった。
とても複雑な心境だった。
謁見室を出た後、困ったような表情をしている紅児を紅夏はそっと抱き寄せた。
昨日よりも今日の方が紅夏と寄り添えているように紅児は思えた。
謁見室の表には侍女や色々な人がいつ通りがかってもおかしくはなかったが、紅児は素直に身を寄せた。
(これが……”つがい”ということなのかしら……)
こうしているだけで安心する。
行きはかなりの速さでここまで来たが、帰りは通常の人の歩く速度で四神宮まで戻った。
できるだけ早く花嫁に報告しなければならないと思ったが、この胸のもやもやをもう少しどうにかしたかった。
母には会いたい。
なのに。
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