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本編
68.魅力
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花嫁が昨夜自身の部屋で過ごしたことを紅夏は知っていたらしい。しかも玄武の姿しか見なかったが、実は白虎も一緒だったらしいと聞いて紅児は目を丸くした。
それと関係しているのかと、先程のことを話せば紅夏が説明をしてくれた。
曰く、四神の花嫁は四神全ての花嫁であるというのが前提の為全員と交わるまでは非常に不安定なのだという。
確かに花嫁が四神全ての花嫁であるということは紅児も知っている。けれど全員と交わるまでは不安定だというのは納得がいかない。
「詳しくはわからぬ。花嫁様は元が人だ。だが四神のうちのどなたかと交わることによってその存在は人ではなくなる。おそらくそれは魂に相当な負荷がかかるのだろう。それを安定させる為に四神全てと交わることが必要なのではないかと考えられる」
「それを花嫁様は……」
「知らぬはずだ」
紅児はほっとした。
ただでさえ勝手に別の世界に連れてこられたのに、四神全員と交わることを強制されるなんて理不尽にもほどがある。
けれど。
「……でも、あのなんというか、私が当てられそうなあの色気は……男性だったら危ないような……」
「そなにすごいのか」
紅児は頬を染めて頷いた。
それほど知識のない紅児がそうなのだから、あの状態で男性の目に触れるのは危険な気がする。
「普段はどうだ?」
「それほどは感じませんが、ふとした瞬間に……」
「そうか……」
紅夏は難しい顔をした。そこで紅児も気づく。
「……紅夏様たちは、わからないのですか?」
「……我ら眷族には花嫁様の色香は感じられぬ」
「四神には?」
「四神のどなたにも抱かれていない状態では非常にいい香りがするらしい。どなたかに抱かれていくことによってその香りは落ち着いていくのだとか」
今度は紅児が難しい顔をした。
四神全てに抱かれない限り人に感じられる色香を花嫁が押さえることは難しい。
これは一体なんの試練なのか。
試練。
紅児ははっとする。
これは人間に対する試練なのかもしれない。
この大陸の神々は試しているのだ。
花嫁を通して人間が四神というものを理解し、敬っているのかどうか。
そう考えると神というのは随分と人間臭いように思える。ただこれは神と人との契約のようなものなのだから試練を乗り越える必要がある。
その為には花嫁を守らなくては。
「一応香りが人にも影響を及ぼすということは、花嫁様にも知っておいていただいた方がいいと思います」
正確には人間に感じられる色香と四神に影響する香りは別物である。
だが同種の物とした方が納得しやすいと思いあえて紅児はこう言った。
「一理ある」
その気が全くない紅児さえへんな気分になりそうなのだから、男性など何をかいわんやである。それもあって主官である趙文英もできるだけ四神宮の中に入れないようにしているというのだから、必要最低限花嫁に伝えた方がいいのではないか。
「……人間が花嫁に懸想などしようものなら……」
紅夏がため息混じりに呟いた。
たいへんなことになるのは想像に難くない。
四神は四神同士では嫉妬という感情はないという。けれど人間の男性に対するそれは苛烈である。花嫁が相手と会話しているだけで目の色が変わり、その相手がもし花嫁に興味を持ったなら。そして花嫁がもし四神以外の男性に興味を持ったとしたら。
紅児はぞっとした。
花嫁が四神以外を見ることはまずないだろうが、人間の男性と会話をするのもいけないというのも乱暴な気がした。ただこれはあくまで紅児自身の考えである。この国に住む良家の娘は基本的に結婚するまで家を出ることはない。それこそ目に触れる男性というのは肉親または使用人ぐらいのものである。未婚の女性には使用人といえどもできるだけ男性の目に触れさせないようにされる為、結婚するまでまともに男性と接したことがないのは当り前といえた。(民間では男女の会話ぐらいは可能だが、それでも結婚は親が決める)だが自由恋愛が一般的だった国から来た紅児からすれば納得いかないことであった。
「花嫁様の香りについては兄と相談してみよう。他に何か気付いたことがあれば言ってくれ」
「はい」
そこでふと、紅児はあることを思い出した。
花嫁は既に人ではなくなっている。
花嫁の髪の色は元々は黒だった。
だが花嫁の現在の髪色は朱雀や紅夏と同じ暗紫紅色である。
これは何か関係しているのだろうか?
「エリーザ、どうかしたのか?」
紅児の様子がおかしく見えたのか紅夏が声をかけた。
「あ、いえ……」
上の空で答えながらも紅児の頭の中で花嫁の髪の色について考えていた。
紅夏の髪が朱雀と同じ色なのはわかる。神と眷族でしかも血のつながりの関係としては親子であるというのだから。
だが花嫁までまるっきり同じ色というのはやはりおかしいのではないか。
そこに人ではなくなったということが関係しているに違いない。
けれど、花嫁と仲睦まじいのは朱雀だけではない。
何故花嫁の髪は赤いのだろう?
いぶかしげな表情をしている紅夏に向き直る。
「あの……どうして花嫁様の髪は赤いのでしょう……?」
紅夏は一瞬目を丸くし、そして苦笑した。
「……詳しく知りたいか?」
「? はい、知りたいです」
紅児自身も忘れていたことだが、元々花嫁の髪色が紅児と同じ赤ということがきっかけで村を出てきたのだ。
それを思い出したらもう紅児は知りたくてたまらなくなってしまった。
赤い理由がまさかあんなとんでもないことだとは知らずに。
注:香子は自分の色香が人に影響することは知っています。ただフェロモンを出している自覚がないだけです。
それと関係しているのかと、先程のことを話せば紅夏が説明をしてくれた。
曰く、四神の花嫁は四神全ての花嫁であるというのが前提の為全員と交わるまでは非常に不安定なのだという。
確かに花嫁が四神全ての花嫁であるということは紅児も知っている。けれど全員と交わるまでは不安定だというのは納得がいかない。
「詳しくはわからぬ。花嫁様は元が人だ。だが四神のうちのどなたかと交わることによってその存在は人ではなくなる。おそらくそれは魂に相当な負荷がかかるのだろう。それを安定させる為に四神全てと交わることが必要なのではないかと考えられる」
「それを花嫁様は……」
「知らぬはずだ」
紅児はほっとした。
ただでさえ勝手に別の世界に連れてこられたのに、四神全員と交わることを強制されるなんて理不尽にもほどがある。
けれど。
「……でも、あのなんというか、私が当てられそうなあの色気は……男性だったら危ないような……」
「そなにすごいのか」
紅児は頬を染めて頷いた。
それほど知識のない紅児がそうなのだから、あの状態で男性の目に触れるのは危険な気がする。
「普段はどうだ?」
「それほどは感じませんが、ふとした瞬間に……」
「そうか……」
紅夏は難しい顔をした。そこで紅児も気づく。
「……紅夏様たちは、わからないのですか?」
「……我ら眷族には花嫁様の色香は感じられぬ」
「四神には?」
「四神のどなたにも抱かれていない状態では非常にいい香りがするらしい。どなたかに抱かれていくことによってその香りは落ち着いていくのだとか」
今度は紅児が難しい顔をした。
四神全てに抱かれない限り人に感じられる色香を花嫁が押さえることは難しい。
これは一体なんの試練なのか。
試練。
紅児ははっとする。
これは人間に対する試練なのかもしれない。
この大陸の神々は試しているのだ。
花嫁を通して人間が四神というものを理解し、敬っているのかどうか。
そう考えると神というのは随分と人間臭いように思える。ただこれは神と人との契約のようなものなのだから試練を乗り越える必要がある。
その為には花嫁を守らなくては。
「一応香りが人にも影響を及ぼすということは、花嫁様にも知っておいていただいた方がいいと思います」
正確には人間に感じられる色香と四神に影響する香りは別物である。
だが同種の物とした方が納得しやすいと思いあえて紅児はこう言った。
「一理ある」
その気が全くない紅児さえへんな気分になりそうなのだから、男性など何をかいわんやである。それもあって主官である趙文英もできるだけ四神宮の中に入れないようにしているというのだから、必要最低限花嫁に伝えた方がいいのではないか。
「……人間が花嫁に懸想などしようものなら……」
紅夏がため息混じりに呟いた。
たいへんなことになるのは想像に難くない。
四神は四神同士では嫉妬という感情はないという。けれど人間の男性に対するそれは苛烈である。花嫁が相手と会話しているだけで目の色が変わり、その相手がもし花嫁に興味を持ったなら。そして花嫁がもし四神以外の男性に興味を持ったとしたら。
紅児はぞっとした。
花嫁が四神以外を見ることはまずないだろうが、人間の男性と会話をするのもいけないというのも乱暴な気がした。ただこれはあくまで紅児自身の考えである。この国に住む良家の娘は基本的に結婚するまで家を出ることはない。それこそ目に触れる男性というのは肉親または使用人ぐらいのものである。未婚の女性には使用人といえどもできるだけ男性の目に触れさせないようにされる為、結婚するまでまともに男性と接したことがないのは当り前といえた。(民間では男女の会話ぐらいは可能だが、それでも結婚は親が決める)だが自由恋愛が一般的だった国から来た紅児からすれば納得いかないことであった。
「花嫁様の香りについては兄と相談してみよう。他に何か気付いたことがあれば言ってくれ」
「はい」
そこでふと、紅児はあることを思い出した。
花嫁は既に人ではなくなっている。
花嫁の髪の色は元々は黒だった。
だが花嫁の現在の髪色は朱雀や紅夏と同じ暗紫紅色である。
これは何か関係しているのだろうか?
「エリーザ、どうかしたのか?」
紅児の様子がおかしく見えたのか紅夏が声をかけた。
「あ、いえ……」
上の空で答えながらも紅児の頭の中で花嫁の髪の色について考えていた。
紅夏の髪が朱雀と同じ色なのはわかる。神と眷族でしかも血のつながりの関係としては親子であるというのだから。
だが花嫁までまるっきり同じ色というのはやはりおかしいのではないか。
そこに人ではなくなったということが関係しているに違いない。
けれど、花嫁と仲睦まじいのは朱雀だけではない。
何故花嫁の髪は赤いのだろう?
いぶかしげな表情をしている紅夏に向き直る。
「あの……どうして花嫁様の髪は赤いのでしょう……?」
紅夏は一瞬目を丸くし、そして苦笑した。
「……詳しく知りたいか?」
「? はい、知りたいです」
紅児自身も忘れていたことだが、元々花嫁の髪色が紅児と同じ赤ということがきっかけで村を出てきたのだ。
それを思い出したらもう紅児は知りたくてたまらなくなってしまった。
赤い理由がまさかあんなとんでもないことだとは知らずに。
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