連れて逃げてよ、鏡さん

浅葱

文字の大きさ
5 / 5

5.全てキレイにおさまりました(完結)

しおりを挟む
―そしてどれほどの間眠っていただろう。


「……妃さま、王妃さま……そろそろ王がいらっしゃいます、王妃さま……」

 侍女の声にスノーホワイトは覚醒した。王、と聞いて珍しいこともあるものだと思う。ベッドから起き上がろうと何気なくシーツをまくった時、彼女はあまりの驚愕に悲鳴を上げそうになった。

「っっっっっ!!?」

 急いで再びシーツを身体に巻き付ける。スノーホワイトが全身を真っ赤に染めて恥じらう様を見て侍女は笑みを浮かべた。

「まあまあ王妃さま、私共のことは気になさらなくていいのですよ。さ、身体を動かすことができるようでしたらどうかお召替えを」

 まるでそれが毎日のことのように言われて彼女は戸惑った。シーツの下は全裸で、しかもちら、と確認しただけでも胸の辺りにいくつか赤い跡があった。これが世に言うキスマークという物かと考えただけで頭が沸騰しそうである。しかしいつまでもそのままでいるわけにもいかないのでベッドから下りようとした時、軽いノックと共に寝室の扉が開いた。

「え!?」

 スノーホワイトは己が目を疑った。

「王! いくら王妃さまの部屋とはいえ返事もないのに扉を開けるとは何事ですか!?」
「すまぬ。早く我が愛しい妃に会いたくてな」

 そう言いながら彼はベッドに腰掛けて彼女の手を取り、その甲にそっと口づけを落とした。

「どうして……」

 呆然と呟く彼女に、彼は嫣然と笑んだ。

「朝食にしたいのだが、動けそうか?」

 心配そうに尋ねられて、彼女は試しにベッドから下りようとした。

「っ!? きゃあっ!?」

 足に体重をかけようとした瞬間かくん、と足が倒れ、転げ落ちそうになるところを彼の腕が支えた。

「やはりこちらに朝食を運ばせよう。しかしその恰好は目に毒だな。何か羽織る物を!」

 誰のせいだ! と、きっと睨みつけると彼は面白そうな表情をした。

「そんな顔で睨んでも可愛いだけだぞ」

 スノーホワイトはなんと返したらいいのかわからず口をはくはくさせた。


 その後詳しく話を聞くと、本物の王は夢の世界に閉じ込めたという。命尽きるまで楽しい夢を見続けるだろうと言っていた。
 そうして彼―マモンはスノーホワイトから受け取った大量の魔力で城に仕える者たちの記憶を改ざんし、彼と彼女が初めからこの国の王と王妃だったことにしたらしい。なので姫と王子は彼のことを実の父親だと思っているし、大臣や近衛たちからはおかしな思考の一切を消去したのだという。

「……ありがとう」
「どういたしまして。ですが魔法の効力は永遠に続くものではありませんので、またいずれかけなおさなければいけないのです」

 安堵のため息をつき彼の胸にもたれたところで、彼が不穏なことを言う。彼女は驚いて顔を上げた。
 けれど。

「だから貴女は毎晩私に抱かれなければなりませんよ?」

 彼は余裕の笑みを浮かべ、彼女の耳元で囁いた。彼女の頬が赤く染まる。
 だが毎回彼に負けているのも悔しくて、彼女は拗ねたように呟いた。

「私……貴方が私たちを連れて逃げてくれるのかと思っていましたのに……」

 王が入れ替わる、というのもそれはそれでよかったが、姫を連れて三人で逃避行なんてものにも彼女は憧れていたのだ。

「ならば、もし魔法をかけ間違えた時は貴女を連れて逃げましょう」
「まぁ……」

 呆れた、と言うように彼女はそっぽを向いた。だがその耳が赤く色づいているのを確認し、彼は満足そうに笑んだ。
 そうしてやっと白雪姫は幸せになりましたとさ。めでたしめでたし。
 
 
 Love Love Happy End!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 さて、ロリコンと言われた王はどうなったのか……。

「ひっ! こ、こないでくれっ! わ、私は王だぞ! 触るなぁあああああっっ!!」
「あらあら、若い子がイキがっちゃって可愛いわねぇ。お姉さんたちが男にしてあ・げ・る」

 王はサキュバスの夢の中に放り込まれ、熟年の美魔女とも言えるサキュバスたちに精を搾り取られていた。普通の男たちであれば満更でもない光景だが王はロリコンである。熟年の女性たちに身体をいいように弄ばれるのは悪夢でしかない。
 しかしここはサキュバスの夢の中。かつてのロクネ王国の王子は永遠に彼女たちの相手を努めることになるのだった。
 
 True End...




オマケ


「……ところで、あの下着はどうしたのです? ずいぶん色っぽかったですね」
「……じ、侍女が毎晩用意してくれてて……」
「ほう? 昨夜はまだ入浴前だったはずですが?」
「…………」

 少しでも女らしくいたいと毎日エロ下着を身に付けてるとは言えないスノーホワイト。

「だんまりですか? これは貴女の身体に聞くしかなさそうですね」
「……えっ? あっ、ちょっと、まっ……あんっ!」

 彼に抱き寄せられて胸を揉まれ……。

 この後彼にめちゃくちゃ抱かれて白状させられました。



最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...