始まりはタオルじゃなかった

豆腐屋

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デートがしたい!

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「竜二さん、今日もすげぇ頑張ってる♡真面目で可愛いいっ♡」
楠木 翔真(26歳)は、正面の鏡にうつる恋人の姿にうっとりと見入っていた。

     翔真の漕いでいるエクササイズバイクの正面は鏡張りになっていて、後ろのフリーウエイトスペースでバーベルに勤しむ恋人の竜二の姿が、よく見えた。体を台に倒しているので顔は見えないが、想像力でカバーできるので問題ない。

     ウェアが張り付いて胸筋えろい♡♡よく見たら乳首わかるのもエッチ♡♡あっ、でも他の奴らには見せたくないから生地厚めのウェア、プレゼントしよ♡

    竜二と翔真は、同じスポーツジムに通っていて、そこで知り合い付き合うまでにいたっている。
竜二が翔真のゴリ押しとも言える猛アプローチに押し切られたよう形で。

    翔真の恋人の木崎 竜二(33)、短めの黒髪に身長は184cm。綺麗についた筋肉は、肥大しすぎることもなく、実にバランスが良い。

    隆二はいつも黒い半袖のウエアを着ていて、腕を動かすと、日に焼けた肌と地肌の境界線が時おり見える。翔真は、それも好きだった。

「竜二さん、かっこいいのに可愛い♡♡」
竜二は、流行り廃りのないスタンダードな男前で、奥二重の目元からスっと通る鼻筋に、形のいい薄い唇の硬派な顔立ちが、彼の鍛えた体によく似合っていた。
   

「竜二さんっ♡♡」
竜二の筋トレが終わったタイミングで、翔真が声をかけた。
竜二は、翔真から向けられる真っ直な好意に最初はとまどったが、今は素直に受け取れるし嬉しいと思う。

「おつかれ。もう、あがるか?」
「はいっ!竜二さんも、もういいの?」
「あぁ。」

トレーニング後、翔真は軽くシャワーをあびるが、竜二は風呂やシャワーは使わずそのまま帰る。
シャワーの後、翔真はジムの駐車場で先に出ていた竜二の車に向かった。いつも同じような場所にとめるのですぐ分かる。

     楠木 翔真(26歳)、竜二の恋人である。176cmのすらりとした細身の体型、パープルシルバーに染められた髪はKPOPアイドルのようで、まさに今どきの若者といった風貌をしている。
    
    竜二は翔真からの告白をOKしたものの、言い出せないままになっている秘密に悩んでいた。

翔真のことは好きだ。
最初は派手な見た目の軽い男にしか見えず、とても付き合う気にはなれなかった。
しかし、翔真は何度断っても、次に合えば笑顔で話しかけてきて、そのうち
「どうしたら、俺のこと好きになってくれる?」
「年の差や性別なんて理由にしないで。」
「この見た目がイヤなら、竜二さんの好みに変えるから教えて。」
狂気と健気さが入り混じった言葉を口にするようになった。そんな翔真に、竜二は恐怖するよりも絆されてしまった。
翔真以上に、自分のことを好きだと言ってくれる相手にこの先、出会うことはないだろう、と・・・

「竜二さん、お待たせ♡」
助手席のドアを開け乗り込む。もうすっかり慣れた。
二人は付き合って二ヶ月。トレーニングの後は、ここで毎回のように恋人の時間を過ごす。
翔真が乗り込むと、竜二は車を駐車場の中の目ただない端の方へ移動させる。街灯はあるが、明かりが届きっていない隅っこは暗い。
 
「んっ、ちゅっ、ふっ」
絡みあう舌が熱い。
「竜二さんっ」
「あっ、んっ」
翔真は、キスをしながら竜二の体を撫でた。

付き合い始めた最初の頃、ジム終わりに翔真は食事にでも行こうと竜二を誘ったが、自分はシャワーを浴びて帰らないからと断られた。
もっと一緒に居たいとだだをこね、竜二からの妥協案で、この車の中ならとなったのだった。

「んんっ、翔真っ!!汗かいてるからっ!!」
「ぜんぜん気にならない。」
耳や首筋にまでキスをされ、隆二は軽く翔真を押し返した。
この程度の抵抗で翔真が諦めないのも、いつものことだった。

「ねぇ、竜二さん・・・」
ウェアのTシャツの上から、胸筋を撫でる。ハリのある弾力が気持ちいい。
「翔真っ!あっだめだっ外から見えるっ」
「見えないよ。こんなに暗いんだから。」

「んっ♡ちゅっ♡しょっまっ♡」
キスしながら、胸をなでなれ鼻に抜けた声がでた。

可愛いっ!竜二さん可愛いっっ!!声エロい!!!汗の匂い、すげぇ興奮する!!!
もっと俺のものにしたい♡♡♡

「竜二さん、俺、デートしたい。もっといっぱい竜二さんと一緒にいたい・・・」 
上目遣いにねだだれて、 年下の恋人が可愛い。もともと中性的な可愛らしい顔立ちをしている。
それに、そう言われるのも仕方がないと竜二は分かっていた。
付き合いだしてからも二人は、このジム以外で会ったことがないのだ。
もちろん、電話をしたりLINEしたりといった連絡をとりあってはいる。

「一緒にご飯食べたり映画見たりしたい・・・」
そして翔真は己の顔を使った、至近距離+上目遣い+お強請りが効果抜群なのを知っている。
「ダメ?竜二さんがイヤなら・・・」
押せばいけそうな気がする!翔真は、何としても関係を前進させたかったし、あばよくば一線超えたかった。
そのためには、顔だろうが年の差だろうが、利用出来るものは利用するのだ。

俺がここまでするの竜二さんにだけだよっ!!断られても諦めないけど、ショックだから断らないでっ!!はやくっいいって言ってぇー!!

健気な顔を作りながら情緒が忙しい。

「イヤでは・・・」
そう、竜二も断じて嫌ではない!けれど、秘密がある。思い切って打ち明けるか、このまま秘めたままで別れを切り出すかだ。
食事だけなら問題ないかもしれないが、もし!万が一!!そういう雰囲気になったら隠しきれるか?
いや、不安だ・・・
だが、自分は翔真を抱く側だから、服をぬがず、体位も後背位なり何とかしたらいけるかもしれない!!

「竜二さん・・・」
上目遣いの翔真と目が合う。翔真が竜二の胸元に顔埋め、吐息がかかる。シャンプーの良い香りがする。
翔真の腕が、自分の背中に回された時、竜二はドキリとした。
今、彼の手が這う、その背に秘密をかかえているのだ。

     背中一面にがっつり入った和彫り。
付き合う前、翔真に土木作業員だと嘘をついた。
竜二は、現役ヤクザであることを秘密にしたまま、今どきイケメン男子と恋人になってしまったのだ。
    
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