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新しい部屋
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「一京、嬉しいけど俺にはこんなとこ似合わねぇよ・・・。」
昨日から自分のためにとあれこれ用意してくれて、驚かされてばかりだけれど嬉しかった。
いろいろ不安なことばかり考えてしまっていた一人の時間が嘘みたいに、大好きな恋人がすぐ近くにいて、優しい言葉をくれる。
もう十分だったのに、こんな高価なものまで用意されたら、どうしたらいいのか分からない。
「すぐに慣れる。お前のために用意した、俺達の新居だ。」
「えー、慣れねぇよ・・・中で迷いそう・・・」
「だったら、一人で出歩かないでくれ。俺の心配も減る。」
一京は和輝の肩を抱き寄せ、髪の毛にキスをする。
離れていた間のことを思うと、一歩も出歩いて欲しくない。
和輝が、組に復帰するつもりなのは知っている。一京だって、もとはそのつもりだった。
けれど、いざ自分の元へ帰ってくると自分だけのもので居てほしい。
理想は専業主夫だが、本人が働きたいなら無理強いはできない。
絶対に嫌われたくない。
馴染みの料亭で行われた出所祝いで、多くの人が和輝の出所を喜んでくれたのが分かり嬉しかった。何より、あの場を和輝が楽しんでくれたのが嬉しかった。
けれど、それが許せるのは自分の目の前だからだ。
あの場にいる誰もが、和輝が一京の大切な恋人であることを知っている。
だが、普段のコミュニティーから外れてしまえば、そうもいかない。
だから、和輝には公共の乗り物を使ってほしくないし、例え住んでいるマンションのエレベーターでも他の人間と一緒に乗ってほしくない。
「中に入ろう、和輝。部屋も見てほしい。」
肩を抱いたまま、にっこり笑う一京に和樹の胸はドキドキした。付き合い初めて10年以上経つのに、今だに態度でも言葉でも惜しみなく愛情表現してくれる。
勝手に不安になって、いろいろ情けないことばかり言ってしまった自分が恥ずかしい。
そして、そんな一京に何年経とうとも、いちいち自分はときめいてしまうのだ。
コンシェルジュのいるエントランスを抜けて、上層階専用のエレベーターに乗る。
ガラス張りで眺めはいいが、外からも見えていると思うと和輝はそれが少し恥ずかしく落ち着かない。
しかも、今日は昨日のスーツではなく、その前に着ていたココアブラウンのパーカーと黒いスキニーだ。場違いな気がして、スーツの方を着れば良かったと後悔した。
朝、着替える時に言ってほしかった!!自分だけスーツ着やがって・・・一京のヤツ!!
一京は着替えがスーツしかなかっただけで、悪気はない。
「一京、ここのエレベーターってこれしかねぇの?丸見えで、なんか恥ずかしい・・・」
一京は、困ったような顔で少し下から見上げてくる恋人の頭を撫で、そのまま引き寄せ腕の中に閉じ込めた。
「可愛い♡♡」
「いっ、一京!一京、これ、外から見えてるんじゃ・・・ダメだって!!」
「もう20階を超えてるから見えないだろ。」
一京の胸を、弱い力で和輝が押し返す。顔を赤くして、本気で恥ずかしがっている。
可愛い♡♡このエレベーターに乗ったら、慣れるまでずっと、この和輝が見れる♡
実際には、ガラス張りでないエレベーターも普通に存在しているが教えなかった。
40階に着くと明るくて清潔な廊下が続いている。エレベーターを降りると、一京が速攻で手を繋いできたのでそのまま歩く。
「和輝、このマンション、每日24時間いつでもゴミを捨てれるんだ。分別も前のとこより細かくないし・・・」
「マジで!?」
「あぁ。和輝、めちゃくちゃ気にしてただろ?分別とか夜に出せたら朝楽なのに、とか・・・」
「めっちゃ良い!!すげぇっ!!」
薄茶の瞳が、キラキラ輝いて自分を見ている。ようやく、恋人の心を掴めるプレゼンができた。
部屋に着くと、まだ家具類は揃ってなくてガランとしていた。
3LDKの間取りらしいが、ほとんど何もないせいか言葉で聞く以上に広く感じる。
「この部屋、眺めがいいんだ。」
リビングにある広い窓は、テラスにも繋がっている。一京に促されるまま窓際まで歩いた。
「・・・やっと、和輝を連れてこれた・・・」
「んっ、いっけ、ぢゅっちゅっ♡」
一京は、明るい窓際で和輝の唇を塞いだ。この部屋には何度か一人で来ていた。
和輝との新しい生活を想像して、現実に耐えた。
柔らかく温かい唇にと熱くて甘い口内が夢見ていた生活の始まりを教えてくれる。
長く続くキスに、和輝が酸素を吸い込もうと顔を少しずらす。一京はそれを追いかけて、窓ガラスに和輝を追い詰め更に深く口内を貪った。
「ちゅっ♡ぐちゅっぢゅっ♡♡いっ、けぇっ。」
「和輝・・・和輝とここで暮らしたい。家具も家電も和輝の好きなものでいい・・・。」
「一京・・・俺、前の部屋も好きだったけど・・・どこでもいい・・・また一京と暮らせるなら・・・ありがとう、こんなすげぇマンション・・・びっくりした・・・。」
もう一度、唇が重なる。体温と柔らかさを確認するような優しいキスに、和輝は目を閉じた。
「一京、面会に来てくれた時、俺のことばっか心配してくれたけど、本当は一京の方が無理してたんじゃねぇの?」
和輝のいない每日は、朝から絶望で始まった。面会と必ず帰ると言う約束だけが支えだった。
寝れない夜も多々あったし、仕事も詰め込んだ。面会前はなるべく体調を整えるようにしたけれど。
「和輝が傍にいない事以上に辛いことなんてなかった。」
一京に痛いぐらいに抱きしめられ、和輝も彼の背中に腕回して抱き締めかえす。
また泣いてしまいそうだった。今度は、恋人の腕の中があまりにも幸せで・・・。
昨日から自分のためにとあれこれ用意してくれて、驚かされてばかりだけれど嬉しかった。
いろいろ不安なことばかり考えてしまっていた一人の時間が嘘みたいに、大好きな恋人がすぐ近くにいて、優しい言葉をくれる。
もう十分だったのに、こんな高価なものまで用意されたら、どうしたらいいのか分からない。
「すぐに慣れる。お前のために用意した、俺達の新居だ。」
「えー、慣れねぇよ・・・中で迷いそう・・・」
「だったら、一人で出歩かないでくれ。俺の心配も減る。」
一京は和輝の肩を抱き寄せ、髪の毛にキスをする。
離れていた間のことを思うと、一歩も出歩いて欲しくない。
和輝が、組に復帰するつもりなのは知っている。一京だって、もとはそのつもりだった。
けれど、いざ自分の元へ帰ってくると自分だけのもので居てほしい。
理想は専業主夫だが、本人が働きたいなら無理強いはできない。
絶対に嫌われたくない。
馴染みの料亭で行われた出所祝いで、多くの人が和輝の出所を喜んでくれたのが分かり嬉しかった。何より、あの場を和輝が楽しんでくれたのが嬉しかった。
けれど、それが許せるのは自分の目の前だからだ。
あの場にいる誰もが、和輝が一京の大切な恋人であることを知っている。
だが、普段のコミュニティーから外れてしまえば、そうもいかない。
だから、和輝には公共の乗り物を使ってほしくないし、例え住んでいるマンションのエレベーターでも他の人間と一緒に乗ってほしくない。
「中に入ろう、和輝。部屋も見てほしい。」
肩を抱いたまま、にっこり笑う一京に和樹の胸はドキドキした。付き合い初めて10年以上経つのに、今だに態度でも言葉でも惜しみなく愛情表現してくれる。
勝手に不安になって、いろいろ情けないことばかり言ってしまった自分が恥ずかしい。
そして、そんな一京に何年経とうとも、いちいち自分はときめいてしまうのだ。
コンシェルジュのいるエントランスを抜けて、上層階専用のエレベーターに乗る。
ガラス張りで眺めはいいが、外からも見えていると思うと和輝はそれが少し恥ずかしく落ち着かない。
しかも、今日は昨日のスーツではなく、その前に着ていたココアブラウンのパーカーと黒いスキニーだ。場違いな気がして、スーツの方を着れば良かったと後悔した。
朝、着替える時に言ってほしかった!!自分だけスーツ着やがって・・・一京のヤツ!!
一京は着替えがスーツしかなかっただけで、悪気はない。
「一京、ここのエレベーターってこれしかねぇの?丸見えで、なんか恥ずかしい・・・」
一京は、困ったような顔で少し下から見上げてくる恋人の頭を撫で、そのまま引き寄せ腕の中に閉じ込めた。
「可愛い♡♡」
「いっ、一京!一京、これ、外から見えてるんじゃ・・・ダメだって!!」
「もう20階を超えてるから見えないだろ。」
一京の胸を、弱い力で和輝が押し返す。顔を赤くして、本気で恥ずかしがっている。
可愛い♡♡このエレベーターに乗ったら、慣れるまでずっと、この和輝が見れる♡
実際には、ガラス張りでないエレベーターも普通に存在しているが教えなかった。
40階に着くと明るくて清潔な廊下が続いている。エレベーターを降りると、一京が速攻で手を繋いできたのでそのまま歩く。
「和輝、このマンション、每日24時間いつでもゴミを捨てれるんだ。分別も前のとこより細かくないし・・・」
「マジで!?」
「あぁ。和輝、めちゃくちゃ気にしてただろ?分別とか夜に出せたら朝楽なのに、とか・・・」
「めっちゃ良い!!すげぇっ!!」
薄茶の瞳が、キラキラ輝いて自分を見ている。ようやく、恋人の心を掴めるプレゼンができた。
部屋に着くと、まだ家具類は揃ってなくてガランとしていた。
3LDKの間取りらしいが、ほとんど何もないせいか言葉で聞く以上に広く感じる。
「この部屋、眺めがいいんだ。」
リビングにある広い窓は、テラスにも繋がっている。一京に促されるまま窓際まで歩いた。
「・・・やっと、和輝を連れてこれた・・・」
「んっ、いっけ、ぢゅっちゅっ♡」
一京は、明るい窓際で和輝の唇を塞いだ。この部屋には何度か一人で来ていた。
和輝との新しい生活を想像して、現実に耐えた。
柔らかく温かい唇にと熱くて甘い口内が夢見ていた生活の始まりを教えてくれる。
長く続くキスに、和輝が酸素を吸い込もうと顔を少しずらす。一京はそれを追いかけて、窓ガラスに和輝を追い詰め更に深く口内を貪った。
「ちゅっ♡ぐちゅっぢゅっ♡♡いっ、けぇっ。」
「和輝・・・和輝とここで暮らしたい。家具も家電も和輝の好きなものでいい・・・。」
「一京・・・俺、前の部屋も好きだったけど・・・どこでもいい・・・また一京と暮らせるなら・・・ありがとう、こんなすげぇマンション・・・びっくりした・・・。」
もう一度、唇が重なる。体温と柔らかさを確認するような優しいキスに、和輝は目を閉じた。
「一京、面会に来てくれた時、俺のことばっか心配してくれたけど、本当は一京の方が無理してたんじゃねぇの?」
和輝のいない每日は、朝から絶望で始まった。面会と必ず帰ると言う約束だけが支えだった。
寝れない夜も多々あったし、仕事も詰め込んだ。面会前はなるべく体調を整えるようにしたけれど。
「和輝が傍にいない事以上に辛いことなんてなかった。」
一京に痛いぐらいに抱きしめられ、和輝も彼の背中に腕回して抱き締めかえす。
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