同僚の片思いの相手の情報が少なすぎ

豆腐屋

文字の大きさ
16 / 16

両片思い?⑥

しおりを挟む
 1月5日、この日は健生達が働いている『三國紙器(ミクニシキ)』の仕事初めの日にあたる。

 何かと慌ただしかった年末も、仕事の納めの28日にはきちんと終わり、年末の挨拶を済ませた後休みに入った。
 健生と林は他の同僚も交えた仲間内の忘年会をして別れ、休み中には年始の挨拶をスマホ上のメッセージでやりとりしただけで、新年、顔を合わせたのは仕事初めの5日が初だった。

 昼休憩の後、喫煙スペースに移動した時だった。

 「やるよ。お前には世話になってっから。」

 「へ?なにこのウサギ・・・」

 健生が、ポケットから取り出したものをテーブルに置いた。

 淡いピンク色の陶器のウサギが林に差し出されていた。手のひらにのるような小さなウサギで、たいへん可愛らしい。

 「中におみくじ入ってる。」
 
 「は?」

 「俺は白いウサギを金井さんとお揃いで持ってる。初詣一緒に行って、一緒に買った!」

 「お前、金井さんと一緒に初詣行ったの?」

 どうやら林の知らない間に、また一歩、関係を縮めていたようだ。
 事後報告なことが、少し寂しい。

 「行った!!金井さんが行きたいって言ったウサギ祀ってる隣の県の神社まで行った!!俺、車出したんだけど、お礼にって食事代と神社で交通安全のお守り買ってくれた!!」

 「もう付き合ってる距離感じゃん!!」

 思った以上に親密になっている。普通だったら両思い確定と言ってもいい。

 隣の県まで一緒に初詣に行く友人など、そうはいない。

 「うん。俺もそんな気分だった・・・。」

 「やっぱ付き合ってはねぇんだ・・・。片思いで年跨いだじゃん。」

 こういう、付き合ってはいないけど周りから見たらカップル同然な時期というのも、恋愛の醍醐味なのかもしれない。

 大人になっても甘酸っぱく、いかにも恋をしているという空気がある。

 ただ、歳の離れた同性同士だと周りから見てカップル同然かどうかはよく分からない。
 林は、結局、旧年中に金井の姿を見ることは叶わなかった。結構な心残りだ。

 営業の美作に、金井が来る時には教えてほしいと伝えているので、今年こそは一目でも良いからおがみたい。

 「本人、横にいるのに恋愛成就お願いした。」 

 年末には、告白するような口ぶりだったが、きっとまだ言えてないのだろう。
 強気かと思えばビビりで繊細なのだ。この男は。

 ときおりサイコ味もあるが。

 「それは、ご利益ありそうじゃね?」  
 
 ウサギを祀ってる神社が隣の県の何処なのかは、林には分からないが、なかなかの遠出のはずだ。

 まず、その時点で普通の友人ではないと言っていい。

 「そうか?俺さ・・・日付かわる前に、こっち出て夜中の高速走ってる間に新年迎えたのは、何か嬉しかった。年変わる瞬間に好きな相手と一緒って、すっげぇ特別な感じだろ?」

 「!!!初詣って、深夜?」

 「あぁ、言い出したのは俺だけど、金井さんがOKしてくれた♡」

 「えっ、マジ!?いや、もう付き合ってんじゃん!!両思いじゃん!!なんで、お前、片思いしてんの?」

 そんなの絶対、友人の距離感じゃない。
 深夜の二人きりの外出なんて、普通の人間なら誘われた時に、恋愛的アプローチを感じるだろうし、それをOKしたなら同じ気持ちだと言うことでは?

 「・・・俺もそう思う時ある・・・けど、金井さんが大人で優しいから、俺に対してだけ特別なのか誰にでもそうなのか判別できねぇ・・・。」

 去年の年末、二人が美作から仕入れた金井の情報は、 
『34歳、独身、ただしバツイチ。離婚原因は奥さんの浮気。子供はいない。』
だった。
 
 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

処理中です...