毒リンゴは絶対拒否します!白雪姫に転生したのに全力で死亡フラグを避けていたら、なぜか隣国のハンサム王子に溺愛されてしまいました。

紅葉山参

文字の大きさ
10 / 15

セクハラ発言の波紋と、王子の新たな勘違い

しおりを挟む
 毒リンゴの破片を吐き出し、死の淵から生還したアーリャは、目の前にいるオーリオン王子に、反射的に現代の言葉を浴びせてしまった。

「ちょっと待ちなさい、オーリオン王子!勝手に人を抱きしめて、勝手にキスするなんて、セクハラよ!そして何より、私のサバイバル計画をメチャクチャにしないで!」

 小屋の中は、静寂に包まれた。七兄弟は目を丸くし、オーリオン王子は、抱きかかえたままのアーリャを、まるで世界で最も理解できない謎を見るかのように見つめていた。

「せく……はら?しぇくはらとは、なんですか、愛しい淑女よ」

 王子は、真剣な顔で尋ねた。その顔には、怒りや戸惑いよりも、ただ純粋な「理解したい」という感情が浮かんでいた。

(しまった!中世ヨーロッパっぽい世界観で、変な横文字を口走ってしまった!)

 アーリャはすぐに頭を切り替えた。

「その言葉は、私の故郷の方言です!意味は、『心を許していない相手に、乱暴な振る舞いをすること』です!」

 アーリャは、王子の胸から身を離し、床に降り立った。体にはまだ毒の影響が残っているが、目覚めたことで、体中の力が戻ってきたのを感じた。

「オーリオン王子。あなたは私のことを知らないはず。それなのに、ポスターを作り、豪華なドレスを送りつけ、そして今、私が意識を失っている間に、同意もなくキスをする。これは、私の心を著しく乱す、乱暴な行為でございます!」

 王子は、顔を赤らめた後、ハッとした表情になった。そして、膝をつき、アーリャの手を握った。

「ああ、愛しい淑女よ!私はなんと愚かだったのでしょう!あなたは、清らかさゆえに、私の愛が『乱暴』に感じられたのですね!しかし、その抗議の言葉こそが、あなたの純粋さの証!」

(なんでそうなるのよ!)

 アーリャは、王子のポジティブすぎる解釈に、頭を抱えたくなった。

 グラントが、口を挟んだ。

「王子様。アーリャは、あの悪辣な王妃から命を狙われています。今は、愛の言葉よりも、彼女の安全が第一です」

「その通りです!」アーリャはグラントの言葉に同意し、王子に迫った。「王妃は私が死んだと思って、次にどんな手を打ってくるかわかりません。私は、この城にも、あなたの国にも戻りません!私は自由でなければ、また殺される!」

「自由、ですって?」

 王子は立ち上がり、アーリャを熱い眼差しで見つめた。

「あなたこそ、この世で最も自由な愛の象徴だ!わかりました、アーリャ。あなたが城へ戻ることを拒否するなら、私はあなたを無理には連れ戻しません」

(よし、話が通じた!)

 アーリャは安堵したが、王子の次の言葉で、再び絶望した。

「しかし、私の愛の炎は、あなたを一人にはさせません。もしあなたが私の国へ来ないなら、私が、あなたのいる場所に、私の国を創りましょう!」

(いや、勝手に国を創らないで!)

「愛しい淑女よ。あなたの命は、私の命より重い。どうか、私の隣国が持つ、最も安全な『隠し砦』で、私の愛に守られて過ごしてください。それが、あなたへの最大の贖罪です!」

 王子は、アーリャの意向を「城の理不尽な束縛からの解放」と誤解し、今度は「愛と安全を提供する騎士」としての役割を、勝手に自分に課したのだった。

 アーリャは、思わずため息をついた。

(王子の溺愛フラグが、本格的な「過保護フラグ」へと進化してしまったわ。でも、ムスカ王妃の追っ手から逃れるには、彼の力と、彼の国の安全な場所が必要……)

 アーリャは、渋々ながらも、王子の提案を受け入れるしかないと悟った。

「……わかりました。あなたの『隠し砦』とやらに、案内してください。ただし、私に勝手に触れないこと!そして、私が『美しくない』ことを尊重すること!それが条件です!」

「承知しました、愛しいアーリャ!あなたの清らかな魂を守り抜くことを、ここに誓います!」

 オーリオン王子は、熱烈なキスを、アーリャの手の甲に落とそうとしたが、アーリャが素早く手を引っ込めたため、王子は自分の手の甲にキスをする羽目になった。

 こうして、アーリャの「逃亡生活」は、オーリオン王子と七兄弟という、二重の過保護に囲まれた、新たな旅へと移行することになったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

【完結】男運ゼロの転生モブ令嬢、たまたま指輪を拾ったらヒロインを押しのけて花嫁に選ばれてしまいました

Rohdea
恋愛
──たまたま落ちていた指輪を拾っただけなのに! かつて婚約破棄された過去やその後の縁談もことごとく上手くいかない事などから、 男運が無い伯爵令嬢のアイリーン。 痺れを切らした父親に自力で婚約者を見つけろと言われるも、なかなか上手くいかない日々を送っていた。 そんなある日、特殊な方法で嫡男の花嫁選びをするというアディルティス侯爵家のパーティーに参加したアイリーンは、そのパーティーで落ちていた指輪を拾う。 「見つけた! 僕の花嫁!」 「僕の運命の人はあなただ!」 ──その指輪こそがアディルティス侯爵家の嫡男、ヴィンセントの花嫁を選ぶ指輪だった。 こうして、落ちていた指輪を拾っただけなのに運命の人……花嫁に選ばれてしまったアイリーン。 すっかりアイリーンの生活は一変する。 しかし、運命は複雑。 ある日、アイリーンは自身の前世の記憶を思い出してしまう。 ここは小説の世界。自分は名も無きモブ。 そして、本来この指輪を拾いヴィンセントの“運命の人”になる相手…… 本当の花嫁となるべき小説の世界のヒロインが別にいる事を─── ※2021.12.18 小説のヒロインが出てきたのでタグ追加しました(念の為)

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

『悪役令嬢に仕立て上げられたけど、猫カフェを開いたら辺境伯が通ってきます』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
王都を追い出された公爵令嬢・ソフィアがたどり着いたのは、 ボロで埃だらけの、誰も使わない辺境の別荘。 けれど、そこで出会ったのは―― 大きな体でちょっと不器用な辺境伯。 そして、人懐こい白猫と、村の子どもたち。 あたたかい紅茶と、焼きたてのパン。 猫じゃらしに全力な筋肉兄たち。 やがて、騒がしくも優しい日々が、ソフィアの心を少しずつ溶かしていく。

竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。 時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。 数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。 自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。 はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。 短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました を長編にしたものです。

魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

処理中です...