毒リンゴは絶対拒否します!白雪姫に転生したのに全力で死亡フラグを避けていたら、なぜか隣国のハンサム王子に溺愛されてしまいました。

紅葉山参

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美の呪いを打ち破る、論理の反論

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 ムスカ王妃の最後の攻撃、それは「美しさの承認」を強制する、精神的な呪いだった。

 王妃は、手にした「真実の鏡の破片」をアーリャの顔に近づけた。鏡の破片は、アーリャの顔を、ありのまま、しかし呪いによって異常なほど魅力的に映し出した。

「さあ、アーリャ。観念しなさい!あなたは、醜さなどではないこの世で最も輝く存在だ!私に告げるのよ!『私が、この世で一番美しい』と!」

 アーリャの頭の中で、前世の論理回路がフル回転した。

(ダメだ。ここで「美しい」と認めれば、王妃の「世界一の美女」という呪いの連鎖に組み込まれてしまう。そうなれば、王妃の嫉妬の対象から逃れられない。でも、「醜い」と否定すれば、魂を抜かれる……!)

 アーリャは、王妃の呪いのロジックそのものを破壊するしかないと判断した。

「王妃様」

 アーリャは、静かに、しかし毅然とした声で言った。

「私は、あなた様の命令には従えません」

 王妃は、目を細めた。

「まだ抵抗するつもりか!この期に及んで、卑しい振る舞いを!」

「卑しいのではありません。論理的な反論です」

 アーリャは、一歩も引かず、王妃を見つめた。

「王妃様は、『私が世界一美しい』という言葉が聞きたいのですよね?ですが、それは客観的な事実ではあり得ません」

「なんだと?」

「『美しさ』とは、個人の主観であり、嗜好(しこう)です。王妃様が私を美しいと思われても、七兄弟は私を『健気』だと慕ってくれますし、オーリオン王子は私を『清らか』だと愛してくれます」

 アーリャは、言葉を続けた。

「つまり、『誰にとって一番美しいか』という主観的な問いに、『誰にとっても一番美しい』という客観的な答えは、存在しないのです。王妃様の『真実の鏡』さえ、『この世界で』という限定的なコミュニティの中でしか機能しない、時代遅れの基準です」

 王妃は、アーリャの言葉が理解できなかった。彼女の頭の中は、「美」と「順位」という絶対的な概念で構築されていたからだ。

「何を、何を言っている!詭弁(きべん)を弄するな!その宝石に映る自分の顔を見なさい!」

「見ますよ」

 アーリャは、鏡の破片を自ら掴み、顔に近づけた。鏡に映る自分の顔は、確かに、この世界ではトップクラスの容姿だった。

「私は、自分のこの顔が、人々の目に『美しい』と映ることは理解しています。しかし、その『美しさ』は、私という人間の一部に過ぎません。私の価値は、その『美しさの順位』によって決定されるわけではないのです」

 アーリャは、強く言い切った。

「私が、私という存在の価値を決定するのは、この美しさではなく、『生き抜く意志』です!王妃様が、私を殺そうと、呪おうと、私の生存本能は、順位付けや、他人の評価ごときには、屈しません!」

 アーリャの言葉は、「美の絶対性」を信じてきたムスカ王妃の精神に、直接的な打撃を与えた。王妃の魔術は、「美しさの順位」という大前提に基づいていたため、その前提を否定されたことで、魔力のコントロールを失い始めた。

「嘘だ……!私が、世界一……!順位が、絶対のはずだ……!」

 王妃は、錯乱し始めた。彼女の魔力は暴走し、握っていた「真実の鏡の破片」が、王妃自身の顔に向かって、その魔力を放出した。

 ズン!

 強烈な光が王妃を包み込んだ。彼女が求めた「美の絶対性」は、その呪いの暴走によって、王妃自身に跳ね返ったのだ。

 その瞬間、扉の外で待機していたオーリオン王子と七兄弟が、異変を感じて扉を破った。

 彼らが見たのは、床にうずくまり、醜い老婆の姿に戻ったムスカ王妃と、その隣で毅然と立っているアーリャだった。

「アーリャ!無事か!」

「オーリオン王子、七兄弟の皆様。ご心配おかけしました。この王妃は……もう、害にはなりません」

 ムスカ王妃は、鏡の破片を抱きしめながら、呻き続けた。

「醜い……!私が、一番醜い……!この世の全ての醜さが、私に……!」

 彼女は、自らの呪いに囚われ、永遠に「一番醜い存在」として、自らの城へ連れ戻されることになった。
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