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最終章
真実の戴冠
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迫りくる青白い炎を前にして、イレネスは目を閉じなかった。 彼女は、自分の胸元にずっと隠し持っていた、母の形見だという古びたペンダントを握りしめた。 それはスラムでの過酷な日々も、王宮での屈辱も、共に耐え抜いてきた唯一の宝物。
「私、イレネス・リファールが命じます。王都に眠るすべての癒やしの根源よ、傷ついたこの国のために、今こそ目覚めて……‼ 」
炎が彼女に触れた瞬間。 焼き尽くすはずの熱は、柔らかな木漏れ日のような光へと一転した。 イレネスの全身から、白銀の魔力が溢れ出し、大聖堂の鐘を勝手に鳴らし始めた。 それは王家の炎を飲み込み、さらに巨大な光の柱となって天を突いた。
「な……魔法が、炎を食っているだと……⁉ 」
ラインハルトは腰を抜かし、玉座の影へと這い寄った。 イレネスの頭上に、白羽の矢が再び姿を現す。 しかし、それはもはや一本の矢ではない。 無数の羽根が彼女を包み込み、伝説に謳われた「癒やしの翼」を形作っていく。
「見てください。これが、リファール家の血です。あなたが、お父様とお母様を殺してまで奪おうとした力です‼ 」
イレネスの手が空を仰ぐと、王都全体に温かな雨が降り注いだ。 その雨が触れた兵士たちの傷は癒え、同時にラインハルトや悪徳貴族たちが魔術で隠していた「隠し財産」や「汚職の証拠」が、光の文字となって王都の空に浮かび上がった。 治癒の魔法は、身体だけでなく、この国の「膿」さえも暴き出したのだ。
「おのれ、卑しいスラムの女が……‼ 」
なおも叫ぶラインハルトだったが、民衆の目はもはや彼を向いていなかった。 雨の中で自らの傷が治る奇跡を体験した人々は、誰が真の聖女であり、誰がこの国を腐らせていたのかを、肌で理解した。
「聖女イレネス様! リファールの聖女様だ‼ 」
「王家を弾劾せよ! 真実を隠した国王を引きずり出せ‼ 」
怒号がラインハルトを包囲する。 ダニエルが剣を突きつけ、王子の首筋に冷たい鋼を当てた。
「終わりだ、兄上。お前たちの嘘は、今、この雨に流された」
その時、王城の奥から一人の老人が現れた。 現国王だ。 彼は、イレネスの輝きを見て、その場に崩れ落ちた。 かつて自らが滅ぼした一族の、あまりにも清廉な血の輝き。 それが自分の息子の汚らしさを際立たせていることに、彼は絶望したのだ。
「……リファールよ。お前を、生かしておくべきではなかった」
「いいえ。あなたが私を生かしたのです。スラムという、あなたが一度も目を向けなかった場所が、私を育ててくれた。憎しみではなく、人を救いたいという願いを教えてくれたの」
イレネスの言葉は、剣よりも深く国王の胸を刺した。 彼女は王冠を拾い上げ、それをダニエルへと手渡した。
「ダニエル様。あなたが私を選んでくれたから、私は今日ここに立てました。今度は、私たちがこの国を治す番です」
「私、イレネス・リファールが命じます。王都に眠るすべての癒やしの根源よ、傷ついたこの国のために、今こそ目覚めて……‼ 」
炎が彼女に触れた瞬間。 焼き尽くすはずの熱は、柔らかな木漏れ日のような光へと一転した。 イレネスの全身から、白銀の魔力が溢れ出し、大聖堂の鐘を勝手に鳴らし始めた。 それは王家の炎を飲み込み、さらに巨大な光の柱となって天を突いた。
「な……魔法が、炎を食っているだと……⁉ 」
ラインハルトは腰を抜かし、玉座の影へと這い寄った。 イレネスの頭上に、白羽の矢が再び姿を現す。 しかし、それはもはや一本の矢ではない。 無数の羽根が彼女を包み込み、伝説に謳われた「癒やしの翼」を形作っていく。
「見てください。これが、リファール家の血です。あなたが、お父様とお母様を殺してまで奪おうとした力です‼ 」
イレネスの手が空を仰ぐと、王都全体に温かな雨が降り注いだ。 その雨が触れた兵士たちの傷は癒え、同時にラインハルトや悪徳貴族たちが魔術で隠していた「隠し財産」や「汚職の証拠」が、光の文字となって王都の空に浮かび上がった。 治癒の魔法は、身体だけでなく、この国の「膿」さえも暴き出したのだ。
「おのれ、卑しいスラムの女が……‼ 」
なおも叫ぶラインハルトだったが、民衆の目はもはや彼を向いていなかった。 雨の中で自らの傷が治る奇跡を体験した人々は、誰が真の聖女であり、誰がこの国を腐らせていたのかを、肌で理解した。
「聖女イレネス様! リファールの聖女様だ‼ 」
「王家を弾劾せよ! 真実を隠した国王を引きずり出せ‼ 」
怒号がラインハルトを包囲する。 ダニエルが剣を突きつけ、王子の首筋に冷たい鋼を当てた。
「終わりだ、兄上。お前たちの嘘は、今、この雨に流された」
その時、王城の奥から一人の老人が現れた。 現国王だ。 彼は、イレネスの輝きを見て、その場に崩れ落ちた。 かつて自らが滅ぼした一族の、あまりにも清廉な血の輝き。 それが自分の息子の汚らしさを際立たせていることに、彼は絶望したのだ。
「……リファールよ。お前を、生かしておくべきではなかった」
「いいえ。あなたが私を生かしたのです。スラムという、あなたが一度も目を向けなかった場所が、私を育ててくれた。憎しみではなく、人を救いたいという願いを教えてくれたの」
イレネスの言葉は、剣よりも深く国王の胸を刺した。 彼女は王冠を拾い上げ、それをダニエルへと手渡した。
「ダニエル様。あなたが私を選んでくれたから、私は今日ここに立てました。今度は、私たちがこの国を治す番です」
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