寵愛の花嫁は毒を愛でる～いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります～

永遠の愛の誓いと最後の清算

　北棟の完成を記念し、共同事業の成功を祝う舞踏会は、まさに王都の歴史に残る豪華絢爛な夜となった。公爵邸の大広間は、最高級のクリスタルシャンデリアの光で満たされ、招待された貴族たちは、皆、新しいグロース公爵家の輝かしい未来を祝福しに集まっていた。

　私、アエナは、ルーカス様が贈ってくださったルビーとダイヤモンドのティアラを身につけ、私の愛する殿方の腕に優雅にエスコートされながら、広間に入場した。歓声が上がり、全ての視線が私たち二人に集中する。

　ルーカス様は、私を一瞬も離さず、その瞳には私への深い愛と誇りだけが宿っていた。

　舞踏会のクライマックス。ルーカス様は、王都の貴族たち、そして金融界の重鎮たちに向けて、力強く演説を始められた。

「諸君。本日、我々は、グロース公爵家の新たな時代の幕開けを祝うために集まった」

　彼の言葉は、堂々としており、聴衆を惹きつける魅力に満ちている。

「私の妻、アエナは、二度の危機から公爵家を救い、この北棟の新しい図書館と、共同事業という、公爵家の未来を象徴する偉大な成果をもたらしてくれた。彼女の知性、優雅さ、そして何よりも私への揺るぎない愛こそが、この公爵家を支える最大の力である」

　ルーカス様は、そう言って私へと向き直り、私の手を取られた。

「アエナ・フォン・グロース。私は、公爵として、そして君の夫として、公衆の面前で、改めて君に永遠の愛を誓う」

　彼は、私の手に深い口付けを落とし、熱い眼差しで私を見つめた。

「君は、私の光だ。君の華麗なるスルー術は、全ての悪意を打ち破り、この家に真の平和と幸福をもたらした」

「私は、君を、永遠に、命をかけて愛し、守り続ける」

　私は、感動で胸がいっぱいになり、目に涙を浮かべた。彼の愛は、私にとって何よりも強く、確かな宝物である。

「ルーカス様。私も、この愛と信頼に、永遠の忠誠と愛情を誓います」

　二人が愛を誓い合った瞬間、広間は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。この日、私、アエナは、公爵夫人として、そしてルーカス様の唯一無二の伴侶として、王都で絶対的な地位を確立したのである。

（その時、予期せぬ出来事が）

　歓声が最高潮に達したその瞬間、一人の衛兵が、息を切らせて広間へと駆け込んできた。彼は、ルーカス様へと向かい、耳元で何かを囁いた。

　私のダーリンの表情が、一瞬にして、冷徹なものへと変わった。

「衛兵。この場にいる全ての者を公爵邸の裏門から退場させよ。騒ぎ立てる者は許さん」

「ルーカス様、何か…」

　私は不安になり、そっと彼に尋ねる。

「アエナ。心配しないで。ユーカの最後の残滓が、今、完全に消える」

　彼は、私を公爵邸の別室へとエスコートし、事の次第を語ってくれた。

「天空の孤塔に収監されていたユーカだが、今日の舞踏会の喧騒に乗じて、彼女の最後の共犯者たちが、公爵邸の最深部にある公爵家の金庫を狙って侵入したそうだ」

「なんですって！金庫を」

「ああ。金庫の中には、長年公爵家が秘匿してきた、王家との関わりを示す最重要文書が保管されている。ユーカは、それを盗み出し、王家に渡すことで、私への復讐を完遂しようとしたのだ」

　彼女は、自分が孤塔で朽ち果てようとも、ルーカス様の全てを奪うことに執着していた。なんと恐ろしい憎しみだろう。

「しかし、衛兵たちがそれを察知し、金庫の前で侵入者たちを包囲した。その侵入者の手には、ユーカからの最後の書簡が握られていたそうだ」

　ルーカス様は、その書簡を私に手渡された。そこには、ユーカ様の歪んだ憎しみが、最後の筆跡で綴られていた。

「ルーカスよ。お前がその子爵の娘と幸福になることは許さない。私は地獄からでもお前の全てを呪い続ける。お前が最も大切にするものを、必ず奪い取る…」

「卑劣な。最後まで…」

　私は、その書簡を握りしめた。しかし、もう私は動揺しない。私の隣には、私の全てを守ってくれる私の公爵がいるのだから。

　ルーカス様は、すぐに事態を収拾された。衛兵たちは、ユーカ様の最後の共犯者たちを拘束し、全ての陰謀は露呈した。

　そして、ルーカス様は、王都の司法と協議し、ユーカ様が、終身収監という判決を受けながらも、なおも公爵家への破壊工作を企てたという事実をもって、彼女への最後の清算を行うことを決断された。

「アエナ。ユーカは、永遠に、この王国の歴史からその名を抹消される。彼女の存在は、公爵家にとって、存在しなかった悪夢となるだろう」

　その夜、舞踏会の興奮が冷めやらぬ公爵邸の寝室で、私とルーカス様は、改めて二人だけの時間を過ごした。

「アエナ。もう、誰も私たちを邪魔しない」

　彼は、私を熱い抱擁で包み込んだ。彼の体温と、私の心を満たす愛の感触が、私にとっての真実である。

「私の人生は、君との出会いによって、暗い霧の中から、光の道へと導かれた。君の優雅なスルー術と、私への変わらぬ信頼が、全ての悪意を浄化したのだ」

「ルーカス様。私も、あなた様がいなければ、あの毒婦の悪意に打ちのめされていたでしょう。あなた様の強さと、私への愛が、私を強くしてくれたのです」

　私たちは、その夜、何度も愛を確かめ合った。彼の腕の中で、私は、公爵夫人としての成功や、富や名声など、全てを超えた、真の愛というハッピーエンドを迎えたことを知る。

　ルーカス様と私、グロース公爵夫妻が築く新たな公爵家は、ユーカ様の憎しみではなく、永遠の愛と信頼という強固な基盤の上に、永遠の繁栄を約束されている。

　窓の外には、改築された北棟の図書館の灯りが、穏やかに輝いていた。その光は、私たちの愛が、この先もずっと、清らかに、そして力強く、公爵家を照らし続けることを示しているようだった。