聖女の身代わりとして捨てられた私は、隣国の魔王閣下に拾われて溺愛される

紅葉山参

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世界で一番幸福な花嫁に捧ぐ、永遠の誓い

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 アステリア王国との決別から数ヶ月が経ちました。  帝都はかつてないほどの熱狂に包まれています。

 今日は、ノクティス帝国皇帝ヴォルデレード閣下と、始祖の聖女レティシア――つまり、私との婚礼の儀が執り行われる日なのです。

 朝から帝都中の教会で鐘が打ち鳴らされ、街の至るところには白銀の旗と真紅の薔薇が飾り付けられています。  私は、鏡の中に映る自分の姿を、どこか遠い国の物語の主人公を見るような気持ちで眺めていました。

「……本当に、夢ではないのですね」

 指先でそっと、ヴェールの裾に触れてみます。  そこには、ヴォルデレード様が自ら選んだ最高級の魔力結晶が縫い込まれており、私が動くたびに虹色の光を放ちます。

 かつての私は、お姉様の結婚式のために、一日中膝をついて彼女のドレスの裾を縫わされていました。  針で指を刺して血が滲んでも、「汚らわしい血でドレスを汚すな」と罵られ、食事も与えられずに物置に閉じ込められた……。

 そんな暗い記憶が、ふと脳裏をよぎります。

「……レティシア様? どうかなさいましたか?」

 心配そうに覗き込んできたのは、私の専属メイドとなったカミラでした。  彼女は私の目元に涙が浮かんでいるのを見て、慌てて刺繍入りのハンカチを取り出しました。

「いえ、なんでもないの。ただ、幸せすぎて、少し怖くなってしまっただけよ」

「怖がることなどございませんわ。陛下が、レティシア様を不幸にするはずがございませんもの。むしろ、愛が重すぎてお疲れにならないか、そちらの方が心配ですわ⁉ 」

 カミラの茶目っ気たっぷりの言葉に、私は思わず小さく吹き出してしまいました。  そうです、今の私には、寄り添ってくれる味方がこんなにたくさんいるのです。

 やがて、式の始まりを告げる勇壮なラッパの音が響き渡りました。

 大聖堂の重厚な扉が開くと、そこには真っ直ぐなレッドカーペットの先に、私の愛する人が立っていました。  今日の彼は、漆黒の軍服に眩い金糸の刺繍を施した、威風堂々たる姿です。

 その緋色の瞳が私を捉えた瞬間、彼は誰にも見せたことのないような、蕩けるほど甘い微笑みを浮かべました。

 一歩、また一歩と彼に近づくたび、参列している貴族や平民代表たちの感嘆の声が耳に届きます。

「なんて神々しい姿だ……。まさに、闇の王を癒やす光の乙女だ」 「始祖の聖女様、万歳! 帝国に幸あれ!」

 かつて私を「災いの子」と呼んだ人はいません。  ここにあるのは、純粋な祝福と、未来への期待に満ちた眼差しだけでした。

 祭壇に辿り着くと、ヴォルデレード様が私の手を取りました。  彼の大きな掌は、少しだけ震えているように感じられました。

 あんなに強大な力を持つ彼が、私との誓いを前に緊張している。  その事実が、私の胸を愛しさでいっぱいに満たしていきます。

「……レティシア。今日という日を、私は千年前から待っていたような気がする」

 彼は私にしか聞こえない低い声で囁きました。  その瞳には、私という存在を二度と離さないという、強烈な情熱が宿っています。

「君を私の妃として、この世界のすべてに宣言できることを、誇りに思う」 「……私もです、あなた。私を見つけてくれて、本当にありがとうございます」

 神官の言葉に頷き、私たちは永遠の誓いの口づけを交わしました。

 その瞬間。  私の体から、これまで以上に澄んだ白銀の光が溢れ出し、大聖堂全体を温かな輝きで満たしました。

 それは聖女の祝福。  帝国の全土に及ぶ、不変の守護と繁栄の魔法でした。

「誓おう、レティシア。君を傷つけるすべてのものから、私はこの翼で君を護り抜く。たとえ神が君を連れ去ろうとしても、私は天を焼き尽くしてでも君を取り戻すだろう」

 少しだけ独占欲が強すぎる誓いの言葉に、私は幸せな苦笑いを浮かべました。  けれど、それが彼の真実の愛なのだと、誰よりも私が知っています。

 鳴り止まない拍手と歓声の中、私たちは新しい人生への第一歩を踏み出しました。  もう、後ろを振り返ることはありません。

 私の隣には、最強で、最高に甘い旦那様がいるのですから。
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