虐げられし陰の皇女ですが、生贄嫁いだ隣国で「蛮王」に甘く愛され、飯テロ&内政チートで国を救うことになりました

紅葉山参

文字の大きさ
27 / 56
水の改革と、帝国からの経済制裁

蛮王の甘い看病と、三度目の危機

しおりを挟む
【水の浄化儀式】を終え、その直後から高熱を出して倒れ込んだスーザンを、ロキニアス王は誰にも触れさせず、自ら看病した。彼は、戦場で何千もの敵を討ち、何万もの兵士を率いた【蛮王】の姿を捨て、ただ一人の女性の看病に全てを捧げた。

「水だ、スーザン。一口でもいいから飲め」

 彼は、氷で冷やした清浄な水を、スーザンの唇に何度も運んだ。彼女の体は、この数ヶ月に及ぶ【硝石プロジェクト】と【水の改革】、【食糧外交】という、休む間のない激務によって、極限まで消耗していた。彼女の内政チートは国家を救ったが、代償としてその身を削っていたのだ。

 ロキニアスは、自分が略奪してきた宝よりも、この王妃の命の方が遥かに価値があることを痛感していた。

「目を覚ませ、スーザン。貴様が倒れてしまえば、トロイセンどころか、私自身が意味を失う」

 彼の声は、戦場での号令とは似ても似つかない、甘く、切羽詰まった響きを持っていた。彼は、スーザンの細い手を握りしめ、自分がこれまで彼女にかけた負担の全てを、今、償おうとしているかのように、献身的に看病を続けた。

 数日後、高熱は引き、スーザンはゆっくりと意識を取り戻した。目の前にいたのは、頬に無精髭を生やし、甲冑の代わりに柔らかい寝間着姿のロキニアス王だった。彼は、スーザンが目を覚ましたことに安堵し、涙腺が緩むのを必死で堪えた。

「王よ……政務は、どうなさいましたか」

「知るか。貴様が倒れている間、全てグスタフに任せた。貴様がそばにいない政務など、無意味だ。貴様は、ただ私のもとで、ゆっくりと回復すればいい」

 ロキニアスは、スーザンを抱き起こし、彼女がこの世界で最も愛する【米と、ミョウバンで浄化した水】で作られた、消化に良いお粥を、自ら食べさせた。

「食え。貴様が作ったこの国の最高の恵みだ。貴様自身が、これを食べなければならない」

 スーザンは、王の変わらぬ溺愛に、心からの安堵を覚えた。彼が、彼女の知恵だけでなく、彼女の存在そのものを愛していることが伝わってくる。

「ありがとう、王よ。わたくしの身体は大丈夫です。あと一週間もすれば、完全に回復します」

 スーザンの回復を知ったグスタフ宰相は、安堵とともに、緊急の報告を携えて私室へやってきた。

「王よ、王妃殿下。神聖教団国家から、外交使節団が到着しました。彼らは、王妃殿下の【水の浄化儀式】について、公に【異端審問】を求めに来ました」

 グスタフの顔色は、帝国との経済戦争時よりも遥かに青ざめていた。教団の使節団は、単なる外交官ではなく、その背後に【精神的な暴力】と、全大陸の【信仰的な圧力】を背負っていたからだ。

「異端審問だと?」ロキニアスは激しい怒りを見せた。

「彼らは、王妃殿下の【ミョウバンを用いた浄化】は、神の恩寵を冒涜する【魔術】であると主張しています。さらに彼らは、もし王妃殿下が教団の裁きを受け入れなければ、全大陸の信徒に対し、トロイセンへの【精神的な不買運動】と、【聖戦の呼びかけ】を行うと脅しています」

 これは、帝国とは比較にならない、トロイセンの【蛮族の民】の心に深く刺さる攻撃だった。蛮族の民は、ロキニアス王を恐れ、スーザンの奇跡を信じていたが、彼らの根底には、幼い頃から教え込まれた【神聖教団国家の信仰】が深く根付いている。もし教団がスーザンを魔女と断罪すれば、民衆の心は一瞬で離反し、内政は完全に崩壊するだろう。

「スーザン……貴様が耳元で囁いた【狂気的な計画】とやらを、今すぐ実行する時が来たのか?」ロキニアスは、スーザンの手を取り、真剣な瞳で見つめた。

 スーザンは、まだ完全に回復していない体を起こし、力強い眼差しで王を見つめ返した。彼女の瞳は、疲労の色を消し去り、知恵の光に満ちていた。

「はい、王よ。これは、剣や火薬では解決できない【信仰の戦い】です。わたくしは、彼らが最も恐れるものを、彼ら自身の前で突きつけます。彼らはわたくしを魔女と呼ぶ。ならば、わたくしは彼らの前で、【神の代理人】としての【最後の奇跡】を演じてみせましょう」

 スーザンは、ロキニアスに対し、使節団が到着する前に準備すべき【三つの指示】を出した。一つは、王都の地下深くから、【奇妙な鉱物】を大量に運び上げること。二つ目は、王都の全ての貴族と重臣、そして可能な限り多くの民衆を、謁見の場に集めること。そして三つ目は……【火薬が完全に完成した】という【虚偽の情報】を、使節団の中に潜むスパイにリークすることだった。

「王よ。わたくしの最後の知恵は、この世界に、真の【光】と【科学】の力を示す、最初で最後の舞台となります」

 彼女の、静かで決定的な言葉に、ロキニアスは全身の血が熱くなるのを感じた。蛮王と陰の皇女による、神聖教団国家との【命運を賭けた知恵の対決】が、今、幕を開けようとしていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

処理中です...