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帝国の影と王の愛の証明
教皇庁の誘いと蛮王の怒り
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トロイセンの使節団が街道を進み始めて三日目、私たちの予想通り事態は動いた。
神聖教団国家の国境に近い山間部に入ったところで、使節団は一団の武装した修道士たちによって行く手を阻まれた。彼らは教皇庁直属の騎士団ではなく、より秘密裏に動く聖域防衛隊の一部のようだ。
「蛮王ロキニアス。我々は神聖教団国家の枢機卿代理である。貴殿の王妃スーザン様を、聖なる裁きのために我々の聖域へお連れしたい」
聖域防衛隊の隊長が、ロキニアスへと向かって、傲慢な要求を突きつけてきた。
彼らの目的は明らかだ。私が流させた偽の手紙に誘われ、私が帝国へ知恵を渡す前に捕獲しようと動いたのだ。そして、彼らが私の護衛が手薄になると読んだのはロキニアスが自ら国を離れているこの瞬間だった。
「裁きだと⁉ 」ロキニアスは馬車から降りることもなく、低い声で怒鳴った。
彼の声は雷鳴のように響き渡り、聖域防衛隊の馬たちさえも怯ませた。
「貴様らが、我が王妃に何を裁くと言うのだ。飢餓と疫病から民を救う知恵か⁉ 貴様らの神がもたらさなかった真の恵みか⁉ 」
ロキニアスの武力は、言葉だけで相手を圧倒する。彼は聖域防衛隊を一瞥するだけで、彼らが単なる信仰心の厚い愚かな兵士たちであり、トロイセンの精鋭部隊の敵ではないことを理解した。
しかしその時、聖域防衛隊の後方から、もう一人の人物が進み出た。
それは、私、スーザンの故国アステリアの王族、ユーリウス王子だった。彼はアステリアが帝国に滅ぼされた後、教皇庁に身を寄せていた王族の生き残りだ。
彼の顔には、かつての貴族の威厳と、逃亡者としての惨めさが混じっていた。
「姉上……。スーザン姉上」
ユーリウス王子は私、スーザンの名を呼び、必死の形相で訴えかけてきた。
「姉上は、あの蛮王に無理やり連れられているのだと、私は知っている。あの蛮王の元から逃れ、我々と共に教皇庁の庇護下に入るべきだ。姉上の知恵は、アステリア復興のために使われるべきだ‼ 」
彼の言葉は、ロキニアスを激昂させるのに十分だった。彼の王妃が、かつての故国の残党に「蛮王の元から逃れろ」と誘われているのだ。
「貴様……‼ 」ロキニアスは激しい怒りを露わにし、腰に提げた蛮族の剣の柄に手をかけた。
「王よ、お待ちください」
私は、すぐに馬車から降り、ユーリウス王子の前に立った。ロキニアスは、私の制止に渋々ながらも剣から手を離した。
私は、かつて私を生贄として見捨てた弟の顔を、冷静に見つめた。彼らの私への感情は、愛情などではない。彼らは私を、アステリア再興のための道具として見ているのだ。
「ユーリウス」私は、あえて彼の名を呼んだ。
「あなたはわたくしを蛮王から救うと言いますが、あなたは、わたくしが生贄としてこの国へ送られたとき、一体どこにいましたか⁉ あなたがたはわたくしを見捨て、帝国に国を滅ぼされた後、教皇庁の庇護という名のもとで命を永らえている」
私の鋭い言葉に、ユーリウスは顔を赤らめた。
「それは……。帝国に抵抗する力がなかったのだ。姉上、我々は……」
「言い訳はよしてください」私は彼の言葉を遮った。
「わたくしは、蛮王ロキニアスに愛され、このトロイセンの王妃となりました。わたくしがもたらした知恵によって、この国は飢餓から救われ、疫病から解放された。わたくしの知恵は、このトロイセンの王の愛と武力によって、完璧に守られています」
私はロキニアスの傍へ戻り、彼の頑丈な腕に自分の腕を絡ませた。
「ユーリウス。わたくしは、あなた方の復興のための道具ではありません。わたくしが今、向かっているのは帝国です。トロイセンの知恵を、あなたの故国を滅ぼした帝国に売りつけ、その代価として、あなた方が守れなかったアステリアの知識を奪い返すために」
私の言葉は、彼にとって最大の屈辱となった。彼は、私を道具として扱おうとしたが、その私自身が、彼らの故国の敵である蛮王の傍で、より大きな力と知恵を振るっているのだ。
ロキニアスは私の行動を満足げに見ていた。そして、ユーリウス王子へと向き直った。
「聞いたか、王子殿。我が王妃は、貴様らのような敗者の庇護など必要としていない。貴様らは、我が王妃の知恵に触れる資格さえない」
ロキニアスは、聖域防衛隊へと向かって、低い声で命令を下した。
「全隊に告ぐ。この愚かな王子を追い払え。だが殺すな。奴らを教皇庁へ送り返し、我が王妃の知恵と愛が、どれほど強固なものであるか、教皇に伝えるがいい」
トロイセンの精鋭部隊は、ユーリウス王子と聖域防衛隊を圧倒的な武力で制圧し、彼らを教皇庁の領域へと追いやった。
ロキニアスは、彼らが遠ざかるのを見届けると、私を強く抱きしめた。
「良く言った、スーザン。貴様は、私を選んだ。その選択に、私は最大の武力で報いる」
私は、彼の胸の中で安堵の息を漏らした。これで、教皇庁もアステリアの残党も、私を武力で奪い返すことは不可能だと知っただろう。この遠征は、私、スーザンが蛮王の絶対的な王妃であることを、大陸全体に知らしめる最初の機会となったのだ。
神聖教団国家の国境に近い山間部に入ったところで、使節団は一団の武装した修道士たちによって行く手を阻まれた。彼らは教皇庁直属の騎士団ではなく、より秘密裏に動く聖域防衛隊の一部のようだ。
「蛮王ロキニアス。我々は神聖教団国家の枢機卿代理である。貴殿の王妃スーザン様を、聖なる裁きのために我々の聖域へお連れしたい」
聖域防衛隊の隊長が、ロキニアスへと向かって、傲慢な要求を突きつけてきた。
彼らの目的は明らかだ。私が流させた偽の手紙に誘われ、私が帝国へ知恵を渡す前に捕獲しようと動いたのだ。そして、彼らが私の護衛が手薄になると読んだのはロキニアスが自ら国を離れているこの瞬間だった。
「裁きだと⁉ 」ロキニアスは馬車から降りることもなく、低い声で怒鳴った。
彼の声は雷鳴のように響き渡り、聖域防衛隊の馬たちさえも怯ませた。
「貴様らが、我が王妃に何を裁くと言うのだ。飢餓と疫病から民を救う知恵か⁉ 貴様らの神がもたらさなかった真の恵みか⁉ 」
ロキニアスの武力は、言葉だけで相手を圧倒する。彼は聖域防衛隊を一瞥するだけで、彼らが単なる信仰心の厚い愚かな兵士たちであり、トロイセンの精鋭部隊の敵ではないことを理解した。
しかしその時、聖域防衛隊の後方から、もう一人の人物が進み出た。
それは、私、スーザンの故国アステリアの王族、ユーリウス王子だった。彼はアステリアが帝国に滅ぼされた後、教皇庁に身を寄せていた王族の生き残りだ。
彼の顔には、かつての貴族の威厳と、逃亡者としての惨めさが混じっていた。
「姉上……。スーザン姉上」
ユーリウス王子は私、スーザンの名を呼び、必死の形相で訴えかけてきた。
「姉上は、あの蛮王に無理やり連れられているのだと、私は知っている。あの蛮王の元から逃れ、我々と共に教皇庁の庇護下に入るべきだ。姉上の知恵は、アステリア復興のために使われるべきだ‼ 」
彼の言葉は、ロキニアスを激昂させるのに十分だった。彼の王妃が、かつての故国の残党に「蛮王の元から逃れろ」と誘われているのだ。
「貴様……‼ 」ロキニアスは激しい怒りを露わにし、腰に提げた蛮族の剣の柄に手をかけた。
「王よ、お待ちください」
私は、すぐに馬車から降り、ユーリウス王子の前に立った。ロキニアスは、私の制止に渋々ながらも剣から手を離した。
私は、かつて私を生贄として見捨てた弟の顔を、冷静に見つめた。彼らの私への感情は、愛情などではない。彼らは私を、アステリア再興のための道具として見ているのだ。
「ユーリウス」私は、あえて彼の名を呼んだ。
「あなたはわたくしを蛮王から救うと言いますが、あなたは、わたくしが生贄としてこの国へ送られたとき、一体どこにいましたか⁉ あなたがたはわたくしを見捨て、帝国に国を滅ぼされた後、教皇庁の庇護という名のもとで命を永らえている」
私の鋭い言葉に、ユーリウスは顔を赤らめた。
「それは……。帝国に抵抗する力がなかったのだ。姉上、我々は……」
「言い訳はよしてください」私は彼の言葉を遮った。
「わたくしは、蛮王ロキニアスに愛され、このトロイセンの王妃となりました。わたくしがもたらした知恵によって、この国は飢餓から救われ、疫病から解放された。わたくしの知恵は、このトロイセンの王の愛と武力によって、完璧に守られています」
私はロキニアスの傍へ戻り、彼の頑丈な腕に自分の腕を絡ませた。
「ユーリウス。わたくしは、あなた方の復興のための道具ではありません。わたくしが今、向かっているのは帝国です。トロイセンの知恵を、あなたの故国を滅ぼした帝国に売りつけ、その代価として、あなた方が守れなかったアステリアの知識を奪い返すために」
私の言葉は、彼にとって最大の屈辱となった。彼は、私を道具として扱おうとしたが、その私自身が、彼らの故国の敵である蛮王の傍で、より大きな力と知恵を振るっているのだ。
ロキニアスは私の行動を満足げに見ていた。そして、ユーリウス王子へと向き直った。
「聞いたか、王子殿。我が王妃は、貴様らのような敗者の庇護など必要としていない。貴様らは、我が王妃の知恵に触れる資格さえない」
ロキニアスは、聖域防衛隊へと向かって、低い声で命令を下した。
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トロイセンの精鋭部隊は、ユーリウス王子と聖域防衛隊を圧倒的な武力で制圧し、彼らを教皇庁の領域へと追いやった。
ロキニアスは、彼らが遠ざかるのを見届けると、私を強く抱きしめた。
「良く言った、スーザン。貴様は、私を選んだ。その選択に、私は最大の武力で報いる」
私は、彼の胸の中で安堵の息を漏らした。これで、教皇庁もアステリアの残党も、私を武力で奪い返すことは不可能だと知っただろう。この遠征は、私、スーザンが蛮王の絶対的な王妃であることを、大陸全体に知らしめる最初の機会となったのだ。
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