溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~

紅葉山参

文字の大きさ
7 / 15

お忍び散策と、王子の素顔

しおりを挟む
 夫ビヨンド様は、私リーシャとの二人きりの時間を大切にしてくれる。今日は、平民の服に着替えて、王都の市場にお忍びで出かけることになった。

「リーシャ、きみは本当に何を着ても可愛いな」

 彼は、私が選んだシンプルなワンピース姿を見て、目を細めて褒めてくれる。

「ビヨンド様こそ、その格好だと、ただの素敵な男性に見えます。誰も王子だとは気づかないでしょうね」

 彼のカジュアルな服装は、いつも見ている威厳ある王子とは違い、親しみやすく、とても魅力的だ。

 私たちは手を繋いで、人混みの中を歩いた。市場は活気に満ちていて、様々な匂いや声が飛び交っている。

「愛しい人、何か欲しいものはないか?何でも買ってあげよう」

 彼は、私に何か買ってあげたくて仕方ない様子だ。

「ありがとうございます、ビヨンド様。でも、こうして二人で歩いているだけで、十分幸せです」

 私がそう言うと、彼は少し拗ねたような顔をした。

「そうか。だが、私はきみに何かを捧げたいのだ。きみの喜ぶ顔が見たい」

 私たちは、焼き菓子を売っている露店に立ち寄った。彼は、私リーシャの好きな味を覚えていて、それを買ってくれた。

「ほら、一口食べさせてくれ、リーシャ」

 彼は、私が口に運んだ焼き菓子を、私の唇から直接分けて食べようとする。私は周囲の目が気になり、慌てて彼に焼き菓子の塊を渡した。

「もう、ビヨンド様!人前ですよ」

「別に構わないだろう。私たちは夫婦だ。それに、きみがあまりにも可愛すぎるから、つい…」

 彼は、焼き菓子を食べながら、満面の笑みを浮かべている。この時の彼は、王位継承者という重責を背負った王子ではなく、ただ私を愛する一人の男性だ。

 散策中、彼は私リーシャのために、突然、路地裏に咲いていた小さな花を摘んで、私の髪に挿してくれた。

「きみの美しい髪に、この花がよく似合う。私の妻は、どんな宝石よりも、自然の美しさが似合う女性だ」

 彼の何気ない行動一つ一つが、私の心を温かくしてくれる。

 市場を出て、私たちは静かな公園で休憩した。

「リーシャ、きみとこうして過ごす時間が、私にとってどれほど大切か、きみにはわかるだろうか」

 彼は私の手を握り、真剣な眼差しで私を見つめた。

「はい。私も、あなたが隣にいてくださることが、一番の幸せです」

「ああ、ありがとう。きみがいなかったら、私はきっと、感情のない人形のような人間になっていただろう。きみが、私の人生に彩りを与えてくれた」

 彼は、王子の仮面を脱いだ、彼の素直な気持ちを私に打ち明けてくれる。その信頼が、私をさらに彼に惹きつける。

 夜になり、私たちは王宮に戻った。部屋に戻ると、彼はすぐに私を抱きしめる。

「今日一日の、きみの可愛い笑顔を、私は何度も思い出すだろう。きみは、私にとって、最高の宝物だ」

 彼は、お忍びデートで買った小さな焼き菓子を、私と一緒に食べたがった。私たちは寝台の上で、愛を囁き合いながら、お菓子を分け合った。

「甘いな…このお菓子よりも、きみの唇の方が、ずっと甘いけれど」

 彼はそう言って、私にキスをした。

 私たちは、王子の素顔と、王妃の素顔を知り合うことで、さらに愛を深めていく。この夜もまた、彼の情熱は尽きることがなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜

夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」 婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。 彼女は涙を見せず、静かに笑った。 ──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。 「そなたに、我が祝福を授けよう」 神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。 だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。 ──そして半年後。 隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、 ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。 「……この命、お前に捧げよう」 「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」 かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。 ──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、 “氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。

顔も知らない旦那様に間違えて手紙を送ったら、溺愛が返ってきました

ラム猫
恋愛
 セシリアは、政略結婚でアシュレイ・ハンベルク侯爵に嫁いで三年になる。しかし夫であるアシュレイは稀代の軍略家として戦争で前線に立ち続けており、二人は一度も顔を合わせたことがなかった。セシリアは孤独な日々を送り、周囲からは「忘れられた花嫁」として扱われていた。  ある日、セシリアは親友宛てに夫への不満と愚痴を書き連ねた手紙を、誤ってアシュレイ侯爵本人宛てで送ってしまう。とんでもない過ちを犯したと震えるセシリアの元へ、数週間後、夫から返信が届いた。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。 ※全部で四話になります。

下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~

イシュタル
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。 王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。 そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。 これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。 ⚠️本作はAIとの共同製作です。

婚約者に値踏みされ続けた文官、堪忍袋の緒が切れたのでお別れしました。私は、私を尊重してくれる人を大切にします!

ささい
恋愛
王城で文官として働くリディア・フィアモントは、冷たい婚約者に評価されず疲弊していた。三度目の「婚約解消してもいい」の言葉に、ついに決断する。自由を得た彼女は、日々の書類仕事に誇りを取り戻し、誰かに頼られることの喜びを実感する。王城の仕事を支えつつ、自分らしい生活と自立を歩み始める物語。 ざまあは後悔する系( ^^) _旦~~ 小説家になろうにも投稿しております。

『完璧すぎる令嬢は婚約破棄を歓迎します ~白い結婚のはずが、冷徹公爵に溺愛されるなんて聞いてません~』

鷹 綾
恋愛
「君は完璧すぎる」 その一言で、王太子アルトゥーラから婚約を破棄された令嬢エミーラ。 有能であるがゆえに疎まれ、努力も忠誠も正当に評価されなかった彼女は、 王都を離れ、辺境アンクレイブ公爵領へと向かう。 冷静沈着で冷徹と噂される公爵ゼファーとの関係は、 利害一致による“白い契約結婚”から始まったはずだった。 しかし―― 役割を果たし、淡々と成果を積み重ねるエミーラは、 いつしか領政の中枢を支え、領民からも絶大な信頼を得ていく。 一方、 「可愛げ」を求めて彼女を切り捨てた元婚約者と、 癒しだけを与えられた王太子妃候補は、 王宮という現実の中で静かに行き詰まっていき……。 ざまぁは声高に叫ばれない。 復讐も、断罪もない。 あるのは、選ばなかった者が取り残され、 選び続けた者が自然と選ばれていく現実。 これは、 誰かに選ばれることで価値を証明する物語ではない。 自分の居場所を自分で選び、 その先で静かに幸福を掴んだ令嬢の物語。 「完璧すぎる」と捨てられた彼女は、 やがて―― “選ばれ続ける存在”になる。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

処理中です...