七人の美形守護者と毒りんご 「社畜から転生したら、世界一美しいと謳われる毒見の白雪姫でした」

紅葉山参

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契約の夜 完璧な騎士 守護者アルバス

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 七つの塔での生活は、スノーリアが想像していたよりも遥かに厳格なものだった。彼らは「小人」などでは決してなく、元々王国の騎士団や魔術師団で名を馳せたエリート中のエリートたちだ。彼らがこの森に集まったのは、王国の腐敗や権力争いを嫌い、自分たちの理想とする自由な研究や修行を求めたからだという。だからこそ、女王の追跡から身を守るための規律は徹底されていた。

 スノーリアは、彼らのリーダー的存在であるアルバスによって、彼が住まう最も大きな石の塔の一室を与えられた。その部屋は簡素だが、防衛魔術が最も強力に施されており、女王の刺客が近づくことはまず不可能だという。

 夜になり、全員がアルバスの塔の広間に集まった。七人の美形が並ぶ光景は、改めて見ても圧巻の一言だ。アルバスの他、ルーク、シリウス、レオニス、ガイウス、カイン、そして最後に一人、大柄な鎧を纏った最後の守護者が姿を見せた。彼もまた、厳ついながらも端正な顔立ちをしていた。

 アルバスが、広間の中心に立つスノーリアに向かい、冷徹な声で告げた。

「貴女を匿う。その契約について、今宵取り決める。貴女を女王の毒から守るために、我々が負うリスクは甚大だ。相応の代償を払ってもらう」

 スノーリアは背筋を伸ばし、彼の銀色の瞳を見つめ返した。

「まず第一に、塔の結界の外には絶対に出ないこと。外に出ることは、我々の存在を女王に知らせるリスクを伴う。これは死守すべき鉄則だ。もし破れば、貴女を容赦なく結界の外へ追放する」

「承知いたしました」

「第二に、我々七人以外の人間と、いかなる接触も持たないこと。手紙、伝言、魔術による交信。全てにおいてだ。カインの情報網を用いても、外部との接触は危険と判断する」

 隣に立っていたカインが、扇子を広げ、不敵な笑みを浮かべた。彼は七人の中で最も中性的な美しさを持っていた。

「女王の罠かもしれん。甘い言葉で、我々から情報を引き出そうとする者もいるだろう。姫の美貌はそれだけの力を持っている。我々も、それを理解しているからこそ、警戒を怠らない」

「もちろんです。女王には心底うんざりしています。裏切るつもりは一切ありません。私自身、もう二度とあの城に戻りたくはないのです」

 スノーリアが強く言い切ると、アルバスは静かに頷き、視線を最後の一人、武骨な鎧を纏った男に向けた。

「これが七人目の守護者、ガイウスだ。塔の最も強力な防御壁であり、無口だが、その実力は折り紙つきだ」

 ガイウスは、無言で一度スノーリアに深く頭を下げた。言葉はなかったが、その眼差しには静かな決意が宿っているのが分かった。

「そして第三に、貴女の魔力についてだ。毒を見抜く力。その魔力を惜しみなく提供すること。女王が次に我々をどう攻めてくるか。その毒の魔力の痕跡を、貴女の力で正確に把握してもらいたい。それが、貴女の唯一の役割だ」

 スノーリアは目を閉じた。毒を見抜く力は、彼女の命綱でもある。だが、彼らが彼女を守るための代償だと理解していた。

「分かりました。私の魔力は、あなた方の盾として使ってください。女王を打ち倒すために、協力させていただきます」

 その言葉を聞いた瞬間、周囲の六人の表情がわずかに和らいだ。ルークは手を叩き、シリウスは口元を緩めた。彼らが彼女の協力を心から望んでいることが伝わってきた。

「契約は成立だ。貴女は今日から、我々七人の守護対象となる」

 アルバスはそう言い放ち、一歩踏み出した。そして、スノーリアの肩に手を置き、彼女の耳元に囁いた。

「ただし、スノーリア。知っておけ。我々は小人ではない。貴女は守られるだけの存在ではない。貴女の美しさと、その覚悟に、我々七人全員が魅了されている。いつ誰が、その契約以上の関係を求めようとするか。貴女自身で、我々の愛情から身を守れ」

 彼の息遣いが首筋にかかり、スノーリアはゾクリとした。その言葉は、冷たい警告でありながら、同時に七人からの熱烈な誘惑を彼女に突きつけていた。彼らは、彼女を守る壁であると同時に、彼女の心を奪おうとする敵でもあるのだ。

 アルバスは彼女から離れると、他のメンバーに指示を出し始めた。完璧な騎士として、彼の理性と規律は誰よりも優れている。しかし、その内側に潜む独占欲と熱情を、スノーリアは肌で感じ取った。

 彼の指示に従い、スノーリアは自分に与えられた部屋に戻った。

 部屋は簡素だが、清潔で居心地が良い。窓の外には、七つの塔のシルエットが月明かりに照らされ、幻想的な風景を作り出していた。テーブルの上には、真新しい本と、温かいハーブティーが置かれていた。ハーブティーからは、優しく、毒とは無縁の癒やしの魔力が感じられた。

(この過保護なほどの厳格さこそ、アルバス様流の愛情なのだろうか)

 冷徹な態度とは裏腹に、彼は細やかな気遣いも怠らない。

 スノーリアはハーブティーを一口飲み、安堵のため息をついた。この塔にいる限り、あの毒の恐怖から解放される。しかし、七人の美形守護者に囲まれた生活は、命の危険とは別の意味で、刺激的で、緊張感に満ちたものになるだろう。特定の誰かと恋に落ちる必要はない。ただ、彼らの力を借りて生き延びるのだ。

 彼女は、窓の外の闇を見つめた。この七人の熱情的な独占欲に、どう対応していくか。それが、彼女の新たな、そして最も楽しい使命になるだろう。
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