社内マリアージュの裏切り:愛した夫と不倫相手に贈る、完璧な最後

紅葉山参

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情報収集と宣戦布告

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 タイキが帰宅したのは翌日の朝だった。

 彼は私を見るなり少し焦ったような顔をした。しかしすぐにいつもの爽やかな笑顔を取り戻し「あぁ、チセ……ごめん」と謝罪した。

「昨夜は本当にごめん。トラブルがあって、結局会社に泊まっちゃったよ。君にちゃんと連絡できなくて」

「いいのよ、タイキ。お仕事、お疲れ様」

 私はタイキの言葉に何の動揺も見せず、完璧な妻を演じた。彼の目を見て優しく微笑んでみせた。その笑顔の裏で、私の頭の中では復讐計画のシミュレーションが猛烈な速度で進行していた。

 彼は私の笑顔に安心してキスをしてきた。私は生理的な嫌悪感を隠し、それを受け入れた。この感触もあと少しの我慢だ。

「そういえば、タイキ。最近仕事でよく会う同期のミチコから、タイキがすごく頑張ってるって聞いたわ」

 私がミチコの名前を出すと、タイキは一瞬顔を引きつらせた。

「ミ、ミチコが?ああ、まあ、彼女とは仕事で関わることも多いからね」

「そう。彼女私のこともすごく気にかけてくれて。夫婦のことも色々と相談に乗ってくれる、本当に良い友人よ」

 私は彼の反応を冷静に観察した。タイキは私がミチコとの関係を疑っていないことに安堵したようだ。彼はもう私の掌の上で踊る愚かな人形に過ぎない。

 私が求めるのは感情的な爆発ではない。彼のキャリア、彼の社会的な地位を音もなく静かに、そして確実に奪い去ることだ。

 そのために必要なのはさらなる証拠、そして戦略である。

 
 その日から私はタイキの行動、ミチコの動き、そしてユキの情報を集めることにすべての時間を費やした。

 まず私は人事部にいるという利点を活かした。タイキとミチコの社内での人間関係、評価、そして彼らが関わる重要なプロジェクトの情報を頭に叩き込んだ。

 ターゲット1:タイキ(夫) 弱点: 営業部のエースという自負。キャリアと世間体。 目的: 社内、取引先、そして業界からの完全な追放。 戦術: 会社が極度に嫌う「公私混同」、そして「社内不倫の手引き」の証拠を決定的なタイミングで彼の上司と取引先にリークする。

 ターゲット2:ミチコ(不倫幇助の親友) 弱点: 人事部という立場。情報漏洩とモラル。 目的: 人事部からの追放。友人としての信頼の完全破壊。 戦術: 人事として知り得た私の個人情報(実家の帰省予定など)を不倫幇助のために利用した証拠を固め、社内規定違反で訴える。

 ターゲット3:ユキ(女子大生) 弱点: 学生という立場。学業と将来。 目的: タイキとの関係を清算させる。彼女の将来に大きな影を落とす。 戦術: 金銭のやり取りの証拠を大学側に突きつける。

 私はユキという女子大生の情報も徹底的に調べた。彼女が通う大学、専攻、そして彼女のSNSアカウントを特定した。

 タイキが愛用していた仕事用PCのパスワードは、彼と私が出会った日を逆さにした数字で、あっさりと解除された。

 彼の送受信履歴にはユキの大学のメーリングリスト宛に送られた、「金銭の受け渡しを匂わせる」具体的な内容のメールがいくつか残されていた。これは彼女の大学に突きつける決定的な証拠となる。

 
 証拠固めがほぼ完了した週末。タイキはまた「大事な接待」だと出かけて行った。おそらくミチコとの密会、あるいはユキとの逢瀬だろう。

 私は自分のスマートフォンから、ミチコへ連絡を入れた。

「ミチコへ。今度の水曜日のランチ、社外で二人っきりで会えないかな?大事な話があるの。チセより」

 そして私はユキが使っている匿名SNSアカウントにメッセージを送った。

「ユキさん、タイキさんの奥さんです。あなたとの関係についてお話ししたいことがあります。連絡をください」

 私は彼女たちの反応を待った。

 ミチコからはすぐに返信が来た。 ミチコ:「チセ、もちろん!大丈夫?何があったの?私で良ければ、いつでも話を聞くよ!」

 ユキからは翌日、私の予想を裏切らない傲慢さを含んだ返信が届いた。 ユキ:「奥さんから連絡が来るなんて、驚きました。でも、私からタイキさんを誘ったわけじゃありません。向こうから会いたいって、何度も連絡が来たので。私も大人として対価をもらっているだけです。私に連絡するより、タイキさんに直接言ったらどうですか?」

 私はそのメッセージを読んで静かに笑みを深めた。やはりこの女は自己中心的で金銭への執着が強い。謝罪など微塵も考えていない。この態度こそが彼女を追い詰める最高の材料となる。

「獲物は、逃げられない」

 愛したあなた、タイキ。そして私の大切な友人だったミチコ。

 あなたたちが築いた砂上の楼閣はもうすぐ私の手によって風前の灯火となる。

 私が目指すのはあなたたちから社会的な居場所、そして尊厳を奪い去ること。

 そう、これはあなたたちへの私からの氷の宣戦布告だ。
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