後継社長奮闘す

tathufuntou

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第五章 稼げる体質へ転換する

粗利率を取れるモデルを選択する

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都内に本社を構え、
高級注文住宅をつくる
達社長の知人の会社。

年収1500万円を越える
顧客がメインで
中には、桁違いの
富裕層顧客もいるという。

一国一城の主になる。
そんな、夢を実現する
お手伝いの出来る事業であり

かつ、さぞかし、
利益率が高いのだろう。

稼ぎ方カイカクを掲げる、
達社長にはあらゆる意味で
「羨ましい事業」に見えた。

ところが、同社の経常利益率、
この7.8年ずっと2、3%前後だそうだ。

つまり、
利益率が低いとされる建設業
すなわち、
達社長の会社と
あまり変わらないのである。

富裕層向けにもかかわらず、
なぜ利益が高くならないのか?

知人社長は、やや疲れた表情で
「注文住宅は難しいんだよ」
と話し、
理由を次のように答えてくれた。

単価は取れるけど、
注文住宅ゆえ、
こだわりや要求が厳しく、
変更、変更で原価がアップ。

結果、利益が残りにくい事が
大きな要因だそうだ。

実は、同社の粗利率。
詳しくは差し控えるが、なんと
業界平均と比較しても
数ポイント程度低いと言う。

特注する事も少なくない材料代や
難工事における職人さん代も
馬鹿にならず、そうした費用増で
利益率(粗利益率)は
なかなか高まらないようだ。

契約金額を上げれば
良さそうなものだが、

比較的裕福な顧客層とはいえ、
一定の予算の中でやらねばならない。

なぜなら、
いちいち追加料金ですと、
杓子定規に
お金の話しばかりしていては、

「夢」を購入しようとする顧客の
期待やモチベーションが高まらず、

富裕層マーケットで大切とされる
口コミや紹介など、いわゆる
ブランド価値に影響するゆえ
一定の厳しい要求を
受け入れているのだそうだ。

加えて、知人社長は
「プロとしてのプライドもある」
請負う側の事情もあるようだ。

「プランが決まった規格住宅を売る
会社の方が、粗利益率は高いし
プロモーション等も効率的に 
出来るから、経常利益率も好調だよ」

自重気味に
事例として教えてくれた
ある、
規格型のローコスト住宅会社。

規格ゆえ、
原価を掌握しやすいこともあり
粗利益率は、優に30%を越え
結果、なんと経常利益率は、
8%近くあるという。

高単価の富裕層向け
住宅会社が3%で、
一次取得向けのリーズナブルな
住宅会社は8%

この2事例が全てではないが
利益率でみるなら
「注文住宅より規格住宅」

高額でも一品一葉では難しい。
建設業と似た特性かもしれない。

「どの事業を選ぶか」
と同じかあるいはそれ以上に、
「どのモデルで事業運営するか」
が大切なのだ。

粗利率はビジネスモデルで決まる
考えさせられる1日だった。
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