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夜はウィルフレッドに抱かれて疲れ果てて眠り、ようやく起きたら朝食がある。昼食を食べ終えたくらいにウィルフレッドが数時間外出して、夕食の前に戻ってくる。という生活が数日続いた。
食材の調達や執務は、その数時間の間にすませているのだろう。ベルティーユの着替えのドレスも何枚か持ってきてくれた。メイドに着せてもらうようなものではなく、一人でも着替えられる簡単なものだ。
生活そのものは、快適かつ幸せだった。ウィルフレッドは以前と変わらぬ態度で接してくれるからだ。
ウィルフレッドはあれこれ世話を焼いてくれるし、夜は甘く優しく抱いてくれる。まるで、幻になってしまった新婚生活のようだ。
ベルティーユも彼に教わって、簡単な調理や洗濯ならできるようになってきた。
「じゃあね、ベル。いい子にしていてね」
いつものようにウィルフレッドを見送ると、ほう、とベルティーユはため息をついた。この幸せな生活は長くは続かない。いや、続けてはいけない。かりそめの幸せなのだから。
正直ベルティーユはこの生活をいつまでも続けていたいと思ったが、そうはいかない。はっきりとした日数は分からないが、ここでの暮らしをはじめて数日はたっている。残された時間を考えると、一刻も早く戻らなくてはならない。
「屋敷はどうなっているのかしら……。お父さまたち、きっととても心配しているわね」
ベルティーユは開かない窓から、外を見つめた。
フェザーストン伯爵家屋敷。
ウィルフレッドは、自室で執務をこなしていた。軽いノックとともに、執事が入ってくる。使用人の中で、ウィルフレッドがもっとも信頼を置いている人物だ。
「ウィルフレッド様、こちらが調査結果です」
「ご苦労様」
差し出された封筒をうけとったウィルフレッドは、その中から調査書類を出し、ぱらぱらとめくる。
「すべてウィルフレッド様のおっしゃっていた通りで、裏をとるだけでしたので簡単でした」
「それでもこの短期間では大変だっただろう。褒美は弾むよ」
「もったいないお言葉、ありがとうございます」
恭しく執事が頭を下げる。ウィルフレッドは書類を再び封筒にしまった。
「男爵家は、どのような様子?」
ウィルフレッドの問いに、執事は淡々と答えた。
「当然大変な騒ぎです。いま必死にベルティーユ様を捜索しています。期限まではなんとか探し出したいでしょうね。ウィルフレッド様を疑ってはいるようですが、確固たる証拠はありませんからね」
「まあそうだろう」
階級的に下であり、婚約破棄したことから負い目がある男爵家が、言い出せるはずなどない。ベルティーユがいなくなったことは公になっていないため、伯爵家では普段とまったく変わらない生活を送っていた。
もし伯爵の耳に入ったのなら、ウィルフレッドは厳しく詰問されたことだろう。
ベルティーユが無事でいることを知らせないのは多少心苦しくあったが、ウィルフレッドが恐れているのは彼以外から計画が漏れることだった。
事が首尾よく済めば、すぐに男爵家にベルティーユの無事を知らせよう。
ウィルフレッドは封筒を手に取って立ち上がった。
「これからすぐに乗り込む。時間はもうないからな」
食材の調達や執務は、その数時間の間にすませているのだろう。ベルティーユの着替えのドレスも何枚か持ってきてくれた。メイドに着せてもらうようなものではなく、一人でも着替えられる簡単なものだ。
生活そのものは、快適かつ幸せだった。ウィルフレッドは以前と変わらぬ態度で接してくれるからだ。
ウィルフレッドはあれこれ世話を焼いてくれるし、夜は甘く優しく抱いてくれる。まるで、幻になってしまった新婚生活のようだ。
ベルティーユも彼に教わって、簡単な調理や洗濯ならできるようになってきた。
「じゃあね、ベル。いい子にしていてね」
いつものようにウィルフレッドを見送ると、ほう、とベルティーユはため息をついた。この幸せな生活は長くは続かない。いや、続けてはいけない。かりそめの幸せなのだから。
正直ベルティーユはこの生活をいつまでも続けていたいと思ったが、そうはいかない。はっきりとした日数は分からないが、ここでの暮らしをはじめて数日はたっている。残された時間を考えると、一刻も早く戻らなくてはならない。
「屋敷はどうなっているのかしら……。お父さまたち、きっととても心配しているわね」
ベルティーユは開かない窓から、外を見つめた。
フェザーストン伯爵家屋敷。
ウィルフレッドは、自室で執務をこなしていた。軽いノックとともに、執事が入ってくる。使用人の中で、ウィルフレッドがもっとも信頼を置いている人物だ。
「ウィルフレッド様、こちらが調査結果です」
「ご苦労様」
差し出された封筒をうけとったウィルフレッドは、その中から調査書類を出し、ぱらぱらとめくる。
「すべてウィルフレッド様のおっしゃっていた通りで、裏をとるだけでしたので簡単でした」
「それでもこの短期間では大変だっただろう。褒美は弾むよ」
「もったいないお言葉、ありがとうございます」
恭しく執事が頭を下げる。ウィルフレッドは書類を再び封筒にしまった。
「男爵家は、どのような様子?」
ウィルフレッドの問いに、執事は淡々と答えた。
「当然大変な騒ぎです。いま必死にベルティーユ様を捜索しています。期限まではなんとか探し出したいでしょうね。ウィルフレッド様を疑ってはいるようですが、確固たる証拠はありませんからね」
「まあそうだろう」
階級的に下であり、婚約破棄したことから負い目がある男爵家が、言い出せるはずなどない。ベルティーユがいなくなったことは公になっていないため、伯爵家では普段とまったく変わらない生活を送っていた。
もし伯爵の耳に入ったのなら、ウィルフレッドは厳しく詰問されたことだろう。
ベルティーユが無事でいることを知らせないのは多少心苦しくあったが、ウィルフレッドが恐れているのは彼以外から計画が漏れることだった。
事が首尾よく済めば、すぐに男爵家にベルティーユの無事を知らせよう。
ウィルフレッドは封筒を手に取って立ち上がった。
「これからすぐに乗り込む。時間はもうないからな」
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