昔助けた王子様に求婚されて外堀を埋められています

水無瀬雨音

文字の大きさ
51 / 74

50

「10年前、雨の量が例年に比べかなり少ない年があり、作物が育たなかったので大変な飢饉が起きました。国民に分け与えるため、城に貯蔵されていた食料を民に分け与えることになったのですが、その時になって大半が盗まれていたことが分かったのです。
 それは貯蔵庫の警備を怠った父上のせいだと非難され、議会が力をつけました。父を貶めるために議会の誰かが行ったのではと私は思っていますが、そのせいで、多くの民が命をおとしたのは事実で、父はその報いを甘んじて受けました。
 オレーユに求婚されたのもそのころです」
 朝食を食べ終えた後、フランソワはぽつりぽつりと話し始めた。
 ソフィアは黙って隣で聞いていた。
 今でこそ体の出来上がっていないときの出産を防ぐため成人してからの結婚を推奨されているが、10年前はむしろ早期に結婚し子をなすことをを勧める風潮だったという。
「本来王族には幼少期には婚約者がいるのが普通ですが、私は幼いころ病弱だったので不在でした」
 オレーユが王宮でさらなる力をつけるためフランソワに求婚してきたのだが、議会の力が強いのに加え、オレーユはモンブール国王の甥でもあることから「オレーユとは性格が合わないので結婚したくない」という理由では断ることはできなかった。本来であればもちろん王族であるフランソワの意見が尊重されただろうが。
 苦肉の策でかなり強引ではあるがすでに王妃の祖国に嫁いだ、ということにし、ブローニュ伯爵の家でかくまってもらっていた。伯爵は王族とかかわりの深い人物ではないため、見つかる可能性は低いと思われたが、王都にあるのでクロードからアルデンヌ家に行くように勧められたのは渡りに船だった。
 アルデンヌ家と関わっていたのはクロードだけでそのことを知っているのも王宮のごく一部の人間だけで、アルデンヌ家は王都から遠く離れていたからだ。
 この10年フランソワと会ったことのある人物との接触はできる限り避けるように過ごしていた。
 王宮に帰ってからも王族の居室がある塔の出入りしかしていなかったのだという。先日ベルが来た時に急に休みを取ったのもベルに接触するのをさけるためだ。
「このことを知っているのはごく一部の人間だけです。使用人も10年で人が入れ替わっていますし。
 クロードではなく私のほうがソフィア様を利用したと言っても過言ではありません。申し訳ありません」
 フランソワは肩を落としたが、
「謝らないでください。フランソワ様。マリアとの生活はとても楽しかったのですから」
 利用されたとは思っていないし、そうだとしてもこの10年楽しく過ごさせてもらったのだからいいと思う。マリアの存在がクロードと会えない寂しさを紛らわせてくれたと言ってもいいくらいだ。
「マリアがフランソワ様と知って色々と納得いたしました」
 マリアはクロードを始めとした王族たちとよく言えば親密、悪く言えば馴れ馴れしすぎる態度でマリアの主人としてハラハラしたものだ。長年勤めている使用人でもマリアのように接しているメイドはもちろんいない。礼儀にうるさいメイド頭がむしろほほえましく見ているのも不思議だった。
「先日母上から呼び出されたのも『早く結婚するように』と口うるさく言われまして。何人か相手をすでに選んでいるそうですわ」
「そうですか……。フランソワ様にはお幸せになってほしいですが、少し、いえかなり寂しいですね」
「私もです。ですから10年もソフィア様にお仕えしてしまったのですけど。それと今まで通りマリアでかまいませんよ。そちらのほうが慣れていますから」
「王女様と分かったらそんなわけにはいきません。フランソワ様こそ私のことはソフィアとお呼びください」
「私も今さら呼びづらいです。
 ソフィア様。先ほどの交渉は失敗しましたが、まだ交渉の材料はあります。ソフィア様は必ず私がーー」


「あらフランソワ様。お久しぶりです。
 なんだか面白い話をされていますわねぇ。どういうことですの?」


感想 0

あなたにおすすめの小説

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした

こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】 伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。 しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。 そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。 運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた―― けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった―― ※「小説家になろう」にも投稿しています。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

行き遅れ王女、重すぎる軍団長に肉で釣られる

春月もも
恋愛
25歳、独身、第四王女システィーナ。 夜会でも放置されがちな行き遅れ王女の前に、ある夜突然現れたのは、ローストビーフを差し出す重すぎる第三軍団長だった。 形のない愛は信じない。 でも、出来立ての肉は信じてしまう。 肉に釣られ、距離を詰められ、気づけば下賜され、そして初夜へ。 これは、行き遅れ王女が重たい愛で満たされるまでの、ちょっとおかしなお話。

【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮
恋愛
出会いは、ブライトン公爵邸で行われたガーデンパーティ。それまで婚約者候補の顔合わせのパーティに、一度も顔を出さなかったエレアーナが出席したのが始まりで。 彼女のあまりの美しさに、王太子レオンハルトと宰相の一人息子ケインバッハが声をかけるも、恋愛に興味がないエレアーナの対応はとてもあっさりしていて。 優しくて清廉潔白でちょっと意地悪なところもあるレオンハルトと、真面目で正義感に溢れるロマンチストのケインバッハは、彼女の心を射止めるべく、正々堂々と頑張っていくのだが・・・。 王太子妃の座を狙う政敵が、エレアーナを狙って罠を仕掛ける。 忍びよる魔の手から、エレアーナを無事、守ることは出来るのか? 彼女の心を射止めるのは、レオンハルトか、それともケインバッハか? お話は、のんびりゆったりペースで進みます。