恋に臆病な転生王女は竜王の寵愛から逃れたい~私はあなたの番ではありませんっ~

水無瀬雨音

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 当然リュディアスは怪訝そうな顔をする。

「いえ、何でもありません。忘れてください。言い間違えただけです。あ、島が見えてきましたね! あれが竜の島ですか?」

 ジャスミンは話をそらすために、ちょうど見えてきた小さな島を指さした。エメラルドグリーンの海に浮かぶ、緑の生い茂った島が美しい。

「ふん。まあいいだろう」

リュディアスはうろんげに見つめてはきたが、とりあえず追及しないでくれるらしい。特に気にすることはないと判断したのだろう。

「そうだ。あれがオレたちの島だ」
 
 竜の島はそれほど広くはない。ヴァ―リアス王国の王都ほどだろうか。
リュディアスは時間短縮のためだろう、地上に降り立つことなく、「ここが港。基本的に他の国との交流はないのでほとんど使っていない。近い距離ならば、飛んでいく方が早いしな」とか、「ここが市場。必要なものはすべてここでそろう」とか簡単に島を案内してくれた。リュディアスの飛ぶ速度が速いのと、さほど広くはないために三十分ほどで島を一周できた。

(竜のことを知らなかったけれど、人間の世界とほぼ変わらないくらい文明的なのね)

 とジャスミンは心の中で感心した。諸外国の知識を取り入れることなく、独自の文化だけで発展しているはず。

「人間の世界と違うものも、きっとたくさんありますよね? 例えば食事はどのような感じなのでしょう?」

 ジャスミンは興味本位で聞いてみた。ジャスミンに興味を持ってもらえて嬉しかったのか、リュディアスはにこやかに口を開く。

「そうだな。たまに人間の国に行くが、当然違う。食事で言えばオレたちは基本的に野菜や果物は、あまり必要としない。ほとんど焼いた肉と水だけで十分だ」
「え!?」
(見た目はほとんど変わらないとはいえ、体の作りがそりゃあ人間と違うんでしょうけれど……。飽きそう)

 顔には出さないでいたつもりだったが、出てしまったらしい。気分を害することなく、リュディアスはにこやかに言った。

「心配せずともお前にはちゃんと人間向けの食事を作らせる。野菜や果物も手に入れようと思えば、手に入るからな」
「……別に心配はしてないんですけど。ここで暮らす予定もないですし」
(驚いただけで、リュディアスさまと結婚することはないだろうし……)

 放っておいたら本当にそうしてしまいそうなので、先にくぎを刺しておく。

「今のうちから料理長に、人間の料理の練習をさせておくか」
(聞いてないし……。料理長さん無駄なことさせられることになって可哀想。って、あれ?)
「リュディアスさまのおうちには、料理人がいるのですか?」

 ジャスミンが首を傾げると、リュディアスは大きくうなづいた。

「もちろん。執事やメイドもいるぞ。庭師なんかもな」

 竜族にも貴族という制度があるのかは不明だが、使用人がいるということは、リュディアスの家はなかなかに大きそうだ。
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