恋に臆病な転生王女は竜王の寵愛から逃れたい~私はあなたの番ではありませんっ~

水無瀬雨音

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「あれがお城ですか?」

 島の中心に、小さな城があった。小さな、とは言っても、ヴァ―リアス王国のものと比べたらという意味であり、小国のものと比べれば遜色ないほどだろう。当然、この島のほかの建物に比べて断然大きく、立派だ。

「ああ。少し城の中を見せよう。そしたら送ってやる」
「ええと、王様に断りなく、勝手に入ってもいいんですか?」
「問題ない」

ジャスミンの心配とはうらはらに、リュディアスは大楊にうなづいた。民が勝手に入ってもいいなんて、竜族の王族はおおらからしい。
城に近づくと門だけでなく、上空も鎧に身を包んだ騎士が浮かんで、見張りをしていた。

「ご苦労」

 リュディアスが声をかけると、騎士たちは一様にさっと顔色を変えた。

「おかえりなさいませ。竜お……」
 
 何か口にしようとした騎士が、怯えた顔をしてさっと口を閉じる。

「どうしたのでしょう?」

 怪訝な顔でリュディアスを見上げると、彼は素知らぬ顔で答えた。

「さあ」

(おそらく、というか絶対この人何かしたんだと思うけど……)

 城を警備する騎士が怯える人物ということは、先ほどの使用人発言もそうだが、そこそこの身分なのだろうか。

 バルコニーに降りたったリュディアスは、優しくジャスミンをそこに降ろした。大きな窓を開けると、広い回廊が続いている。壁には絵画や壺などの置物が、センスよく配置してあった。
 リュディアスに続いて回廊を歩きだしたとき、向こうから険しい顔で手に持った資料を睨みつけた男性が歩いてきた。外見で言えば、年齢はリュディアスより少し下くらいだろうか。

「あー。ジャスミン。遠回りだが、こちらから行こう」
「は、はい」

 苦手な相手で対面したくないのだろうか。彼を見た途端、リュディアスは顔色を変えた。慌ててジャスミンの手を引いて別の道から行こうとしたが、すでに遅かった。
 彼はリュディアスに気づくと、さらに顔をしかめて大股で近づいてきた。

「兄上! 姿がなくなったと思ったら、こんなところに。竜王の仕事は山積みなのですよ。仕事を残していかれたら困ります!」
「兄……上?」

 いや、この人とリュディアスが兄弟なのはいい。

「竜王― !?」

 思わず声を上げたジャスミンは、淑女らしからぬはしたないふるまいだということに気づいて、慌てて口元に手をあてた。 
 先ほどの騎士の態度から、そこそこ身分の高い人なのだろうとは思ってはいたが……。
 ジャスミン自身も王族の一員であるし、他国の国王たちと接する機会もあるが、そういう時は覚悟を決めて、外面を固めている。それにリュディアスは、今まで会ってきた国王たちとはかなり違っている。一国を治める王が、警護もなしに一人で出歩くなどありえない。
 リュディアスはきまり悪そうな顔をした。

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