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ドミニクと彼の可愛い幼なじみ5
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エミリエンヌの屋敷には、なんとか暗くなる前に着くことができた。
玄関ホールで顔なじみの使用人に、山のようなエミリエンヌの荷物を預ける。
「ドミニク様、エミリエンヌ様をお相手していただいてありがとうございます」
「いいよいいよ。腐れ縁だから」
「なによ。私がドミニクの相手してあげたんでしょー?」
使用人とドミニクの言い様に、エミリエンヌは頬を膨らませた。
「エミリエンヌ様はドミニク様に甘えすぎですよ。よろしかったら中でお茶でもどうぞ」
「あー、いや。仕事もあるし、帰るよ」
「では、またご都合のいいときにいらしてください。失礼します」
頭を下げて、使用人がその場を離れた。
「じゃ、オレ行くから。
次誘うならしばらく間開けてくれよ。お前に振り回されてたら金が続かねーわ」
手を上げて玄関を出て行こうとしたドミニクを、エミリエンヌが呼び止めた。
「……ねぇ」
「何だよ」
「ドミニクも、結婚するの?」
唐突なエミリエンヌの問いに、戸惑いながらもドミニクは答えた。
「そりゃあ、誰かとそのうちするだろうな。貴族の子息だし、義務だからな。
お前もだろ?」
ドミニクの言葉にエミリエンヌはなぜか泣きそうな顔になった。
(え、何?何かオレ、悪いこと言ったか?)
自分の言葉を振り返ってみるが、そんなにひどいことを言った覚えはないのだが。
「だ、大丈夫だ。変な奴から縁談申し込まれても断ればいいんだし。
エミリエンヌだったら、結構いい家柄の相手から申し込まれるんじゃないか?」
「うっさい!当たり前でしょ、そんなの。私こんなに可愛いんだから!」
フォローしようとして、さらに墓穴を掘ってしまったらしい。
エミリエンヌの大きな瞳には涙が浮いて、今にもこぼれてしまいそうだ。
「……あんたって、本当に私に興味がないのね」
「え?何?
うわっ」
ぼそっとエミリエンヌが呟いた言葉が聞き取れなくて聞き返すと、いきなり胸倉をつかまれて引き寄せられた。男性にしては背の低いドミニクは、エミリエンヌにヒールを履かれると、ほぼ同じ身長になる。だから、引き寄せられると唇と唇が触れそうになって、ドミニクは思わず息を飲んだ。
「これはさすがにヤバいから。
離せよ」
エミリエンヌの手をほどこうと、手を重ねる。
今にも唇が触れそうな距離で、エミリエンヌが低い声で囁く。
「……ヴィーと結婚できないんだから、私でいいじゃない」
「はぁ?結婚って……さすがに冗談きついぞ。
……んっ」
ドミニクは次の瞬間目を見開いた。
エミリエンヌの唇が、ドミニクのそれに重なったからだ。
口を開けばあんなに可愛くないのに、鼻をくすぐる甘い香りも、柔らかい唇の感触も確かに女性のものだった。
エミリエンヌの唇はすぐに離れた。ドミニクの背中をぐいぐい押して、扉の外に押し出す。
「もういい。帰って!さよなら!」
「お、おまえ今の」
「冗談だから」
ばたん、と扉が閉まり、鍵のかかる音がする。
最後にドアの閉まる瞬間、ドアの隙間からのぞいたエミリエンヌは、何かをこらえるように唇をかみしめていて。
(冗談?
だったら何でお前、そんなに泣きそうな顔してんだよ)
「おい!おい、エミリエンヌ!開けろ!」
ノッカーを鳴らしたが、扉は開くことはなかった。
玄関ホールで顔なじみの使用人に、山のようなエミリエンヌの荷物を預ける。
「ドミニク様、エミリエンヌ様をお相手していただいてありがとうございます」
「いいよいいよ。腐れ縁だから」
「なによ。私がドミニクの相手してあげたんでしょー?」
使用人とドミニクの言い様に、エミリエンヌは頬を膨らませた。
「エミリエンヌ様はドミニク様に甘えすぎですよ。よろしかったら中でお茶でもどうぞ」
「あー、いや。仕事もあるし、帰るよ」
「では、またご都合のいいときにいらしてください。失礼します」
頭を下げて、使用人がその場を離れた。
「じゃ、オレ行くから。
次誘うならしばらく間開けてくれよ。お前に振り回されてたら金が続かねーわ」
手を上げて玄関を出て行こうとしたドミニクを、エミリエンヌが呼び止めた。
「……ねぇ」
「何だよ」
「ドミニクも、結婚するの?」
唐突なエミリエンヌの問いに、戸惑いながらもドミニクは答えた。
「そりゃあ、誰かとそのうちするだろうな。貴族の子息だし、義務だからな。
お前もだろ?」
ドミニクの言葉にエミリエンヌはなぜか泣きそうな顔になった。
(え、何?何かオレ、悪いこと言ったか?)
自分の言葉を振り返ってみるが、そんなにひどいことを言った覚えはないのだが。
「だ、大丈夫だ。変な奴から縁談申し込まれても断ればいいんだし。
エミリエンヌだったら、結構いい家柄の相手から申し込まれるんじゃないか?」
「うっさい!当たり前でしょ、そんなの。私こんなに可愛いんだから!」
フォローしようとして、さらに墓穴を掘ってしまったらしい。
エミリエンヌの大きな瞳には涙が浮いて、今にもこぼれてしまいそうだ。
「……あんたって、本当に私に興味がないのね」
「え?何?
うわっ」
ぼそっとエミリエンヌが呟いた言葉が聞き取れなくて聞き返すと、いきなり胸倉をつかまれて引き寄せられた。男性にしては背の低いドミニクは、エミリエンヌにヒールを履かれると、ほぼ同じ身長になる。だから、引き寄せられると唇と唇が触れそうになって、ドミニクは思わず息を飲んだ。
「これはさすがにヤバいから。
離せよ」
エミリエンヌの手をほどこうと、手を重ねる。
今にも唇が触れそうな距離で、エミリエンヌが低い声で囁く。
「……ヴィーと結婚できないんだから、私でいいじゃない」
「はぁ?結婚って……さすがに冗談きついぞ。
……んっ」
ドミニクは次の瞬間目を見開いた。
エミリエンヌの唇が、ドミニクのそれに重なったからだ。
口を開けばあんなに可愛くないのに、鼻をくすぐる甘い香りも、柔らかい唇の感触も確かに女性のものだった。
エミリエンヌの唇はすぐに離れた。ドミニクの背中をぐいぐい押して、扉の外に押し出す。
「もういい。帰って!さよなら!」
「お、おまえ今の」
「冗談だから」
ばたん、と扉が閉まり、鍵のかかる音がする。
最後にドアの閉まる瞬間、ドアの隙間からのぞいたエミリエンヌは、何かをこらえるように唇をかみしめていて。
(冗談?
だったら何でお前、そんなに泣きそうな顔してんだよ)
「おい!おい、エミリエンヌ!開けろ!」
ノッカーを鳴らしたが、扉は開くことはなかった。
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