寡黙な騎士団長は花嫁を溺愛する 番外編

水無瀬雨音

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台風一過 2

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 ひとしきりヴィオレットに愚痴ると、屋敷に戻ったエミリエンヌはノアの用意した客室で、眠ってしまった。家出をしたので疲れたらしい。
 そのすきにヴィオレットはドミニクに映話することにした。そろそろエミリエンヌがいないことが分かっただろうから、心配しているだろう。
 仕事中かもしれないと思ったが、ちょうど休憩中だったらしくつながった。

「てことで、エミリエンヌはうちにいるから安心してね。大体事情は分かったけど、落ち着いたら迎えに来てあげて」

 ドミニクは、はぁとため息をついた。

「やっぱりヴィオレットのとこ行くと思ってたわ。悪いな、迷惑かけて」
「いいよ。エミリエンヌと久しぶりに会って楽しかったし」

 驚いたものの、それは本当だ。アーノルドと結婚してからエミリエンヌに以前ほど頻繁に会えなくなって寂しい。
 ドミニクが身を乗り出す。

「で、話聞いたんだよな!? ドレス何度も着替えたいだの世界一周したいだの、どう考えてもあいつが悪いよな!? あいつどこの大富豪と結婚したと思ってんだよ」
「うーんと……。そうだね……一般的には……」

 どう考えてもドミニクのほうが正しいと思うが、はっきりと肩を持つのもはばかられて、ヴィオレットは答えに窮する。

「なんだよ、煮え切らねーなー」
「あはは。ごめんね。でも、ドミニクの味方すると、エミリエンヌが余計怒りそうな気がするから」
「はぁ、それもそうだな。仕事立て込んでて、しばらく迎えに行けそうにないわ。悪いな」
「分かった。来られるようになったら連絡して」
「おー。じゃあ、よろしく。ヴィオレット」

 
「てことで、急なんだけど、エミリエンヌをしばらく泊めてあげてもいいかなぁ?」

 玄関ホールでアーノルドを出迎えたヴィオレットは、手短に説明した。後ろからエミリエンヌがにこにこと顔を出す。
 ヴィオレットの予想通り、アーノルドはすぐに快諾してくれた。

「……オレは別にかまわない。日中オレが相手してあげられないから、ちょうどいいかもね」
「さすがアーノルドさま。できるだけご迷惑おかけしないようにしますのでー。お会いするの結婚式以来でしたよね? あの時はご紹介いただいてありがとうございますー」

 ぐいぐい来るエミリエンヌが、アーノルドは少し苦手なようだ。若干後ずさりながら、

「……どういたしまして。残念ながら、あいつらとは縁がなかったようだね」
「わたしは残念でしたが、でも他の子と上手くいっているみたいなので」
「……そ、そうか。じゃあオレ部屋で着替えてくるから」
「はーい。後ほど食堂でご一緒しましょうねー」

 手を振って見送られながら、ヴィオレットとアーノルドは私室に向かった。
 アーノルドが少し疲れた顔をしている。
 見かねたヴィオレットはアーノルドの手を握る。

「アル、アル大丈夫?」
「……う、うん。ちょっと勢いが強すぎて疲れた。あの子、元気だね」
「性格は違うんだけど、一番仲がいいんだ」
「……久しぶりに友達に会えて嬉しいだろう。よかったね。でも」

 アーノルドがヴィオレットを強く抱きしめてきた。
 腰をかがめたアーノルドにくいっとあごを持ち上げられると、お互いの顔が近くなって、ヴィオレットは頬を赤らめた。

「……友達が来ていても、二人の時間だけは君を独占させてね?」

 アーノルドはそうささやいて、ヴィオレットが返事をする前に唇をふさいだ。

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