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炎に驚いた馬が嘶き、よろめくセルジオ爺さんに向かって前足を跳ね上げる。
「おじいちゃん、危ない!」
馬の間を縫ってミーナが駆け寄り、二人は支え合って広場の隅の家に転がり込んだ。
黒衣騎兵二隊六騎がキージェを包囲し、円を描いて馬を巡らせながら速度を上げ、四方八方から剣を突き出す。
刃の旋風が無精ひげをかすめるが、分散された攻撃には嵐撃絶刃も繰り出せず、包囲されたキージェは馬から飛び降り、うずくまってしのいだ。
ウオオオオオオン!
ギルド小屋の屋根に飛び上がったミュリアが純白の背中を反らし、天空に咆哮を放つ。
馬の足が一斉に乱れる。
真っ赤な炎の尾を引きながら火炎乱舞でクローレが転がり込む。
「キージェ!」
「助かったぜ!」
馬の尻をたたいて輪の外へ逃がしたキージェが、その陰からストームブレイドを一閃させて中央突破を試みる。
「やつを逃がすな!」
オスハルトの怒号が響き、三騎が路地へ逃げたキージェを追って突入する。
指揮官自ら手綱を握り直し、追跡しようとしたそのときだった。
クレアの矢がオスハルトの頬をかすめた。
「チッ、邪魔な女だ」
出遅れたオスハルトはクローレに標的を変えた。
「殺すには惜しい女だが、おまえから成敗してやる」
クローレはフレイムクロウを構えて馬上の仇をにらみつけた。
「こっちだって逃げないよ! 村のみんなの恨みを晴らしてやるからね」
三騎一隊がクローレの背後から奇襲を試みる。
「甘いよ」
フレイムクロウを水平に持ち直したクローレは踵を軸に身を翻し、そのまま独楽となって炎弧旋回の速度を上げた。
ほとばしる炎に足踏みをする馬群をすり抜け、鞍上の敵に切りつけたかと思うと、身をかがめて前転しながら背後に回り、再び炎の刃を浴びせる。
目を奪われるような華麗な舞に黒衣騎兵も馬も対応が追いつかない。
「ええい、慌てるな」と、オスハルトは剣を空に突き上げた。「踏み潰してしまえ」
だが、そのときすでにクローレはいったん広場から建物の陰に退却し、息を整え次の攻撃機会をうかがっていた。
路地を逃げるキージェは迫り来る黒衣騎兵に振り返ることなく走り続けていた。
前方に出口が見えた。
だが、そこを荷車が横切り、塞がれてしまう。
しかも満載の藁で壁ができてしまった。
両側は石灰岩の壁で逃げ場はない。
「よし、行き止まりだ」と、背後から馬蹄が迫る。「仕留めるぞ!」
と、そのとき、藁の向こうから声が聞こえた。
「おっさん、くぐれ!」
すぐさまキージェは荷車の下に体を潜り込ませ、這いながら脱出した。
そこには松明を持った村人が待ち構えていた。
「おじいちゃん、危ない!」
馬の間を縫ってミーナが駆け寄り、二人は支え合って広場の隅の家に転がり込んだ。
黒衣騎兵二隊六騎がキージェを包囲し、円を描いて馬を巡らせながら速度を上げ、四方八方から剣を突き出す。
刃の旋風が無精ひげをかすめるが、分散された攻撃には嵐撃絶刃も繰り出せず、包囲されたキージェは馬から飛び降り、うずくまってしのいだ。
ウオオオオオオン!
ギルド小屋の屋根に飛び上がったミュリアが純白の背中を反らし、天空に咆哮を放つ。
馬の足が一斉に乱れる。
真っ赤な炎の尾を引きながら火炎乱舞でクローレが転がり込む。
「キージェ!」
「助かったぜ!」
馬の尻をたたいて輪の外へ逃がしたキージェが、その陰からストームブレイドを一閃させて中央突破を試みる。
「やつを逃がすな!」
オスハルトの怒号が響き、三騎が路地へ逃げたキージェを追って突入する。
指揮官自ら手綱を握り直し、追跡しようとしたそのときだった。
クレアの矢がオスハルトの頬をかすめた。
「チッ、邪魔な女だ」
出遅れたオスハルトはクローレに標的を変えた。
「殺すには惜しい女だが、おまえから成敗してやる」
クローレはフレイムクロウを構えて馬上の仇をにらみつけた。
「こっちだって逃げないよ! 村のみんなの恨みを晴らしてやるからね」
三騎一隊がクローレの背後から奇襲を試みる。
「甘いよ」
フレイムクロウを水平に持ち直したクローレは踵を軸に身を翻し、そのまま独楽となって炎弧旋回の速度を上げた。
ほとばしる炎に足踏みをする馬群をすり抜け、鞍上の敵に切りつけたかと思うと、身をかがめて前転しながら背後に回り、再び炎の刃を浴びせる。
目を奪われるような華麗な舞に黒衣騎兵も馬も対応が追いつかない。
「ええい、慌てるな」と、オスハルトは剣を空に突き上げた。「踏み潰してしまえ」
だが、そのときすでにクローレはいったん広場から建物の陰に退却し、息を整え次の攻撃機会をうかがっていた。
路地を逃げるキージェは迫り来る黒衣騎兵に振り返ることなく走り続けていた。
前方に出口が見えた。
だが、そこを荷車が横切り、塞がれてしまう。
しかも満載の藁で壁ができてしまった。
両側は石灰岩の壁で逃げ場はない。
「よし、行き止まりだ」と、背後から馬蹄が迫る。「仕留めるぞ!」
と、そのとき、藁の向こうから声が聞こえた。
「おっさん、くぐれ!」
すぐさまキージェは荷車の下に体を潜り込ませ、這いながら脱出した。
そこには松明を持った村人が待ち構えていた。
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