女剣士(ヒロイン)拾っただけなのに ~なんで俺がラブコメの主人公にならなきゃならねえんだよ~

犬上義彦

文字の大きさ
81 / 84

(10-15)

しおりを挟む
 勢いよくキージェに抱きつくと、クローレは涙で濡れた頬を彼の胸に押し当てた。

 くたびれた男の背中に回された細い腕にぎゅっと力が込められる。

 そのぬくもりに、キージェの凍てついた心が溶けていく。

「お、おい」

 キージェは動揺しながらも、女の髪をそっと撫でた。

 愛する女を抱きしめた男もまた、死んだ盟友と同様、安らぎを感じていた。

 ――ずっとこうしていられたらいいのにな。

 自分らしくない考えに顔が熱くなる。

「もう、いいだろう」

 クローレは顔を上げ、涙を拭いながらも悪戯っぽく笑った。

「やだ、ずっとこうしてる」

 いつもの明るさを取り戻した声に笑みを浮かべつつも、キージェはそっと体を離し、見つめ合った。

 その瞬間、村人たちの口笛や拍手喝采が響き渡った。

「おう、おめでとう」

「ヒューッ、あんたら、見せつけてくれるね」

「よかったじぇねえか」

「色男!」

 いきなり沸き起こったお祭り騒ぎに、キージェは慌てて一歩後ずさり、顔を真っ赤にして周囲を見回した。

 家の窓という窓が開いて、皆が手を振って祝福している。

 顔から汗が噴き出し、キージェがボリボリと頭をかく。

「ちょ、おま……いきなり抱きつくから見世物になっちまったじゃねえかよ」

 その声は照れ隠しに大きかったが、どこか安堵の色が浮かんでいた。

「まあ、いいじゃん」と、クローレはペロッと舌を出し、あっけらかんと笑った。「もっと見せつけちゃう?」

「勘弁してくれ」

 苦笑しつつも、その目には深い愛情が宿っていた。

 そんな浮かれた騒ぎの中、今まで隠れていた村人たちも家を出て恐る恐る広場に集まってきた。

 ミーナに支えられたセルジオ爺さんが死体の山を見てため息をつく。

「しかしまあ、えらいことになったのう。後始末が大変じゃ」

 弓の胸当てを外してクレアもやってきた。

「この村に黒衣騎兵が来たってことが知られたら、どんな報復を受けるかしらね」

 うって変わって、広場が静まりかえる。

 クレアが大きく二回手をたたく。

「死体は全部、墓地に埋めるわよ。ほら、みんな手伝って」

 その声には、元冒険者としての貫禄と、村を守る決意が込められていた。

「よっしゃ、やるかぁ!」

 鍬を担いだ男連中が早速動き出す。

 セルジオは他の連中に黒衣騎兵が残した馬を集めさせた。

「馬は装具を外して放牧地に連れていくんじゃ」

「いい、みんな、何もなかったんだからね」と、クレアが再び声を張る。「私たちは全員、何も見なかった。そういうことだよ」

 村人たちは手際よく藁の燃えかすを拾い、血だまりを水で洗い流し、戦いの痕跡を消していった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...