異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

文字の大きさ
4 / 183
現代編 序章

第3話 突撃

しおりを挟む
 二人の眼下には敵と味方の激しい戦闘が繰り広げられていた。
 彼らは今からあの美濃加茂市街地へと向かうことを決めていた。
 それは、誰の目から見ても死にに行くだけの、愚かな行為としか思えない。

 「じゃあ、とりあえず作戦だが」

 「え? 作戦とかあるんだ!?」

 思ってもみなかった言葉に、為次は少し驚いた。

 「当たり前だろ! 俺が考え無しに、敵にバレませんよーにとか祈って突っ込むだけと思ったのか?」

 「あ、違うのね…… てっきり鉄砲玉みたいに突撃するだけかと……」

 「俺はお前と違って、元から軍人だ。いや、自衛隊か…… とにかくだ、とりあえず俺と端末をつないでマップを見ろ」

 「あー、はいはい」

 適当な返事を返す為次は、タブレットを取り出し互いに接続をする。
 すると正秀の見ている地図と同じものが画面に表示された。
 地図には周辺と敵味方の、おおよその位置や戦力が落書きの様に描いてある。

 「いいか? まず、このまま工業団地にある敵の拠点まで移動する」

 そう言いながら正秀が画面を操作すると、自分達であろうコマが移動した。
 それに連動しながら為次のタブレットも同じように動くので、ちゃんと画面を見ているのか確認すると説明を続ける。

 「もっとも、この時点で敵にバレちまったらヤバイがな。このレオ2だ、まず大丈夫だろう。正直言えば、これは神頼みだな」

 「え? やっぱり、お祈りしながら突っ込むだけじゃない……」

 「まあ、そう言うなよ。バレないように移動するのは、お前さんの仕事だからな期待してるぜ」

 為次は、あからさまに嫌そうな顔をして聞いている。

 「とにかく敵の拠点まで移動できれば、まずレーザー通信機を破壊する」

 ―― レーザー通信機

 EMP兵器の開発により、殆どの電波が使用できなくなってしまった。
 いや、電波そのものは使えるが、近距離に限られてしまう。
 つまり、遠距離通信やレーダーのたぐいが使用ができないのだ。
 その為レーダー式追尾のミサイルなども使えない。
 更にはドローンの高性能化もあり、既存の航空戦力がまともに使えない物になってしまった。
 これにより、米軍ご自慢の空母打撃郡も苦戦をいられ、アジア撤退の一因になっている。

 このEMP兵器を開発した科学者達は、原理をいまいち把握していなかった。
 何やら空間を振動させて次元を狂わせている、などと言っているのだ。

 戦闘において通信ができないのは当然、困った問題であった。
 そこでEMP兵器の影響を受けないレーザーを用いて、通信を行うことにした。
 レーザーでは直線方向にしか送受信できないし、遮蔽物の影響を受けやすい。
 また、送受信のどちら側でも動けば、通信ロックをし直さなければならない。
 そこで拠点は高台に置き、戦闘部隊は簡易通信機を戦闘区域のやや後方に設置する。
 部隊が移動すれば、それに伴い簡易通信機も設置し直し、拠点側が再通信ロックをする。
 今の通信手段は、そのような面倒なシステムとなっていた。

 正秀は説明を続ける。

 「主砲の発射レートはおおむね、速くても20秒程度はかかる」

 「あ、はい」

 「だから、初撃で通信機の破壊は必須だが、これは俺に任せといてくれ。お前がどんな機動をしようが必ず当てて見せるさ」

 「ん、それは心配してないよ」

 「後は全力で拠点を突っ切る」

 「その際に撃てるのは多分、2発程度だ。拠点を抜ければ敵前線ギリギリまで近づく。通信機を破壊できていれば、かなり近づけるはずだからな。敵が気が付けば、反撃開始。そして混乱に乗じて前線突破する。その際に味方が異変に気が付いてくれれば儲けものだ。お前の言うように味方にも撃たれるかもしれないがな。しっかり回避してくれよ、為次」

 「今更、文句を言っても遅いか……」

 「おう」

 「だいたい分かったかも、じゃあ行きますかね」

 「よし! 突撃!」

 合図と共に為次はレオパルト2のアクセルを踏み込んだ。

 ゴルフ場の高台から駆け降りると、速度を緩め巡行する。
 敵に怪しまれないようにする為だ。
 もっとも、敵でも味方でもない戦車が戦闘区域を1両だけ走っている時点で怪しさ満点である。

 案の定であった、工業団地までの半ば辺りで敵の高機動車が1台こちらに向かって来た。
 それを確認すると、正秀は車長ハッチから頭を覗かせる。
 すると耳の辺りを指でトントンと叩く仕草を見せてから手を振った。
 通信ができない旨を相手に知らせているのだ。
 その内に敵の高機動車がレオパルト2の横まで来て、停まれと合図をしているのが分かった。
 戦車を停めると、そのすぐ左横に高機動車も停まった。

 「やるよ」

 と、一言だけ為次は言った。

 「おう」

 突如、車体を超信地旋回をさせ、前方を高機動車に向ける。
 そのまま、アクセルをベタ踏みにした。

 ブルルルルォォォン!

 レオパルト2は、その巨体を物ともせず加速するのだ。
 高機動車にぶつかり、グシャグシャと踏みつぶす。
 車両と一緒に人間を……
 一瞬、悲鳴が聞こえたような気がした。
 だが、その声はエンジン音に掻き消される。
 サイドミラーを見ると高機動車から降りようとしていた1人であろう。
 下半身の無くなった人間らしきものが、地面でのた打ち回っているのが見えた。

 そのまま何事も無かったように、レオパルト2は走る。
 進路を工業団地に向け。

 その後も敵の車両や兵士が見える時もあった。
 しかし、何となく避けるように走り工業団地の手前まで着くことができた。
 そこからは全速力で坂を駆け上がった。

 敵拠点に着くと辺りに兵士数人確認でき、車両もそれなり見受けられた。
 通信施設の場所はすでに分かっていた。
 トラックから延びた高い塔に受信機とレーザー発振器が付いているのだから。
 それと、もう1つ予備通信施設もある。
 こちらも同様に目立つのですぐ分かった。
 二ヶ所攻撃しなくてはならない。

 レオパルト2の存在に気が付いた兵士が近寄って来る。
 何か叫んでいるが聞こえない。
 もっとも聞こえたところで言葉が分からないだろうが。

 だから、無視して走った……

 今度は前方に3人の兵士が居る。
 その内の1人が大きく手を振りながら叫んでいた。
 言っていることは聞こえないし、分からない。
 多分、停まれと叫んでいるのであろうことは推測できた。
 レオパルト2の速度を、その兵士の手前で緩めると兵士は近づいて来た。
 と、直ぐに急加速をする。

 ゴチャ バキャ

 鈍い音がした時、兵士2人は肉塊となった。
 肉塊となるのを避けれた1人の兵士が発狂している様子だ。
 アサルトライフルを無造作に発砲している。
 何ミリの弾丸かは分からなかったが、戦車にとっては豆でっぽうである。
 外でカンカンと弾の当たる音が少し聞こえたが、かまわず戦車を加速させる。
 すると、前方に目的の通信施設が見えた。

 「あれだな、よし!」

 正秀はそう言うと、直ぐに狙いを付け射撃スティックのトリガーを引く。

 バン! ドコーン!

 激しい発射音と共にあらかじめ装填してあった榴弾が発射される。
 次の瞬間、通信施設は轟音を響かせながら炎に包まれた。
 周りに居た兵士が人形のように飛び散る。
 そんなことはお構いなしに、急いで次の砲弾の装填に取り掛かる。
 と、装填しようとしたその時だった。
 ランチャーを持った兵士が、こちらに狙いを付けているのが右手に見えた。
 敵がロケットを発射したと同時に為次はフルブレーキを掛ける。
 いわゆる殺人ブレーキである。

 「うわぁぁ! 痛いってぇ」

 ガラン ゴロン

 正秀が騒いでいる声と砲弾が床を転がる音が聞こえる。

 為次は心配などしていられなかった。
 ペリスコープの数センチ先をロケット弾が通過したのだから。
 あと少しブレーキが遅れていたら直撃していた。

 「おぉぉぉ、やっべ~。マサ! 何時までも転がってないで、はょお次。つぎ」

 正秀は起き上がりながら再度装填しながら文句を言う。

 「少しはこっちの心配もしろ」

 「ペレットばら撒かないでよ、掃除めんどいからぁ」

 「急ブレーキするなら車内アナウンスするもんだろ!」

 「発車します、ご注意ください。やむを得ず急停車する場合がございます。停車するまでは、お席をお立ちにならないよう、お願い申し上げます」

 為次は何となく前の仕事を思い出して言ってみた。
 しかし、既にレオパルト2は加速し次の予備通信施設に向かっている。

 「発車の前に言えってば……」

 敵に狙われないように建物の陰に沿って走るレオパルト2。
 建物を抜けると正秀の覗くパノラマサイトから右手に予備通信施設が見える。

 「二つ目だな」
 
 その瞬間、前方の建物から敵の戦車が向かってくるのが見えた。
 ロシア製T-72である。
 為次は右へと戦車を旋回させる。
 正秀は敵戦車には構わず予備通信施設を撃った。
 榴弾をT-72に撃ち込んでも撃破できないと判断したからだ。
 多目的対戦車榴弾を装填しておけば良かった。
 だが、弾数が少ないのでケチっていた。

 予備通信施設も簡単に破壊できた。
 しかし、T-72の砲塔はこちらへ照準を付けている。
 そして攻撃してきた……
 同時に為次は左へとハンドルを切り車体をドリフトさせる。
 敵の砲弾はレオパルト2の車体左側面に被弾した。
 だが、T-72を正面に捉えるように急旋回した為に直撃は免れた。
 砲弾の進入角が極端に浅くなりすぎたのだ。
 信管は作動したらしく、虚しく空中にメタルジェットが飛び散っていた。

 「マサ!」

 車内に響く激しい衝撃音の中で為次は叫んだ。

 「あと10秒もたせろ!」

 装填手の居ないレオパルト2は圧倒的に不利であった。
 敵の次弾が再度こちらを狙うのを見て、咄嗟に近くにあった小屋の陰に車体を隠すように走らせる。
 正秀は既に車長席に居た。

 「よし! いいぞ!」

 そのまま小屋の陰を走り抜けると同時に、T-72に狙いを付け砲撃する。
 翼安定徹甲弾は敵戦車の正面に着弾したように見えた。
 敵戦車は何事もない様子だ。

 「くそ! 抜けなかったか」

 正秀が悔しがった次の瞬間。
 T-72の砲塔と車体の境目から激しく煙と炎が噴き出る。

 そして…… 

 ドカーーーン!!

 轟音が響くと共にT-72の砲塔が大空へ舞い上がった。
 初めて見る分けでもないが、数十トンもある砲塔が撃ちあがる光景に正秀は驚かされる。

 「さ、流石ビックリ箱だぜ」

 「マジ、ビックリですな」

 敵戦車は撃破したが後ろからは、まだ敵兵が追いかけて来ている。

 「くそっ、しつこい奴らだぜ」

 そう言いながら正秀はスモークディスチャージャーを操作した。
 レオパルト2からは複数の筒状のモノが打ち出される。
 すると、その筒が空中で爆発し辺り一面に煙が広がった。

 同時に為次は叫びながらアクセルを踏み込む。

 「行けっぇぇぇ!」

 煙の中に突っ込み全速力でレオパルト2は走る。

 そして……

 突入とは反対側の工業団地の坂を駆け降りた。

 通信施設の破壊は成功した。
 敵前線部隊への二人の存在は、かなり遅らさせれたはずである。

 そして、激戦区域へと向かって行くのであった……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

処理中です...