異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 1章

第4話 報酬

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 初めてモンスターと対峙した正秀と為次は少し楽しそうであった。
 現実離れしたこの世界が、まるでゲームのようだと感じていから……

 正秀はレオパルト2から降車すると、マンティコアに興味深そうに近づいてみる。
 為次は降車するのが面倒だと、戦車のまま近寄った。

 「何だこの生物は……」

 正秀は頭部を失った獣を不気味そうに見ながら言った。
 
 「魔獣だってさ。この調子じゃドラゴンとか居るんじゃないの」

 ファンタジーのモンスターといえば、やはりドラゴンだと思う為次。
 ドラゴンという言葉を聞いて、二人の元へと近づいて来たマヨーラが耳元を押さえながら言う。

 「ドラゴンなんて冗談じゃないわ。まだ耳がキンキンするわ、まったく」

 戦車砲の砲撃音を近距離で食らったせいか、何処となくフラフラしている。

 「離れとけって言ったろ」

 正秀は少し心配そうに言った。

 「もっと早く言いなさいよ! しかも、折角の魔獣の頭吹っ飛ばしちゃってさ」

 吹き飛んだ魔獣の頭部を思い出す為次。
 確か頭だけは人間であった。

 「あの、おっさん顔の頭が欲しかったの?」

 「おっさん顔はともかく、高く売れる素材が取れるのよ。頭からは」

 「へぇ、あの頭が売れるのか。凄いなぁ」

 そんな話をしている所へスレイブもやって来る。
 
 「なんだ、もう報酬の話か?」

 「スレイブ、大丈夫なのか?」

 結構な傷を負ったはずだが、と思う正秀は少し不思議そうに訊いた。

 「ああ、ちと、しくじっちまったがな」

 「先程ヒールをかけときましたので、もう大丈夫ですわよ」

 そう言うターナは、マンティコアを討伐すると直ぐにスレイブの元へと走って行った。
 どうやら治療の為だったらしい。

 「手間かけさせちまったな」

 「いつものことですわ、でも、あまり無理はなさらないで下さい」

 ターナはスレイブを見つめ、ほほ笑みながら言った。

 「分かってるってばよ」

 スレイブは気まずそうに目を逸らすのであった。
 そんな微妙な雰囲気の2人に正秀はお構いなしに話しかける。

 「ああ、仲良くしてるとこで悪いんだが」

 「だ、だだ、だ、誰と誰が仲良くだよ!」

 焦るスレイブを横目に、ターナは優しい微笑みを投げるだけである。

 「ふふっ」

 「それはともかくだ。ヒールってのはケガが治せるのか?」

 「もちろんですわ、その為の魔法ですから」

 「じゃあ、マヨーラにもやっといてくれ」

 スレイブは正秀の言葉に意外そうな感じでマヨーラを見る。

 「なんだ? お前もどっかやられたのか?」

 マヨーラは戦闘では何時も遠距離からの魔法攻撃専門なのだ。
 その為に、あまりケガをしたことが無いのである。

 「別にケガなんてしてないわよっ、ちょっと耳鳴りが酷いだけなの。私がそんなヘマする分けないで…… げふっ」

 突然、マヨーラは血を吐いてしまう。

 「な、何よこれ……」

 口元から垂れる血を手で押さえるマヨーラは驚いていた。
 それをターナは呑気そうに見ている。

 「あら、あら、まぁ」

 「内臓か肺がやられたんだろ、結構ヤバイ位置に居たからな、お前」

 正秀はマヨーラの体を支えてやりながら説明した。
 それを為次も呑気そうに見ている。

 「脳震盪も起こしてるみたいだしねぇ。たいへんだなー」

 「何であんた達…… こんなふざけた陸上艇を持って……」

 そう言った途端にマヨーラは、その場で膝から崩れ落ちると苦しそうにし始める。

 「はぁ…… はぁ……」

 「治せそうか?」

 と、正秀はターナに訊いてみた。

 「大丈夫ですわ、直ぐにヒールをかけますわよ」

 うずくまっているマヨーラに手を添えると呪文を唱え始める。

 「ヒール…… ですわ」

 すると手の周りが光り始め、その光がマヨーラ包み込む。

 「もう、大丈夫ですわよ」

 魔法の効果が現れるとマヨーラはだいぶ落ち着いた様子になった。

 「まったく…… 酷い目にあったわ」

  マヨーラの肩を抱く正秀はまだ心配そうにしている。

 「本当に、もう大丈夫なのか?」

 「この程度のケガならほっといても治るわよ」

 「そういや、お前ら不死身だって言ってたな」

 横からターナが説明してくれる。

 「不死身ではありませんわ、ケガが酷ければ死ぬこともありましてよ」

 「ま、エルフ並みの生命に、ドワーフ並みの頑丈さってとこだな」

 と、スレイブが付け加えた。

 「うん、微妙に分かりやすい例えかも」

 「へへっ、そうだろう」

 スレイブは為次に得意そうな顔を見せてから、マンティコアの死骸に近づく。

 「しかし、こいつを殺れるとはな、ついてたぜ」

 マンティコアを見るスレイブはとても嬉しそうだ。
 そして、正秀と為次を振り向いて言う。

 「これも、お前らのおかげだな、報酬は半々ってとこか?」

 「そうですわね」

 同意するターナだが、マヨーラは不満そうだ。

 「え~、半分もあげちゃうのー」

 「倒したのはこの方々ですわよ、仕方ありませんわ。それに、お金も持っておられない様子ですわ」

 「ちぇ…… 仕方ないわねぇ」

 「あれ? 頭は吹っ飛んじゃったけどお金になるの?」

 またもや、為次の頭におっさん顔が浮かんだ。

 「クエスト報酬があるからな。こいつは、近頃この辺りで人を襲って、みんな困ってたからな」

 スレイブはマンティコアを足蹴にしながら答えた。

 「そんで、冒険者ギルドにクエストか数件入ってたのさ。それにだ」

 そう言いながら、スレイブはマンティコアの心臓あたりに大剣を突き刺すと、グリグリえぐり始める。
 すると、血や肉片と交じりながら宝石のような綺麗な石が出てきた。

 結構な大きさの石なのだが、スレイブはまだ血の滴る石を片手で持ち上げる。

 「こいつはエレメンタルストーンだ。魔獣の原動力みたいなもんだな」

 不気味な輝きを放つ石を見ながら正秀は繰り返すように言う。

 「エレメンタルストーン……」

 「んで、これが高値で売れるって寸法なのさ」

 「宝石か何かなのか?」

 ターナが説明してくれる。

 「以前は、そんな感じの価値しかありませんでしたけれど、今では魔道機関の主要な材料として使われていますわ」

 「この石が魔道機関とやらの材料なんだ」

 相変わらず為次は魔導機関が気になるらしい。

 「ええ、そのおかげで今では昔とは比べ物にならない程の価値がありましてよ」

 「ふっふー、これほどのモノなら500万ゴールドになるわね。それと100万のクエストが1つと50万が2つ、700万ゴールド!」

 マヨーラはとても嬉しそうだ。

 「700万ゴールドの半分が350万で、3人で分けると…… えっと…… いくらだっけ?」

 計算は苦手らしく、ターナが教えてくれる。

 「おおむね116万ゴールドですわ」

 「116万ゴールドかぁ……」

 マヨーラは少し残念そうになった……

 それから、スレイブとマヨーラはしばらくマンティコアを嬉しそうにナイフで突き刺しながらゴソゴソやっていた。
 どうやら、まだ売れそうな部位を剥ぎ取っているらしい。

 そんな二人を横目に、ターナはすでに戦車に搭乗している為次と正秀の所へやって来ると、砲塔の上に上がって来た。

 「ところで少々、お訊きしたいことがありますの、よろしくて?」

 「別に構わないぜ」

 「率直にお訊きしますわ、あなた達は何者ですの?」

 「さっきも言ったろ自衛隊だぜ」

 「ジエイタイとは何かしら?」

 「国を守るお仕事をする集団だよ。戦争前は災害救助とかやってたけど、今では人間を殺す軍隊なの」

 「嫌な言い方するなよ…… 為次」

 「そうですか…… 軍属の方なのですか。しかし現在、戦争をしている国はありませんわ」

 「俺たちが元々居た場所では戦争してんだぜ」

 「そうそう、このレオパルト2みたいな兵器…… 武器を使って殺し合い」

 「だから為次。もう少し言い方ってのをだな」

 「この陸上艇が他にもありますの!?」

 ターナはマンティコアを一撃で葬ったレオパルト2が複数あるのに驚いた様子であった。
 乗り物のことになると、為次は得意げに話し始める。

 「俺たちが居た国だけでも数百両はあるし、全世界では数えきれないね。他にも違う型の戦闘車両も…… あ、陸上艇も沢山あるわけで」

 そこへ正秀も得意げに付け加える。

 「それから空を音速で飛ぶ、こっちでは飛行艇って言うやつとか、あとは数百メートルはある船とかだな。そんなのも沢山あるぜ」

 「分かりましてよ。つまりあなた方は違う世界から来たのですね」

 「あまり考えたくは無かったが、どうやらそうみたいだな」

 「自分達の意思でこの世界に来たのではなくて?」

 「敵の新型爆弾っぽいのにヤられてね、気が付けば異世界的な。だからここは死後の世界なのかな? って」

 と、為次は適当に説明をした。

 「ご安心下さい、とりあえず死後の世界ではありませんわ」

 「そうすか」

 返事も適当だった。

 「何となくは、分かりましたわ。つまりあなた方は、この世界のことは何も知らないのですね」

 「ちんぷんかんぷん、ちんちんぷんぷん」

 このままフザケた性格の為次と話して、ターナの機嫌が悪くならないかと心配をする正秀は口を挟む。

 「ま、そうだな。正直、ターナ達に会わなければどうなっていたか…… ありがとうな」

 「ここで会えたのも、何かの縁かも知れませんわね。心配には及びませんわよ、街までご案内して仕事や住まい探しも手伝わせて頂きますわ」

 「何からナニまですまないな、助かるぜ」

 「ふふ、よろしくってよ」

 それから、正秀と為次は自分の世界のことや、日本のことなどをターナに話した。
 話を聞くたびに、ターナは信じられないという表情を見せながら、興味深そうに聞くのであった。

 ……………
 ………
 …

 3人がお互いの世界の話に夢中になっていると、スレイブとマヨーラが戻ってきた。

 「見ろよ! 大量だぜ!」

 両手いっぱいに持った、魔獣から剥ぎ取ったであろうグチョグチョしたモノをスレイブは見せつけてくる。

 グチョグチョを抱える2人は砲塔に上がると、左右のバスケットの蓋を開け勝手にそれらを放り込む。
 隙間から血のような汁が滴り落ちるが、そんなことは気にせずにご満悦であった。

 「さあ! 街までもう少し、帰ったら宴会よ」

 かなり報酬なのだろう、マヨーラはご機嫌だ。
 スレイブだって負けてはいない。

 「今夜は飲むぜ!」

 「程々にしてくださいよ」

 と、ターナはスレイブを睨みつける。

 「わ、分かってるよ……」

 「尻に敷かれそうですな」

 と、余分なことを言う為次。

 「うるせー!」

 皆は楽しそうに笑うと、街に向け再び走り始める。

 鋼鉄の鎧に包まれた地上最強の車両、レオパルト2。

 そんな心の支えが在るからこそ、二人はまだ笑うことができるのであった……
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