異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 1章

第5話 換金

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 森を抜け川沿いの道をしばらく走ると巨大な建造物が見えてくる。

 それは、大きな川を跨ぐように被さった円形の高い外壁で囲われている。
 内側には更に高台となった円形の台の上に様々な建物が立ち並んでいた。
 中央には高い塔のような建物も見える。
 全体的に見ると茶色いウエディングケーキみたいな感じだ。

 「見えてきたわ、あれがエリステアル王国の王都サイクスよ」
 
 マヨーラは砲塔の上で立ち上がると、自慢そうに指しながら言った。

 為次は距離メーターを確認すると予想の半分しか進んでないことに気が付く。
 どうやら、途中で休息したり遊んでたりして来たんだなと思う。
 それは、とても助かったことでもあった。
 なにしろ給油できないの状況なのだから。

 「すげー、デカイな」

 眼前に迫る街を見て為次は言うと、スレイブが入り口を案内してくれる。

 「このまま川沿いに行けば左手に外門が見えてくる、そこから入れるぞ」

 「りょかーい」

 言われたように戦車を走らせると巨大な門が見えて来た。

 門の前には門兵とおぼしき男性が2人立っている。
 近づくと止まれと合図を出している様子であった。
 とりあえず門の手前で戦車を停車させると、スレイブは門兵に向って戦車から飛び降りた。

 「何だスレイブ、お前達だったのか」

 門兵の1人はスレイブに向かって言った。

 「おお、戻ったぜ」

 「しかし、この陸上艇は…… いい収穫があったようだな」

 「ま、この陸上艇は俺達のじゃないがな。それよりコイツを見ろよ」

 そう言いいながら、スレイブは親指で戦車の上に居るターナを指した。
 すると、ターナはエレメンタルストーンを掲げて見せる。

 「それはマンティコアのエレメンタルストーンですか?」

 もう1人の門兵は石を見ただけで気が付いたようだ。

 「へへっ、そうだぜ」

 「よく討伐してくれましたね。これで皆も安心するでしょう」

 「ちょろいもんだぜ」

 マヨーラもスレイブの横に飛び降りて言う。

 「よく言うわね、ケガして泣いてたくせに」

 「はぁ? 血を吐きながら倒れてたのはお前だろ」

 「なによ! あんなのケガの内に入らないわ」

 「ああ? なんだと」

 「なによ!」

 2人は睨み合った。
 そこへターナが入ってくる。

 「んんっ…… あなた達」

 と、睨みつけるターナ。
 するとスレイブとマヨーラは引きつった笑顔をしながら言い訳を始める。

 「い、いや、別にケンカしてるわけじゃないぜ。なあ、マヨーラ」

 「そ、そうよ…… おほほ、わたくしはケンカなどしませんわ……」

 「……まあいいですわ。今回はそう言うことにしておきます」

 「あ、ああ……」

 「は、はい……」

 正秀は3人のやり取りを見て、面白い連中だなと思う。

 「コントの最中さいちゅうに悪いが、俺達も街に入れるのか?」
 
 「ああ、そうだったな。今、紹介してやるからな」

 しかし、紹介する前から門兵は怪しそうに正秀と為次を睨んでいる。

 「おいスレイブ。誰だ、あいつらは?」

 「何でも迷子らしい」

 「迷子だと?」

 「マサヒデとタメツグだってよ」

 スレイブの簡素な紹介にターナが補足する。

 「怪しい人達ではありませんわ。マンティコアを倒してくれたのは、この方々なのですわ」

 「なんと! それはまた…… 彼らが……」

 「ターナ様のお墨付きなら大丈夫ですね。どうぞお入り下さい」

 どうやら中へ通してくれるらしいが、為次は戦車から離れたくないので心配そうに訊いてみる。

 「レオ…… この陸上艇もいいの?」

 「構わんが一般街までだぞ」

 「一般街?」

 街のことを知らない為次の様子に門兵は、また怪しそうに睨む。

 「知らないのか? 平民区画のことだぞ?」

 「平民…… んん? なんだそれ?」

 そこへ、ターナの助け舟が入る。

 「この街は初めてみたいですの。その辺については後程、私から説明致しますわ。ですから通していただけまして?」

 門兵は少し不服そうではあるが……

 「まあ、ターナ様がそうおっしゃるなら……」

 「仕方がない、通っていいぞ」
 
 「はいはい、じゃあ行きますか」

 「おう」

 そして、スレイブとマヨーラが再びレオパルト2の砲塔に上がると戦車は走り始める。
 門兵達に手を振りながら、街の中へと進んで行くのであった。

 ※  ※  ※  ※  ※

 壁の内側へ入ると人や建物は閑散とした場所であった。
 どうやら中心に近づくほど人口密集地になるらしい。

 「早くギルドに行こうぜ」

 気の短いスレイブ言った。
 
 「そうね、早く換金したいわね」

 お金大好きなマヨーラも同意らしい。

 「どっち?」

 道を知らない為次にはスレイブが案内してくれる。

 「とりあえず右手の橋を渡って、道沿いに行けば冒険者区画に行けるぜ」

 「りょかーい」

 区画分けが気になる正秀は、為次のへっぽこな返事を聞き流して訊いてみる。

 「そう言えば、さっき平民区画とか言ってたし、冒険者区画もあるのか?」

 「お前ら、本当に何も知らないんだな」

 スレイブの言った知らないことに対してはターナが説明してくれるのだ。

 「それでは私から説明致しましょう」

 「よろしく頼むぜ」

 それから冒険者区画に行く合間に、ターナからサイクスについて色々と教えてもらった。

 説明によると王都サイクスは3重構造になっているらしい。
 円形の壁から内側にある円形の台の上にある街の手前までが一般街と呼ばれ、平民が暮らしている。
 向かって左手が平民区画で右手が冒険者区画となっており、裏手には色々と施設があると言う。
 内側の台の上にある街は上級国民が暮らしているそうで、平民はそこへ入れないそうだ。
 そして、中心にある高い塔のような建物がお城だそうで、王族がそこで暮らしており王宮区画になるとのことだった。

 また、高台となった上級国民区画の下には奴隷区画があるそうだが、そこへはあまり近づかない方がいいだろうとターナは言っていた。
 どうやらこの世界では、身分制度や奴隷制度が普通にあるようだ。

 そんな、説明を聞きながらしばらく進むと賑やかな街並みが見えて来た。
 そこには様々な屋台が並び多くの人々が行き交い、地面には石畳も綺麗に並べられている。

 「これ以上はレオだと無理かな」

 さすがに戦車を突っ込ませるのはマズいと思う為次は手前で停車させた。
 正秀もどうしようか悩む。

 「そうだな、どうする?」

 「どうするも、こうするも無いだろ。こっからはいつも通り歩いて行くさ」

 そう言ってスレイブは戦車から飛び降りた。

 「そだね。レオだと石畳を粉砕するだろうし、屋台も薙ぎ倒さないと進めないだから。歩くしかないねマサ」

 「もう少し広ければ通れるけどな……」

 「まあいいじゃない、俺はここで待つよ」

 「あんた、どんだけそこから出たくないのよ……」

 執拗に出て来ようとしない為次に、マヨーラは呆れて言った。

 「レオだけ残して行く分けにもいかないから仕方がないな。そんじゃ留守番頼んだぜ、為次」

 「うい」

 「…………」

 そして、為次を残した4人は冒険者区画にある冒険者ギルドへと向かうのであった。

 ※  ※  ※  ※  ※

 屋台の並ぶ通りに入ると様々な人種の人間と行き交う。
 エルフやドワーフもちろん、獣のような耳や尻尾を持つ獣人までも居るのだ。

 正秀はその光景を見ると、改めて不思議な世界へ来てしまったなと実感するのであった。

 「本当にすごい世界だな、まだ現実とは信じられないぜ」

 「何だ、珍しいのか?」

 「ああ、俺達の居た世界とはまるで違う。何もかも珍しいぜ」

 「私達がマサヒデの世界へ行けば、同じような感想になるかも知れませんわね、ふふふ」

 向こうの世界のことを聞いていたターナは笑いながら言った。

 「そうかもな」

 「街を案内して差し上げたいのですが、今日はあまり時間がありませんわね」

 「ああ、マサヒデ達の寝床も探さないとだしな」

 「俺達ならキャンプでも構わないが」

 「それでは疲れが取れませんわ、ゆっくり休むのも必要でしてよ」

 「分かった、助かるぜ」

 少し前まではベースキャンプ暮らしだった正秀と為次。
 だから、宿泊先が無くても手持ちのテントで問題はなかった。

 それでも敵の居ないこの世界で、少し安心した正秀はターナ達の好意に甘えることにするのであった。

 ※  ※  ※  ※  ※

 あれから屋台街を更に進むと、3階建の立派な建物が見えてきた。
 スレイブはその建物を指しながら言う。

 「ほら、あれが冒険者ギルドだぜ」

 「やっと着いたわね。はぁ、疲れた」

 マヨーラはグチョグチョした魔獣の残骸を両手一杯に抱えながら言った。

 「何だよ、だらしねぇな」

 「あたしはスレイブみたいな筋肉バカじゃないのよ」

 「ああ? 誰がバカだって?」

 「あらあら、そんなことも分からないの?」

 「んん、早く入りますわよ」

 ターナの一言に2人はすぐに大人しくなる。

 「「はい」」

 「お前ら、いつもそんな調子なのか?」

 面白そうに見ていた正秀は訊いた。

 「2人とも腕は確かなのですがねぇ……」

 ターナは困った様子ではあるが、何処となく楽しそうでもあった。

 そんな、他愛もないことを話しながらギルドの中に入ると冒険者であろう人々が一斉にこちらを振り向いた。
 正秀は少し驚いたが、スレイブはとても自慢そうな顔をするのだ。
 すると、数人の冒険者が近づいて来る。

 「おお! スレイブ、やったのか?」

 ターナの抱えているエレメンタルストーンを見た諸々の冒険者が話しかけてくる。

 「当たり前だろ、今回も頂きだぜ」

 スレイブは自慢げに言った。

 「さすがスレイブさんですね、マンティコアを倒すなんて」

 「その調子じゃ上級国民になれる日も近いな」

 「よかったですね、ターナ様」

 口々に話しかけてくる冒険者の中にターナが出てくるのでスレイブはちょっと焦る。

 「な、な、なんでそこでターナなんだよ!」

 「ふふっ」

 ターナが横で笑うとスレイブは少し恥ずかしそうにするのだった。

 「なんだ? 身分が上がるのか?」

 正秀の問いに色恋沙汰も大好きな、マヨーラが教えてくれる。

 「そうなのよ、色々と活躍すると上級国民になれるのよ。それでね、ターナは上級国民なのよ。本当はあたし達なんかとは冒険になんて行かない身分なのだけど」

 「じゃあ何で一緒に居るんだ?」

 「身分が違うと結婚できないのよ、つまりそう言うこと」

 「……ああ、なるほどな」

 すると、スレイブはマヨーラの両頬をつまみながらそう言うのだ。

 「余計なことしゃべんなよ……」

 「いひゃい、いひゃい」

 「しかし、驚いたな、本当に名の知れた戦士だったんだな」

 マヨーラの伸びたほっぺを見ながら正秀は言った。

 「なんだ、信じてなかったのか?」

 「正直な…… 悪かったよ」

 「ま、今回はアレに免じて勘弁しといてやるよ」

 そう言いながら、スレイブが指す方向を見るとターナが受付らしき方へとエレメンタルストーンを運んでいた。
 頬をつままれたままのマヨーラも、それを見るとスレイブの両手を振りほどく。

 「いつまでやってるのよ! これも換金してくるわ」

 グチョグチョしたモノを持って、マヨーラも受付の方へと走って行くのであった。

 その後、ターナとマヨーラは報酬と換金したお金を持って戻って来た。
 全部で980万ゴールドあったそうだ。

 ※  ※  ※  ※  ※

 一方、為次は一人レオパルト2の車内で、インターネットの繋がらないスマホをいじりながら、暇を持て余していた。

 「うん、暇だ……」

 どこの場所でも、車内待機は暇なのでした……
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