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異世界編 1章
第10話 炎竜その2
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レッドドラゴンがブレスを吐く前兆を確認した正秀は、咄嗟に為次の名を叫んだ。
だが、叫びよりも早く為次は戦車を動かし始めていた。
レッドドラゴンのブレスを回避するのに、考えるより先に体が動いていたのだ。
レオパルト2は、その車体が60トン以上もあるとは思えない瞬発力で回避機動をする。
その瞬間、レッドドラゴンは口に集めた炎を火球にして吐き出した。
ブレス攻撃は戦車を目がけて放たれるが、既に急旋回で回避している。
おかげで間一髪、レッドドラゴンの攻撃を避けることができた。
「あっぶね! 何もんだよアイツ」
為次は冷や汗をかきながら言った。
「ドラゴンだろ」
「知ってるし」
ふざけた会話をしながらも、即座に戦車をドラゴンの正面に向ける。
一番装甲の厚い前面を敵に向ける為だ。
しかし、火球が着弾した地面をみた時、それは意味のない行為だと思い知らされる。
「おいおい、マジかよ……」
正秀は車長ハッチから身を乗り出し驚いて攻撃跡を見ていた。
「マジ勘弁だわ」
レッドドラゴンの放った火球の着弾跡は、岩石の地面が半球状に溶けているのだ。
爆風で吹き飛んだわけでもなく、岩の地面が溶岩と化し溶けている……
「アレ喰らったらヤバいよな?」
分かりきったことを正秀は訊いてきた。
あからさまに火球を喰らえばただでは済まない。
「セラミック装甲だけは残るでしょ…… つか、セラミックまで溶かされたらまずいかも」
「なんにしろ、喰らったら装甲が溶けちまいそうだぜ」
そして、正秀は次弾を装填する。
それは硬芯徹甲弾であった。
弾心が硬く重い金属を撃ち込む砲弾である。
「俺が思うに奴は炎竜だ。つまり熱耐性が異常に高いんじゃないのか?」
「あー、なるほどねー。鱗が金属じゃなかったら、圧縮しても液化するわけないしねー」
翼安定徹甲弾は金属が圧縮された際に起こる、塑性流動によって貫徹する。
しかし、その現象で敵を貫けなかった場合、通常の徹甲弾よりも貫徹力が劣ってしまう。
「そう言うことだ! 分かってるじゃねーか為次!」
得意げに言いう正秀だが熱耐性は先程の説明とはあまり関係無い。
とにかく硬芯徹甲弾を発射する。
ドーン!!
だが、発射された砲弾はレッドドラゴン目掛けて飛翔するが、命中することはなく空しく遥か彼方へと飛んで行ってしまった。
レッドドラゴンはまるで木の葉か、あるいは蝶のように舞い避けたのだ。
その様を正秀は唖然と見ていた。
「くっそ! 避けやがった、ハエかよアイツは!」
「でけぇハエだなぁ」
「次だ、次っ。今度こそ当ててやるぜ」
正秀は急いで先程と同じ砲弾を装填する。
同時に戦車砲の攻撃を避けたレッドドラゴンは、レオパルト2の方を振り向くと突然火を吹いた。
それは、先ほどの火球とは違い何の前触れもない火炎であった。
流石に為次も焦る。
「うそ!? まじすか」
あまりに咄嗟の攻撃に回避が遅れた。
レオパルト2は炎に包まれる。
しかし、塗装を少し焦がした程度でなんともなかった。
「焦ったぁ。やばい、やばい。あのハエ、チャージしないと火球は撃てないみたいだね」
「ああ、そうみたいだな。だが、只の火炎放射器なら問題ないぜ」
正秀は、おしゃべりしながらも次弾の装填を完了した。
レッドドラゴンは羽ばたきながら頭上を旋回している。
為次はそれに合わせて、砲身が仰角範囲に収まるように距離を取った。
レッドドラゴンも火炎では、地面をうろちょろする鉄の塊が倒せないと悟った様子だ。
再び空中で静止すると口元に炎を収束させた。
正秀はそれを見逃さなかった。
「あまいんだよ!」
再び硬芯徹甲弾が発射される。
そして、空中で止まっているレッドドラゴンに今度は間違いなく命中したのだ。
砲弾の命中と同時に火球も吐き出された。
「攻撃モーション、バレバレっすね」
レッドドラゴンの攻撃は難なく避ける為次。
今度こそはとの思いで二人はレッドドラゴンを見つめるのだ。
しかし……
「まじかよ……」
正秀は愕然とした。
「ダメだね」
「どんだけ硬いんだよ! この糞バエッ!!」
まったくの無傷であった。
「戦車より硬いハエが居る世界なのかよ……」
その正秀の言葉は諦めにも近かった。
だが、為次は見逃していなかった。
戦車砲が命中した時に、着弾した部分が光ったことを……
「まあ、まあ、そうがっかりしなさんな」
「ガッカリもガッカリ、超ガッカリだぜ。為次さんよ!」
「がっかりモード中のマサさんに悪いんだけど、MG3で撃ってみてよ」
「はぁ? 何言ってんだ、お前。戦車砲が効かないのに7.62ミリなんざ、豆鉄砲だろ」
「ま、まあ、嫌なら無理にとは言わないけど……」
「…………」
正秀は腑に落ちないといった様子でしばらく考えるが……
「分かったよっ! 撃てばいいんだろ! 撃てばよっ」
そう言ってMG3を手に持つと、車長ハッチから上半身を出す。
眼前の空中ではレッドドラゴンがこちらを睨んでいた。
先程の隙きのない火炎攻撃を思い出す正秀。
「今、火炎吐かれたら死ぬな……」
「はよ、はよ」
「くそっ!」
そう吐き捨てながら、正秀は機関銃をレッドドラゴン目がけて乱射する。
バババババッ!!
ヤケになっているらしく、小刻みにはトリガーを引かず手当たり次第連射した。
レッドドラゴンは機関銃の弾を避けようとするものの、流石に弾幕は避けきれずに被弾している。
しかし、銃弾は当たるものの、まったく効果がない様子だ。
「もういいか?」
「おけ、もういいよ」
「お、おう?」
「やっぱ着弾したとこが光っとるわ」
「ん? どういうことだ?」
気になった正秀は再度機関銃を発射してみた。
ヒラヒラと避けつつも被弾するレッドドラゴンを確認すると、確かに弾の当たった場所が波紋のように光るのだ。
「確かに光ってるな ……っ!?」
その時であった。
レッドドラゴンは突如こちらに向って飛んできた。
「マサ! やばい、やばい」
「うおぉぉぉ」
正秀は咄嗟に車内へと潜りハッチを閉める。
それは、レッドドラゴンが火炎を吐くのとほぼ同時であった。
炎に炙られる寸前、間一髪ハッチを閉めることができた。
「や、やばかった…… ぜ」
あと少し遅ければ丸焦げである。
レッドドラゴンは火炎を吐き終わると戦車の後方へと飛行した。
それに合わせ、為次は超信地旋回をすると再びレッドドラゴンを正面に捉える。
「どういうことだ?」
謎の光の波紋を見た正秀は訊ねた。
「バリアじゃないかな」
「なるほど、マジックシールドってやつか」
「バリアでしょ」
「マジックシー……」
「バリアでしょ」
「そ、そうだな。バリアな」
「そうそう、バリア」
「それで、あのマジ…… バリアどうするんだ?」
「それはもちろん、逃げ…… 戦略的撤退あるのみ!」
言うが早いか為次はレッドドラゴンの真下を潜るように全速力で戦車を走らせた。
岩場にも構わず、アクセル全開でダッシュするレオパルト2。
凹凸で跳ねるのも構わず全速力で走り、車体は地面を離れジャンプする。
それでもアクセルベタ踏みなのだ。
「うそ…… でしょ……」
為次は目の前で羽ばたくレッドドラゴンと目が合ったような気がした。
悪夢は終わらない……
レッドドラゴンはあの巨体でありながら、直ぐさま戦車の前に回り込んでいた。
たとえ飛行速度が速くとも、そこまで加速するにはある程度の時間は必要なはずだ。
しかし、一瞬でレオパルト2を追い越したのだ。
驚愕する正秀。
「マジかよ…… あの図体で……」
「ひでぇ…… チートだろチート」
為次は怖かった。
逃げることもできない、攻撃も効かない敵が目の前に居ることが。
このまま、回避しながら街に戻ったところで、誰がこいつの相手ができようか?
「うへへ、そっちが最強のモンスターなら、こっちは地上最強の戦車なんだよねっ!」
為次は笑っていた。
恐怖とは裏腹に、戦車を限界ギリギリで運転できるのが楽しかったのだ。
為次はバスを運転している時、たまに思うことがあった。
このバスを全開で走らせることができるのならば、とても楽しいだろうと。
バス停からバスが発車する時はバスが優先である。
だが、現実は違う……
少しでも無理なことをすれば、すぐにクレームがくる。
たとえ、こちらが法令遵守で走っていようとも、他車の機嫌を損ねればクレームがくる。
挙句の果てには、こちらが悪くなくとも助役から呼び出され始末書なのだ。
とても理不尽だとは思いつつも、仕方のないことであった。
だから、このバスを思いっ切り走らせることができるのならば、どんなに楽しいのだろうかと。
そして、今の状況はその時とは違っていた。
今、この瞬間、この戦車と搭乗員の命運を握るのは自分なのだ。
誰からも文句は言われない。
ミスをすれば即、死亡。
自分が運転しているのは、地上最強の車両である戦車なのだ!
レオパルト2なのだ!
それを、この手で縦横無尽に運転できることがとても楽しかった。
為次はレオパルト2をギリギリで動かす。
少しでも間違えれば、履帯が切れたり外れたりする。
そうなればお終いである。
しかし、履帯の悲鳴も動力の唸りも肌で感じ取り操縦する。
為次は恐怖に怯えつつ、笑いながら言う。
「ははっ、こうなりゃハエ叩きだね」
「よっしゃ! 付き合うぜ」
再び、レッドドラゴンとレオパルト2は対峙するのであった……
だが、叫びよりも早く為次は戦車を動かし始めていた。
レッドドラゴンのブレスを回避するのに、考えるより先に体が動いていたのだ。
レオパルト2は、その車体が60トン以上もあるとは思えない瞬発力で回避機動をする。
その瞬間、レッドドラゴンは口に集めた炎を火球にして吐き出した。
ブレス攻撃は戦車を目がけて放たれるが、既に急旋回で回避している。
おかげで間一髪、レッドドラゴンの攻撃を避けることができた。
「あっぶね! 何もんだよアイツ」
為次は冷や汗をかきながら言った。
「ドラゴンだろ」
「知ってるし」
ふざけた会話をしながらも、即座に戦車をドラゴンの正面に向ける。
一番装甲の厚い前面を敵に向ける為だ。
しかし、火球が着弾した地面をみた時、それは意味のない行為だと思い知らされる。
「おいおい、マジかよ……」
正秀は車長ハッチから身を乗り出し驚いて攻撃跡を見ていた。
「マジ勘弁だわ」
レッドドラゴンの放った火球の着弾跡は、岩石の地面が半球状に溶けているのだ。
爆風で吹き飛んだわけでもなく、岩の地面が溶岩と化し溶けている……
「アレ喰らったらヤバいよな?」
分かりきったことを正秀は訊いてきた。
あからさまに火球を喰らえばただでは済まない。
「セラミック装甲だけは残るでしょ…… つか、セラミックまで溶かされたらまずいかも」
「なんにしろ、喰らったら装甲が溶けちまいそうだぜ」
そして、正秀は次弾を装填する。
それは硬芯徹甲弾であった。
弾心が硬く重い金属を撃ち込む砲弾である。
「俺が思うに奴は炎竜だ。つまり熱耐性が異常に高いんじゃないのか?」
「あー、なるほどねー。鱗が金属じゃなかったら、圧縮しても液化するわけないしねー」
翼安定徹甲弾は金属が圧縮された際に起こる、塑性流動によって貫徹する。
しかし、その現象で敵を貫けなかった場合、通常の徹甲弾よりも貫徹力が劣ってしまう。
「そう言うことだ! 分かってるじゃねーか為次!」
得意げに言いう正秀だが熱耐性は先程の説明とはあまり関係無い。
とにかく硬芯徹甲弾を発射する。
ドーン!!
だが、発射された砲弾はレッドドラゴン目掛けて飛翔するが、命中することはなく空しく遥か彼方へと飛んで行ってしまった。
レッドドラゴンはまるで木の葉か、あるいは蝶のように舞い避けたのだ。
その様を正秀は唖然と見ていた。
「くっそ! 避けやがった、ハエかよアイツは!」
「でけぇハエだなぁ」
「次だ、次っ。今度こそ当ててやるぜ」
正秀は急いで先程と同じ砲弾を装填する。
同時に戦車砲の攻撃を避けたレッドドラゴンは、レオパルト2の方を振り向くと突然火を吹いた。
それは、先ほどの火球とは違い何の前触れもない火炎であった。
流石に為次も焦る。
「うそ!? まじすか」
あまりに咄嗟の攻撃に回避が遅れた。
レオパルト2は炎に包まれる。
しかし、塗装を少し焦がした程度でなんともなかった。
「焦ったぁ。やばい、やばい。あのハエ、チャージしないと火球は撃てないみたいだね」
「ああ、そうみたいだな。だが、只の火炎放射器なら問題ないぜ」
正秀は、おしゃべりしながらも次弾の装填を完了した。
レッドドラゴンは羽ばたきながら頭上を旋回している。
為次はそれに合わせて、砲身が仰角範囲に収まるように距離を取った。
レッドドラゴンも火炎では、地面をうろちょろする鉄の塊が倒せないと悟った様子だ。
再び空中で静止すると口元に炎を収束させた。
正秀はそれを見逃さなかった。
「あまいんだよ!」
再び硬芯徹甲弾が発射される。
そして、空中で止まっているレッドドラゴンに今度は間違いなく命中したのだ。
砲弾の命中と同時に火球も吐き出された。
「攻撃モーション、バレバレっすね」
レッドドラゴンの攻撃は難なく避ける為次。
今度こそはとの思いで二人はレッドドラゴンを見つめるのだ。
しかし……
「まじかよ……」
正秀は愕然とした。
「ダメだね」
「どんだけ硬いんだよ! この糞バエッ!!」
まったくの無傷であった。
「戦車より硬いハエが居る世界なのかよ……」
その正秀の言葉は諦めにも近かった。
だが、為次は見逃していなかった。
戦車砲が命中した時に、着弾した部分が光ったことを……
「まあ、まあ、そうがっかりしなさんな」
「ガッカリもガッカリ、超ガッカリだぜ。為次さんよ!」
「がっかりモード中のマサさんに悪いんだけど、MG3で撃ってみてよ」
「はぁ? 何言ってんだ、お前。戦車砲が効かないのに7.62ミリなんざ、豆鉄砲だろ」
「ま、まあ、嫌なら無理にとは言わないけど……」
「…………」
正秀は腑に落ちないといった様子でしばらく考えるが……
「分かったよっ! 撃てばいいんだろ! 撃てばよっ」
そう言ってMG3を手に持つと、車長ハッチから上半身を出す。
眼前の空中ではレッドドラゴンがこちらを睨んでいた。
先程の隙きのない火炎攻撃を思い出す正秀。
「今、火炎吐かれたら死ぬな……」
「はよ、はよ」
「くそっ!」
そう吐き捨てながら、正秀は機関銃をレッドドラゴン目がけて乱射する。
バババババッ!!
ヤケになっているらしく、小刻みにはトリガーを引かず手当たり次第連射した。
レッドドラゴンは機関銃の弾を避けようとするものの、流石に弾幕は避けきれずに被弾している。
しかし、銃弾は当たるものの、まったく効果がない様子だ。
「もういいか?」
「おけ、もういいよ」
「お、おう?」
「やっぱ着弾したとこが光っとるわ」
「ん? どういうことだ?」
気になった正秀は再度機関銃を発射してみた。
ヒラヒラと避けつつも被弾するレッドドラゴンを確認すると、確かに弾の当たった場所が波紋のように光るのだ。
「確かに光ってるな ……っ!?」
その時であった。
レッドドラゴンは突如こちらに向って飛んできた。
「マサ! やばい、やばい」
「うおぉぉぉ」
正秀は咄嗟に車内へと潜りハッチを閉める。
それは、レッドドラゴンが火炎を吐くのとほぼ同時であった。
炎に炙られる寸前、間一髪ハッチを閉めることができた。
「や、やばかった…… ぜ」
あと少し遅ければ丸焦げである。
レッドドラゴンは火炎を吐き終わると戦車の後方へと飛行した。
それに合わせ、為次は超信地旋回をすると再びレッドドラゴンを正面に捉える。
「どういうことだ?」
謎の光の波紋を見た正秀は訊ねた。
「バリアじゃないかな」
「なるほど、マジックシールドってやつか」
「バリアでしょ」
「マジックシー……」
「バリアでしょ」
「そ、そうだな。バリアな」
「そうそう、バリア」
「それで、あのマジ…… バリアどうするんだ?」
「それはもちろん、逃げ…… 戦略的撤退あるのみ!」
言うが早いか為次はレッドドラゴンの真下を潜るように全速力で戦車を走らせた。
岩場にも構わず、アクセル全開でダッシュするレオパルト2。
凹凸で跳ねるのも構わず全速力で走り、車体は地面を離れジャンプする。
それでもアクセルベタ踏みなのだ。
「うそ…… でしょ……」
為次は目の前で羽ばたくレッドドラゴンと目が合ったような気がした。
悪夢は終わらない……
レッドドラゴンはあの巨体でありながら、直ぐさま戦車の前に回り込んでいた。
たとえ飛行速度が速くとも、そこまで加速するにはある程度の時間は必要なはずだ。
しかし、一瞬でレオパルト2を追い越したのだ。
驚愕する正秀。
「マジかよ…… あの図体で……」
「ひでぇ…… チートだろチート」
為次は怖かった。
逃げることもできない、攻撃も効かない敵が目の前に居ることが。
このまま、回避しながら街に戻ったところで、誰がこいつの相手ができようか?
「うへへ、そっちが最強のモンスターなら、こっちは地上最強の戦車なんだよねっ!」
為次は笑っていた。
恐怖とは裏腹に、戦車を限界ギリギリで運転できるのが楽しかったのだ。
為次はバスを運転している時、たまに思うことがあった。
このバスを全開で走らせることができるのならば、とても楽しいだろうと。
バス停からバスが発車する時はバスが優先である。
だが、現実は違う……
少しでも無理なことをすれば、すぐにクレームがくる。
たとえ、こちらが法令遵守で走っていようとも、他車の機嫌を損ねればクレームがくる。
挙句の果てには、こちらが悪くなくとも助役から呼び出され始末書なのだ。
とても理不尽だとは思いつつも、仕方のないことであった。
だから、このバスを思いっ切り走らせることができるのならば、どんなに楽しいのだろうかと。
そして、今の状況はその時とは違っていた。
今、この瞬間、この戦車と搭乗員の命運を握るのは自分なのだ。
誰からも文句は言われない。
ミスをすれば即、死亡。
自分が運転しているのは、地上最強の車両である戦車なのだ!
レオパルト2なのだ!
それを、この手で縦横無尽に運転できることがとても楽しかった。
為次はレオパルト2をギリギリで動かす。
少しでも間違えれば、履帯が切れたり外れたりする。
そうなればお終いである。
しかし、履帯の悲鳴も動力の唸りも肌で感じ取り操縦する。
為次は恐怖に怯えつつ、笑いながら言う。
「ははっ、こうなりゃハエ叩きだね」
「よっしゃ! 付き合うぜ」
再び、レッドドラゴンとレオパルト2は対峙するのであった……
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