異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 1章

第13話 納品

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 冒険者ギルドに到着すると、入口の前は人だかりでいっぱいだった。
 皆、レッドドラゴン討伐の噂を聞きつけて来た者たちである。
 その中に、ターナ、スレイブ、マヨーラの3人の姿もあった。

 「おお、お迎えですか、ご苦労なこってす」

 もう大丈夫かなと思った為次はデザートイーグルをホルスターへと収めた。
 そこへ、スレイブとマヨーラが話かけてくる。
 
 「まさか、レッドドラゴンを倒したのがお前らだったとはな」

 「すごーい、本当に倒しちゃったんだ」

 正秀も得意げに言うのだ。

 「結構、ヤバかったけどな。あんな怪物だとは思わなかったぜ」

 「これで、皆も安心できますわ。ファーサ村の人々の無念も晴らされたことでしょう」

 「おう、そうだな」

 ターナと正秀が仲良く話しているのを見ると、ならず者達はなんだかソワソワし始めた。
 その内に1人が何やら緊張した面持ちでターナに言ってくる。
 
 「あの、お話の途中申し訳ないですが、この方々はターナ様のお知り合いですかい?」

 「ええ、そうですわ」

 「ターナの別荘を借りて住んでるの」

 為次の言葉にならず者は困惑気味だ。

 「う、嘘だろ……」

 かなり動揺している様子なので、為次は訊いてみる。

 「ターナがどうかしたの?」

 動揺している奴の代わりに、他のならず者が話し出す。

 「お前、知らないのか? ターナ様は神官だぞ。それにターナ様を呼び捨てにできるのは、スレイブさんと、そのチビっ子くらいだ」

 もちろん、マヨーラは聞き捨てならない。

 「え? ちびっ子? ちびっ子ってあたしのこと…… 何であたしだけ、ちびっ子なのよ!」

 何か喚いているが、何時ものことだと皆が聞き流している。

 「つか、シンカンって何? 爆発すんの?」

 すっとぼける為次に正秀は生真面目にツっこむ。

 「弾薬の信管じゃねーよ、神様に仕えてる偉いさんだ」

 「すげぇ! 全米が震撼すた!」

 「お前わざとだろ……」

 そこへマヨーラは得意げに言う。

 「ターナは神官と言っても只の神官じゃないわ。人々に加護を与えるとっても偉い人なのよ。ふふん」

 「別に、お前が偉いわけじゃないけどな」

 「わ、分かってるわよ! いちいちうるさいのよ。スレイブはっ」

 そんなマヨーラのふくれっ面を横目にスレイブは、ならず者へと詰め寄る。
 
 「それでぇ…… また、たかってたのか?」

 「い、いえ、決して俺達はそんなつもりじゃ……」

 「ここまで案内してもらってたんだ」

 正秀は助け船を出した。

 「そうかい、それでその見返りはいくらなんだ?」

 「いや…… あの…… それは」

 はっきり言えないならず者の代わりにお人好しな正秀は答える。

 「残った素材の譲渡だ」

 「えー、レッドドラゴンの素材あげちゃうの? もったいなーい」

 「マヨーラ達には、ここにある分の素材をやるから安心しな、いいだろ為次?」

 「家賃と小屋の弁償代があるしね」

 「お、おう……」

 ターナは何時も優しく答えてくれる。

 「あらあら。そんなお気遣いは、よろしくってよ」

 「まあ、お前らがそれでいいってんなら、構わねーけどよ」

 「いやぁ…… 何かすんません」

 ならず者の1人は頭を掻きながら言った。

 「気にするな、約束は守る」

 「さすが兄貴っす、これからは困ったことがあれば何でも言ってくだせぇ」

 動揺していた、ならず者も急に態度を変えて言った。

 「ったく、調子のいい連中だな」

 「それより、はよ、これ何とかしてよ」

 為次は荷車に載った、赤い石をペチペチしながら面倒臭そうに言うのだ。
 そこへ人ごみを掻き分け1人の女性が近づいて来た。

 「はい、はーい、ではでは私の出番ですかね」

 「誰っすか?」

 「私はこのギルドで受付をしているサーサラと申します。以後お見知りおきを」

 「あ、はい」

 今度は正秀が訊ねる。

 「じゃあ早速だけど、これはどうすりゃいいんだ?」

 「それはこちらで運んでおきますので、お二人は中で書類にサインをお願いします。依頼報酬のお金はその時にお渡しします」

 「素材の売却した金はスレイブ達に、それとそっちの冒険者達には回収してない素材を渡したいんだが」

 「分かりましたです。ではでは、譲渡書類のサインも頂きますので、そちらの方々も一緒に受付へどうぞ」

 「へへっ、そいじゃあっしらも」

 こうして、ゾロゾロと受付へと向かうのであった。

※  ※  ※  ※  ※

 皆で受付へと行くと、必要な書類にサインをすることになった。
 別段、難しいことはなく、手続きは直ぐに終わり報酬金も直ぐに貰えた。
 しかし、エレメンタルストーンの売却金だけは違ったのだ。

 受付嬢いわく。

 「申し訳ないのですがー。エレメンタルストーンのお金だけは、ガサフ氏の所へ取りに行って頂きます。個人の依頼購入ですので、こちらでは納品物の一時的な引き取りしかできないのですよー」

 「そうなんだ、めんどくさいね」

 「お前は、何時もめんどくさいがな」

 「ヒドイ言われようですな」

 「それで、こちらが上級国民区画への入場証になります」
 
 為次と正秀は入場証のカードを一枚づつと、ガザフ邸への地図をサーサラから貰った。

 「有効期限は3日間なので気を付けて下さい。それと、ガザフ邸以外の施設には入れませんので、あしからず」

 「はいはい」

 「以上となります、何かご質問は?」

 「いや俺からは特に無い」

 「わいも無い」

 手続きが終わり報酬を受け取ると、ならず者の冒険者達は素材を取りに行くからと、直ぐに行ってしまった。
 正秀と為次は、スレイブ達に昼飯でも食いながら呑まないかと誘われたが、正秀が買い物をしたいからと断ったのだ。
 その後、少し話をしてからスレイブ達とも別れ、二人は商店街をうろつくことにしたのであった。

※  ※  ※  ※  ※

 商店街に着くと、そこは屋台街とはまた違った賑わいを見せている。
 冒険者区画だからであろう、武器や防具などを取り扱う店が多い。
 食料品店も保存の効く冒険に適した食品が多い感じであった。

 「んで、買い物って?」

 「ああ、ちょっとな」

 「言えないモノと言えばアレか」

 「エロ本とかじゃないぞ」

 「え? 違うんだ」

 「そもそも売ってるのか? エロ本」

 「さあ? まあいいや、じゃあ俺は先に帰った方がいいかな」

 「いや、別に秘密にするような物でもないが」

 「いいよ、ガザフさんとこ行ってくるわ。俺」

 「へー、為次が自分からお使いとは珍しいな」

 「いやいや、いつも通りですよー」

 「ま、そう言うことにしといてやるぜ。じゃ頼んだぜ」

 「うい」

 「……んじゃ、荷車は俺が戻しとくぜ。レオは後で為次が乗って帰りな、俺がまた運転すると怒られそうだしな」

 「りょかーい。んじゃあ、行ってくるかな」

 「気を付けてな」
 
 「あ、そうだ、これ要る?」

 正秀にデザートイーグルを渡そうとした。

 「いや、大丈夫だ。そいつはお前が持っときな」

 「分かったかも」

 「それじゃ、また後でな」

 「うん。ほいじゃ行ってくるわ」

 後ろ向きに手を振りながら為次は行ってしまった。
 一人残された正秀は為次を見送ると早速、目的の物を買いに行くのであった。

 歩きながら、ならず者の冒険者達が絡んできた時のことを思い出しながら正秀は思う。

 さっきもそうだが、為次に頼り過ぎだな…… と。

 数か月前に正秀の搭乗する10式戦車に為次が配属されてからは、ずっと一緒だった。
 為次が来る前には2人の操縦手と出会っていた。
 だが、どちらも仲良くなった頃には死んでしまった。
 1人は履帯がやられ脱出した時に撃たれて死んだ。
 もう1人は車体前部の側面に戦車砲を喰らったのだ。
 後者に関しては、遺体の回収もできないほどバラバラになっていた。
 急いで救出に向かったが、そこには良く分からないモノがあるだけであった。
 そんな経験の直ぐ後にやって来た為次とは、もう仲良くはなりたくないと思うのも当然だった。

 しかし、為次は違った……

 初めて会った時からフザケタ野郎なのだ。
 それも、本人が悪いと自覚していないので、とにかくタチが悪い。
 しかも教育すら受けてない。
 本人いわく「説明書もらたから大丈夫かも」だ、そうだ。
 何が大丈夫なのかさっぱり分からなかった。

 特に困ったのが、命令をまったく聞かないことである。
 車長の命令を無視して、勝手に違う方向へと走って行ってしまうのだ。
 初めの頃は車長も怒鳴ったり殴ったりしていたが、最終的には何も言わなくなった。
 それどころか、会話すらまったく無くなってしまった。
 教育を受けていな為次は他の自衛隊員とも上手く行かない様子であった。
 ついには自分が面倒を見ないと、もうどうしようもないと思い始めたのだ。

 それからは少しづつ話すようになり、会話をしたり一緒に飯を食べたりもした。
 そんな折、あることに気がついた。
 為次が命令を無視する時は決まって、その先には何かあった。
 それは地雷原であったり敵の待ち伏せなどである。
 感が良かったと言うべきか、それともただ単に極度の臆病者だろうか?
 それは分からない。
 しかし、何時しか知らない間に正秀は為次を頼るようになっていたのだ。

 郡上の戦闘で10式戦車を破壊された時もそうだった。
 あの時は珍しく車長が怒鳴った。
 前進を拒んだ為次を無理矢理に動かしたのだ。
 前進した後に射撃位置に着くと、為次が「なんか、やばいっぽいかもー」と言っていたのを覚えている。
 その直後に被弾したのだが、被弾する直前に少しだけ為次が戦車を旋回させたのを知っている。
 あの時、旋回していなければ死んでいたのは車長ではなく、自分だった。
 それは、本当に僅かな差であった。

 偶然なのか自分を守ろうとしたのかは、今でも分からないし聞こうとも思わない。
 只、言えるのは為次を信用して頼りきっていた自分が居たことだけだ。
 だから、敵陣突破のような無謀とも言える作戦もできたのだ。

 そんな、少し前の出来事を懐かしむように思い出しながら、正秀は目的の店へと歩いている。
 その店は武器屋だった。

 「いつまでも、頼りっぱなしじゃダメだな」

 そう言いながら、武器屋に入って行く正秀であった……
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