異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 1章

第21話 朝食

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 為次はスイに装填手としての大雑把な説明を終えると、二人でロビーへと戻って来た。
 正秀はソファーに座ってテーブルの上を眺めている。
 大剣なのか? 朝食なのか? どちらを見ているのか分からないが、やっぱりテーブルの上を眺めている。
 只、朝食にはまだ手を付けてない様子であった。

 「おう、ようやく戻って来たか」

 正秀は待ちくたびれた様子で言った。

 「ただ今戻りましたです」

 「あれ? まだ食べてなかったの?」

 「一緒に食べようと思ってな」

 「ふーん」

 「へへっ」

 正秀は為次を見て笑っていた。

 「な、なんすか……」

 「別にぃー、それよりこれ旨そうだぜ。早く食おうぜ」

 「うん、そうね」

 正秀の様子に怪訝そうな顔をしながらも為次はソファーに座った。
 だが、為次も朝食にはまだ手を付けなかった。
 まだ、スイに言うことがあるから……

 「どうした? 食わないのか?」

 食事に手を付けようとしない為次に向かって正秀は訊いた。

 「う、うん…… ちょっといいかな? スイ」

 「私ですか? はい、なんでしょう?」
 
 スイは相変わらず為次のかたわらに立っている。

 「さっき教えたことは分かってもらえたかな?」

 「はい」

 「砲弾は重くなかった?」

 「アノ筒ですか? 少し重いですけど大丈夫だと思います」

 「マジで大丈夫?」

 「はい…… 多分……」

 「あのさ、はっきり言うけど、いい加減な気持ちで大丈夫とか言ってもらっても困るんだよ」

 「は、はい…… 申し訳ございません」

 「どうせ、簡単な仕事だからって適当に思ってるんでしょ?」

 「いえ…… 決してそのようなことは……」

 「じゃあなんで、ご飯食べないの?」

 「え?」

 「腹が減っていても、寝不足でも常に完璧にミスも無くこなせるのかな?」

 「えっと、それは……」

 正秀は二人を見ながらニヤニヤしている。
 スイは為次に怒られていると思い、今にも泣きだしそうだ。

 「俺達は軍人だ、食べれる時に食べて、寝る時に寝ないと、いざという時に戦えない」

 「おっ! 隊長の受け売りか? へへっ」

 茶化す正秀。

 「んもー」

 「いや、悪りぃ、悪りぃ」

 「んー、まあいいや。ねぇスイ、さっき教えた大切な仕事をやってくれってことはさ、一緒に戦ってくれるか? ってことなんだよ。ぶっちゃけ、君みたいな少女を戦闘に巻き込むのはどうかとも思うけどね。その辺はどうなの? 嫌なら本当にやらなくてもいいんだよ。やる気の無い奴に任せたくないんだよね、こっちもさ」

 「あ、あの…… ご、ご主人、うぇ…… 様の為でしたら、ぐすっ、ぐすっ……」

 スイは涙を拭いながら言おうとしている。
 だが、うまく言えない様子だ。

 「大切な話をしてるんだ、泣けばいいってもんじゃない。今まではそうやって、泣きながら命乞いして生きてきたか知らんけどさ。俺達にとっては命に係わることなんだよ。泣いたり土下座で誤魔化されても迷惑なんだよ」

 「うぇぇぇ…… はぃ」

 「どうなの?」

 「やるみゃす、やりますっ! うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん……」

 とうとうスイは泣き出してしまった。

 「ほんとに?」

 「はひぃ」

 「なんだて?」

 すると、スイは突然大声で言った。

 「にゃるのっ! 私がやるのっ!」

 大人しいだと思っていたが、これには為次もびっくりした。
 そんな二人を見ながら正秀は横でウンウンと頷き、どことなく嬉しそうな表情をしている。
 
 「あ、ああ…… わ、分かったよ、スイ。じゃあさ、朝食どうするの? 命令はしないよ…… 俺は君のことを奴隷だなんて思ってないからね。俺達のことを思ってくれるなら、一緒に食べてくれると嬉しいけどね。だけど、自分は奴隷だから絶対に一緒に食べないって言うなら、それでも構わない。どうすんの?」

 「ご主人様と…… ご飯食べても怒られないですか?」

 「誰も怒らんよ、つかこっちが頼んでるんだが」

 「むしろ、スイちゃんとお茶したいくらいだぜ」

 と、横から正秀も口を挟んだ。

 「…………」

 スイは悩んだ、ご主人様の申し出は正直な気持ち嬉しい。
 だが、奴隷にとってまともな食事を出されることや、ご主人様と食事をすることは処分されることを意味していた。

 あの日、ギガースと闘わされる前夜もそうであった。
 ガザフに呼び出されたスイは、同じ食卓につかされた。
 その席では、普段とは違い優しい言葉をかけられ、美味しい食事を食べさせてくれた。
 その時、スイは自分が次の番であることを理解し涙を堪えるだけで精一杯であった。
 だから今も為次の申し出を受けるのか悩むのだ。

 もっとも、奴隷の食事の件については、為次もターナ達から聞かされていた……

 「「「…………」」」

 少しの間、誰も口を開かなかった。
 スイも悩んでいる様子なので、為次は言う。

 「ねぇ、スイ。これからも、ずっとそばに居てもらえるの? かな?」

 「え? ご主人様…… な、何を言ってるんですか! そんなの当たり前です!」

 「そうなの? すぐに愛想尽かされて、捨てられそうなんですが、俺」

 「そんな分けないですよっ! あり得ません!」

 「ほんとかな~」

 「本当です! 信用して…… 信用……」

 その時、スイはようやく気がついた。

 「あ…… そうか……」

 ポツリと呟いたスイは思う。

 私はいったい何を迷っていたのだろう?
 昨日、タメツグ様に買われた時に……
 違う、買われたんじゃない、助けてもらったんだ。
 あの時に決めたはずだし、さっきもそう決心したのに……
 何があってもこの人について行こう。

 と。

 迷いの無くなったスイは言う。

 「あっ、あの…… そうです、よね…… 私がご主人様を信じなくてどうするんでしょうね…… そっか…… えへっ」

 「ん?」

 「わかりました、ご主人様、スイも朝食を一緒に頂きます!」

 そう言ったスイは涙を流したまま笑っていた。

 「スイ……」

 為次と出会ってから初めて笑顔を見せてくれた。
 もしかしたら、生まれて初めての笑顔なのかもしれない……

 そんな二人を見ていた正秀は、おもむろに立ち上がり言う。

 「よくがんばったな、為次」

 「は?」

 「流石、嫌われるのに慣れてるだけはあるな。うんうん」

 「なんなの……」

 「なんでもないさ、ちょっと酒取ってくるぜ。まだ残りがあったはずだからな」

 「はぁ? 朝から呑むの?」

 「当たり前だろ、ようやく新しい仲間が入ったんだ。歓迎会しないとな」

 「今からなの……?」

 「お前が言ったじゃないか、俺達は軍人だ呑める時に呑めってさ」

 「いやいや、言ってないし、なんか間違っとるし」

 「細けー奴だな、スイちゃんに嫌われるぞ。あ、慣れてるんだっけ? ひひっ」

 「ぐぬぬぬ」

 「スイちゃんも肴を用意してくれ、三人分な」

 「はい! じゃあこちらも温め直してきますね」

 「おう」

 そして、正秀とスイは朝から宴会の準備を始めてしまう。
 残された為次は、何となく気まずい感じがしたので、玄関を出るとレオパルト2の前に行ってみる。
 そっと車体に触れると、レオパルト2に話しかける。

 「なあ、俺達日本に帰れるのかな……」

 「…………」

 レオパルト2は静かに聞いていた。

 「さっき紹介した、お前の新しい装填手なんだよ。もし、帰れる時が来たら…… あのどうしよっか?」

 「…………」

 微動だにしないレオパルト2は何も言ってはくれない。

 「なんとか、独り立ちできるようになればいいけど…… 俺達が帰るか、それとも死ぬ前に、ね……」

 「…………」

 為次はしばらくの間、何も答えてくれないレオパルト2を色々な角度から眺めていた。
 時折、サイドスカートの裏を覗いたり、砲身に指を突っ込んだりもしてみた。
 そんな、上級レベルの軍ヲタから見れば極めて卑猥すぎる行為をしていると、玄関の扉が開く。

 ガチャッ
 
 「ご主人様! 何やってるんですか、準備出来ましたよ」

 先程まで泣いていたのが嘘のような元気で、スイは為次を呼びに来た。

 「ああ、スイ、丁度いいとこに来たね」

 「はい?」

 「これを見てよ」

 そう言いながら為次はレオパルト2を指す。

 「つばい様ですか?」

 「そう、俺と正秀の国だ。この中は日本なんだよ」

 「ニホン? ですか?」

 「そう、俺達の国の名前だ」

 「そう、ですか……」

 「国には国ごとの決まりがあるんだ、法律とかね。だから、この中に居る時は日本の決まりに従わないといけないんだよ」

 「はぃ……」

 「日本には奴隷制度は無い、寧ろ禁止されている。だからレオの中に居る時だけは、俺をご主人様と呼ばないでくれ。スイも一人の人間として、自分の意思で行動してもらいたい」

 「でも……」

 「本当に俺達に仲間として力を貸してくれるなら、それだけは約束して欲しい」

 為次はスイに頭を下げながら言う。

 「お願いします」

 それは、スイにとってあまりにも衝撃的な出来事であった。
 あるじに頭を下げられることなど、あり得ないはずなのだ。

 「あのあの…… えと…… ご主人様…… 分かりました! 分かりましたから頭を上げてください! なんで…… なんで、私なんかに…… うぇ……」

 スイは泣いていた……
 今度は何故泣いているのか、自分でも分からなかった。
 それを見た為次は、このは本当に泣き虫だなと思いながら、そっと手の平をスイの頬にあてがう。

 そして、親指でスイの涙を拭いながら言う。

 「ありがとう」

 「ご主人…… 様……」

 二人は見つめ合う……

 コン コン コン

 その時、誰かが玄関の扉を叩いた。
 二人は振り向くと、扉にもたれかけた正秀がこちらを見ながらノックしていた。

 「お二人さん、いい雰囲気のとこ悪いが、また料理がさめちまうぜ」

 「うお! マ、マサ…… 何時から見てたの!?」

 「お前らが抱き合ってたとこから」

 「はぁ!? な、な、な、何言ってんの? 抱き合ってなんかないしっ」

 「そーだっけか? まあいいじゃねーか、それより飯にしようぜ」

 「はぁ…… はいはい、じゃあ行きますか」

 「はい、ご主人様!」

 そんなこんなで、ようやく朝食にありつける三人なのであった……
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