異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 1章

第36話 狂人その1

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 楽しい一時ひとときを過ごしたマヨーラと正秀は、仲良く冒険者ギルドへ向っていた。
 その途中でも、「どんなクエストいっこか?」などと話しながら、マヨーラはウキウキ、ワクワクなのでした。

 しかし、そんなマヨーラも冒険者ギルドへ入ると、露骨に嫌な顔をするのであった。

 それは……

 「うげっ…… タメツグ……」

 ギルドの中は閑散としていた。
 いつもと違い、今は数人の冒険者が居るだけであった。
 そんな少ない人数の中には、為次とスイも居たのだ。
 これから、正秀と甘く素敵な時間を過ごそうと思っていたマヨーラにとっては、邪魔者以外の何者でも無かった。

 だから、マヨーラは為次を見るや否や、杖をかざすと呪文を唱えるのだ。

 「ファイヤー……」

 「まて、まて、まて」
 
 慌てて、マヨーラの肩を掴み止める正秀。

 「お、おい、マヨーラ。何をしようとしてんだよ……」

 「邪魔者を消し去って、私の幸せを手にするのよっ」

 ちょっと、目が血走っている。
 幸せを逃すまいと、マヨーラは必死になっている様子だ。

 「いや、おかしいだろ。しかも、ファイヤーってなんだよ、ライトニングじゃないのかよ」

 「汚物は焼却よ、燃やすに限るわ、止めないでマサヒデ!」

  正秀は必死にマヨーラをたしなめる。

 「分かった。分かったから、ちょっと落ち着け、なっ? こんなとこで、全力攻撃魔法とかヤバいだろ」

 「うぬぬぬ…… そもそも、あいつ何やってんのよ」

 見ると為次とスイは、受付でサーサラと何かを話している様子だ。
 何を話しているのかと気になる。
 なので、とりあえず受付の方へと向かうのであった。

 「よお、為次」

 「んあ?」

 へっぽこな返事をしながら、為次が振り向く。

 「おお、マサじゃないか、久しぶり」

 「お久しぶりですぅ」

 「久しぶりって程じゃないだろ……」

 「はぁ…… タメツグあんた、何してんのよ」

 「やあマヨ、正秀とは上手く行ってるかな?」

 「あんたが居なければね」

 「あ、はい、すいません」

 「まあ、いいわ、今回は特別に許してあげるわ」

 「何もしてないけど……」

 「それより、サーサラを困らせたりしてないでしょうね?」

 「そんなことしてないよ。ねー、サーサラさん」

 「はいはーい、そうなのでーす、ですです、はーいいいぃぃ」

 「今日のサーサラさん、すっごく面白いんだよ」

 為次の言葉にマヨーラは首をかしげる。

 「面白い?」

 「サーサラ様は、面白いのです」

 スイにも面白いと言われるサーサラは、4人を見ながらニタニタと笑っている。

 「ね、サーサラさんも楽しそうでしょ」

 楽しそうに言う為次と不気味な笑顔のサーサラを見るマヨーラは急に真顔になった。
 何かを考えている様子で黙っている。

 「…………」

 「んで、何を話してんだ?」

 正秀は訊いた。

 「特に何も話してないよ」

 「は? 何言ってんだ?」
 
 為次はサーサラの方を向いて言う。

 「ねー、サーサラさん。俺は誰でしょう」

 「タタタタタタタタ、メーーーーーーーーーー、知ってますますよー、忘れるわけ、ツグゥゥゥゥゥ」

 「ぎゃははは、何言ってんの、面白れー」

 「ぎゃはははははははは、ですですですですです、あーはははははは」

 「今日も美人だねー、サーサラさんは」

 「うあぁぁぁぁぁ、うっれしーぃぃぃぃぃぃぃ、ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 嬉しさのあまりだろうか?
 頭を過激に振りながらサーサラは言った。

 マヨーラは後退りをしながら呟く。

 「サーサラ……」

 「ああああああ、そこにいるるるるるるるマヨマヨマヨ、じゃないでーーーーーーす、でーーーーーーす、ラーラララ」

 「ひゃははははは、サーサラさん何言ってんの、面白すぎるよ」

 「面白いですぅ」

 そんな、為次とサーサラの会話になっていない会話を見ていたマヨーラは顔を引きつらせる。

 「タメツグ…… 直ぐにそこから離れて」 

 「はえ? なんで?」

 「いいから早く! サーサラから離れなさい!」

 正秀も急に態度の変わったマヨーラが気になる。

 「お、おい、マヨーラどうしたんだ?」

 「あっれー? もしかして、サーサラさんにマサを取られると…… ゲハァツ!?」

 マヨーラをからかおうとした為次だが、そのセリフを全部言うことができなかった……
 話そうとしていた為次の首を、サーサラが力いっぱい掴んだのだ。

 「いぎひゃあァァァ! ターメーつっぐぐぉおおおあぁぁぁ!!」

 「う、がっ…… あがっ…… さ、サーサラ……? さん……」

 あまりの力の強さに、首はミシミシと鳴り呼吸もできなくなった。

 「あっ…… ぐ…… うげげ……」

 為次はサーサラを振りほどこうとしているが、無理っぽい。

 「ご主人様ぁ?」

 「サーサラさん? どうしたんだ?」

 「サーサラ! やめなさい!」

 マヨーラはサーサラの腕を掴むと、必死に為次から引き離そうとする。
 しかし、マヨーラの力ではサーサラの腕はピクリとも動かない。
 むしろ、首を絞める力が更に増しているようだった。
 
 正秀も慌てて、サーサラの腕を為次から離そうとするが……

 「な、なんだこの力…… 全然、動かねぇ…… やめろ、やめてくれ、サーサラさん」

 「ひゃぁぁぁぁぁ、きぃぃぃぃぃもっちいいいぃぃぃぃ」

 「スイっ! あんたもなんとかしなさいよ!」

 「どうされました?」

 「見れば分かるでしょ、あんたのご主人様が殺されかけてるのよっ 早く、サーサラの手をタメツグから離さないと……」

 「うげげげ…… だじげでー」

 なんか、為次の顔がだんだん青くなってる。

 「サーサラ様、ご主人様から手を離してほしいのです」

 「てぇぇぇぇ、いやぁぁぁぁぁ、イイわァァァーーー」

 突然、スイが叫ぶ。

 「うぉりゃぁぁぁぁぁ!」

 その直後であった……
 為次の目の前を赤い光がかすめる。
 同時に首を掴む手が離れるた。

 否、サーサラの手は為次からは離れていなかった。
 離れたのは、サーサラからである……
 手首が切断されていた。

 スイが買ったばかりのライトブレードで斬ってしまった。
 切断された腕から噴き出す鮮血に、為次の顔が真っ赤に染まる。
 その拍子に首に手を付けたまま、後ろにひっくり返ってしまった。

 「ギャァァァァァァ! あああああああ! ぎぬゆああぁぁぁ!!」

 右手首を失ったサーサラは、人間とは思えない奇声を上げた。
 そのまま、為次を飛び越すように跳ねると、テーブルの上に着地し、また何かを叫ぶのだ。
 その叫びは、もはや叫びかも分からない奇声であり、聞くに耐えない異音としか言いようがなかった。
 そして、ようやくサーサラから解放され床に転がる為次だが、まだ切れた手首とじゃれ合っていた。

 「う、う…… ゲホッ、ゲホッ、ぐるじーなんとかじでー」

 切断された手首は、為次の首にめり込み離れない。
 必死に手を取ろうとするが、完全に首の肉を掴んでいる。

 「はう、ご主人様が死んじゃいます」

 スイは慌ててあるじに近寄り切断された手首を掴む。
 そして、何を思ったか思いっきり引っ張った!

 当たり前だが、無理に外そうものならヤバイ、マジでヤバイ。
 だが、スイはそんなのお構い無しだ。
 スイの馬鹿力で為次の首から手首がもぎ取られる。

 首の肉と一緒に……

 「にぎゃぁぁぁぁぁ!」

 激しい痛みと共に、為次の首からも鮮血が噴き出る。
 自分の首を抑えながら、もがきまくる。
 もう全身が血で真っ赤である。
 もっとも、着ているパジャマが黒いので顔と手が赤いだけです。
 それよりも、辺り一面、血の海状態だ。
 そこら中が赤く染まっている。

 「はわぁ、ご主人様ぁー赤いですぅ」

 スイは主の惨状を見て、どうしていいのか分からない。
 だから、どうでもいいことを言いながら、手首とライトブレードを振り回しバタバタしてるだけだ。

 そんなスイを見かねた正秀は言う。

 「スイちゃん、ポーションだヒールポーション」
 
 「そうなのです、ヒールですぅ。エンチャントヒール!」

 スイはライトブレードにヒールを付与する。
 そして為次をめがけてトリガーを引く。
 だが、それを見たマヨーラは叫びながら、スイの行動を阻止しようとする。

 「やめなさいっ! スイ!」

 マヨーラはスイを突き飛ばすが、魔法は剣から射出される。
 しかし、その魔法はマヨーラのせいで狙いから少し逸れてしまった。
 左手で血の流れる首を抑え、右手で体を支え、床に座り込み、へばっている為次の体には当たらなかった。

 「はう! マヨマヨ様、何をするのですかぁ」

 邪魔されたスイは、ちょっと怒ってるの。
 魔法は為次の体には当たらなかったが、右腕に当たっていた……

 べしゃっ!

 次の瞬間、為次は顔面がんめんから血の海に突っ伏してしまう。
 体を支えていた右腕が切断されてしまったのだ。
 武器屋の店員さんが、ライトブレードの仕様をちゃんと説明してなかったから……
 代わりにマヨーラさんが説明してくれる。

 「バカっ! その剣から撃ち出される魔法は全てやいばになるのよ!」

 「は? はうぁ…… ご、ご主人様……! うえぇぇぇ…… うわーん…… ご主人様ぁ、ご主人様をボロボロにしてしまいましたー。えーん……」

 自分のせいで死にそうになった為次を見たスイは、泣き出してしまった。

 「あううう、ごめんなさーい、ご主人様ー起きてくださぁい、うぇぇぇーん、ごべんなざいー」

 動けなくなってきた為次は、痛みも無くなってきた。
 ナノマシンが直ぐに止血をしてくれるが、それでも失った血は意外と多い。

 「お、溺れる…… 自分の血で溺れる…… 誰か起こして。スイ、泣いてないで起こして欲しいかも。て言うか、寒い……」

 もはや、喋る元気も無くなった為次は血の海で一人ぶつぶつ言っていた。
 その時である、正秀はグッドアイディアを思いついたつもりみたいだ。

 「そうだスイちゃん!」

 「なんですかぁ? うえぇぇぇ……」

 「床の血にヒールをかけるんだ!」

 「うぇぇぇん?」

 「早くするんだ!」

 「……はいぃ ……エンチャントヒールです、ぐすっ」

 正秀に言われた通りに、泣きながら血の海にヒールを付与する。

 「よしっ! 為次、飲め」

 「う、うぐぁ…… (これを飲めと申すか)」

 「生きてるなら早くしろっ」

 「…………」

 為次は言われた通りに、床の血をピチャピチャと舐め始めた。

 「うえぇ…… 舐めてますよ、犬みたいですぅ」

 「そ、そうね…… どっちがあるじか分からないわ」

 「ぴちゃ、ぴちゃ(ぐぬぬぬ、惨め過ぎる)」

 床に這いつくばり、芋虫みたいな為次ではあるが、ヒールの効果は相変わらず絶大だ。
 傷がみるみる内に治っていく。
 切断された右腕も、ちょっとずつ生えてくる。

 だが、失った血は多い。
 一命を取りとめた為次ではあるが、とても動ける状態ではなかった。

 それに、テーブルの上では未だサーサラが奇声を上げている……
 そんな狂ったサーサラを、ギルドに居る人々は唖然と眺めるだけであった。

 「あぅぅ(俺だけ血の床しか見えてないんですが……)」

 そう言えば、一人だけ違いましたね……

 そんな狂ったサーサラを、役立たずの一人を除いてギルドに居る人々は唖然と眺めるだけであった……
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