異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 1章

第49話 必殺技その2

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 為次とスイが下らないことでケンカをしていたその頃……
 神殿では大きな鏡を見ているターナが、わざとらしく困り顔をしていた。

 「はぁ…… 困りましたわ……」

 「どうしたんだい? 母さん」

 「あの子達ったら、また何か揉めてるようですわねぇ」

 鏡にはターナの別荘の様子が映し出されている。
 使い魔から送られてきた映像と音声の情報が、リアルタイムで表示されているのだ。

 「あいつら、いつも問題ばかり起こしているね」

 「そうですわねぇ…… 明日は予定通りに出発してくれるのかしら?」

 「どうかな……」

 「……はぁ、どうしましょう」

 それから、ターナとスレイブはしばらく鏡を見ながら、別荘の様子を覗いていた。
 すると、スイが戦車を離れ一人で別荘を後にするのが伺える……
 正秀とマヨーラは数時間前に別荘へと入って行ったみたいであった。

 「あらぁ、奴隷のどこへ行くのかしら?」

 「街の方じゃないかな」

 「そのようですわねぇ」

 「ねぇ、母さん……」

 「どうしました? スレイブ」

 「母さんは、タメツグのことを評価していたみたいだけど?」

 「あら? そうだったかしら? うふふ」

 「違うのかい?」

 「どうかしらねぇ……」

 「……少し、試してみたいのだけれど」

 「試す?」

 「そう」

 「……そうですか、スレイブに考えがありますのね。分かりましてよ」

 「うん、それなら奴隷の所に行こうか、母さん」

 「…………」

 そして、2人は使い魔にスイを追わせると、それを頼りにスイの元へと向かうのであった。

 ※  ※  ※  ※  ※

 ―― 同じ頃

 スイは泣きながらレオパルト2のハッチをゴンゴン叩いてた。
 手か血が出るほど叩いているので、運転手ハッチの付近が赤くなっている。
 さすがに可愛そうだと思う正秀とマヨーラは、スイを止めようとするのだが……

 正秀はスイに近づいて言う。

 「スイちゃん、その辺にしとくんだ」

 「嫌です! うわぁぁぁん……」

 「いくら泣いても出てこないわよ」

 「うえぇぇぇぇぇん…… ぐすっ」

 「……困ったな」

 「ええ……」

 言うことを聞かず泣いてばかりのスイに、正秀とマヨーラはちょっと困ってしまう。

 「どうするの? マサヒデ」

 「うーん、どうしたものか」

 「無理矢理に為次を引き摺り下ろしたらどう?」

 「無理に出しても、余計に拗ねるだけだろ」

 「はぁ…… ほんとに、鬱陶しい男ねタメツグは」

 「まあ、腹が減ったら自分から出て来るだろ。多分」

 「そうねぇ、しばらくそっとしておいた方がいいのかしら?」

 「そうだな。そもそも、コイツ等なんでケンカしてるのか、よく分からないんだぜ」

 「……それじゃあ、晩御飯の準備でもしようかしら。出て来る頃には、お腹も空いてるでしょうしね」

 「ま、そうするか」

 ケンカしてる二人を今どうこうしてもらちが明かないと判断した正秀とマヨーラは、しばらく時間を置くことにした。
 壁の穴からロビーへと戻るとマヨーラは夕食の準備を始め、正秀はテーブルの上に大剣を置き悦に浸るのであった。

 ……………
 ………
 …

 残されたスイは日が暮れるまで、泣きながら運転手ハッチを叩き続けていた。
 しかし、さすがに疲れてきたのか叩くのをやめると、悲しそうにレオパルト2を見つめているのであった。

 「うぇ…… ぐすっ……(ご主人様に嫌われてしまいました。スイはもう必要ないのでしょうか…… スイが居ると、ご主人様に迷惑が掛かるでしょうか? それなら……)」

 スイはそっとレオパルト2に触れながら呟く。

 「ご主人様、大好きですよ…… たった数日の間でしたがスイはとても幸せでした……」

 そして、その場を後にすると街の方へと向かうのであった。

 しかし、車内に居る為次はそんなスイの気持ちなど露知らず、気持ち良さそうに寝ていた。
 外がうるさいのでイヤホンをしながらタブレットでゲームをしていたのだが、途中で飽きて寝てしまったのだ。
 麻雀ゲームをやっていたのだが、やはりCPU戦はイマイチ燃えない。
 麻雀は対人戦に限るのだ。
 だが、為次は麻雀の役をあまり知らないし、点の計算方法も分からない。
 だから、遊ぶのはもっぱらオンライン麻雀なのだ。
 しかし、この世界ではインターネットに繋がらないので、仕方なくCPU戦をプレイしていたのだが、やっぱり面白くないので寝てしまった。
 尚、喰いタンと役牌さえ分かっていれば、なんとかなると為次は思っているのだ。

 そんな、お休み中の為次であったが、再びハッチをゴンゴン叩く音で目を覚ました。
 しぶしぶ、ペリスコープを覗くと正秀が外で何か言っている。

 「んもぅ、うるさいなー」

 そう言いながら、為次はハッチを開け頭を出した。

 「おっ、出て来たか」

 「ご飯できたの?」

 「ご飯はできてるわよ」

 「じゃあ、そろそろ食べにいくかぁ」

 「それより、スイちゃんはどうした?」

 正秀に言われて為次も辺りを見回すが姿が見えない。

 「スイ? 知らんよ、家に居ないの?」

 「家の中には居ないぜ」

 「ふーん」

 「タメツグと一緒じゃないの?」

 「じゃないよ」

 「……何処へ行ったんだ、スイちゃん」

 「まあ、そのうち帰って来るでしょ。それより、ご飯食べよ」

 「探さないのか?」

 「めんどくさいし、お腹が空けば帰って来るよ」

 「奴隷が勝手に何処かに行くって…… ありえないわよ? 帰って来なかったらどうすんのよ……」

 「そん時はそん時だよ、本人が帰りたくなければ、帰らない方が幸せってもんでしょ」

 「お前、本気で言ってるのか?」

 「本気も何も、彼女の自主性を第一に思ってだねー。うんうん」

 「帰りたくても、帰れないかも知れないじゃないの!」

 「そうだぜ、お前に迷惑が掛かると思って出て行ったとしたら、帰って来ないかも知れないぜ」

 「別に俺は気を使ってくれなんて、一言も言っとらんよ」

 「為次がそう思っていても、スイちゃんは違うだろ!」

 「はいはい、分かった、分かった。そんなに興奮しないでよ…… んじゃ、俺はどうすればいいの?」

 「探しに行って連れて帰るに決まってるだろ!」

 「そう…… そんで、連れ帰ってどうするの?」

 「どうするって……」

 「仮に俺達が明日、日本に帰れるとしたらどうするの? 当然スイは置いて行くよね? まさか連れて行くの?」

 「…………」

 「まあ、アレだは。スイが自分から出て行ったならいい機会だよ。仲良くなり過ぎてから別れるよりはね」

 「…………」

 「ねぇ、タメツグ。あなた本当にそれでいいのね?」

 「そうだよ、マヨーラだってそうでしょ」

 「え?」

 「マサと仲良くなりたいのもいいけど、俺達は違う世界の人間だ。それは分かっておいてよ」

 「……で、でも」

 「ん? でも何?」

 「でも、30年前の異世界から来た冒険者だって、今はこの世界で結婚して幸せに暮らしてるわ!」

 「……そう、俺達にもこの世界で暮らせと?」

 「べ、別にそうは言ってないけど……」

 「なんの為に怪しいナノマシンの移植までしたと思ってんの? スイを世話する為か? それとも大剣を使う為か?」

 「お、おい…… 為次……」

 「誰がなんと言おうと帰る為なんだよ! それが、何百年、何千年先になってもだ! マサがここに残りたいなら、勝手にすればいい。だけど指輪だけは俺に預けといてよ。必ず届けるから……」

 「「…………」」

 「スイは自分の意思と判断で出て行った、それだけだよ……」

 「ああ、分かったぜ為次」

 そう言いうと、正秀はポケットから婚約指輪の入ったケースを取り出した。

 「じゃあ、これは頼んだぜ。俺はスイちゃんを探してくる」

 「……うん」
 
 正秀は婚約指輪の入ったケースを為次に渡そうとするのだが、為次は受け取らなかった。
 仕方ないので頭を出しているハッチの前にそっと置いた。

 「…………」

 為次は目を反らして何も言わなかった。

 「頼んだぜ。行こうぜ、マヨーラ」

 「え、ええ……」

 マヨーラは為次を睨みながら言う。

 「タメツグ…… あんた、本当に最低の男ね……」

 「…………」

 為次は黙って手を振った。

 「行ってくるぜ」

 「じゃあね、おバカさん」

 そして、2人は為次とレオパルト2を置いて、街の方へと向かって行くのであった。
 そんな、正秀とマヨーラに為次は後ろから声を掛ける。

 「あ、あの……」
 
 正秀は振り返ると言う。
 
 「なんだ? まだ何かあるのか?」

 「どこに探しに行くの?」

 「とりあえず街の方に行ってみるぜ」

 「うん……」

 為次はレオパルト2のエンジンを始動させると、正秀とマヨーラに近づいた。

 ブロロロ……

 「近くまで送って行くよ」

 「ん? そうか、じゃあ頼むぜ」

 「ほんと、素直じゃないのね…… タメツグ」

 「…………」

 正秀とマヨーラが砲塔に登ると、為次はレオパルト2を走らせ始める……

 為次は面倒臭いのが嫌いだ、何よりも嫌いだ。
 人と人の付き合いなんて、面倒臭い出来事の代表格だ。
 それならいっそ嫌われて、誰からも相手にされない方がマシに決まっている。
 誰とも仲良くならなければ辛い思いなどしなくて済むのだ。

 それは分かっているし、今までだってそうしてきたはずだ……

 人との応対など上辺だけの適当なセリフでじゅうぶんなのだ。

 それでも、何故か胸が苦しかった。
 だから2人を砲塔に乗せて為次は街へと戦車を走らせるのであった…… 
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