異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 1章

第48話 必殺技伝授

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 ガザフ邸を出てから川を覗いてみた為次は、他は特に寄らず戦車まで戻って来た。
 少しばかり、当てにしていた次元を裂く装置とやらが、既に消滅済みだったのでガッカリしていたのだ。
 それに、スイが隠し事をしていたのも少し気になる。
 だから、何処かへ遊びに行く気にもなれず、真っ直ぐに戻って来た。

 そして、レオパルト2に乗り込むとエンジンを始動させ、一人考え事をしながら借家への帰路へと就く。

 「うむむ(うーん、骨折り損だったは。
 だけど、あの感じだと次元の裂け目とやらが直接地球と繋がってるとは考え辛いかな……
 考えたくないけど。
 地球もこの星も動いている訳だし、30年間ずっと同じ位置に裂け目が重なり合い続けるとは思えんわ。
 あ、でも、ちょっと待てよ……
 地球とこの星が次元だけ違う同じ場所で重なり合ってるとしたらあり得るかなぁ。
 ここは次元だけ違うもう一つの地球ってね。
 それなら、帰れる希望も持てるかもっせん。
 あーいやいや、でもでも、ガザフがこっちに穴を開けてなかったらどうなってた?
 超次元振動弾が開けただけの穴に入ったらそこは行き止まりなのか?
 うーん、あり得んような気がする……
 そんな気がするぞい。
 そもそも、直接繋がってるとしたら30年前の奴と入口が一緒じゃないとおかしいよなぁ……
 30年前にも同じ場所に穴を開けたのか?
 それとも超次元振動弾は関係なくガザフの使った装置のせいで、30年間あの中学校に穴が開きっぱなしだったとか?
 そんなだったら、神隠し事件とかモリモリになっちまうわ! あるかいな。
 うー…… やっぱ、考えたくないけど、30年前の奴とは入口は別だけど、一旦同じ次元空間みたいなのに入ってからガザフの穴に落っこちたと考えるのが妥当かな……
 はぁ…… それだと、超次元振動弾を作れたとして、もっかいその空間に入れても地球に帰れるのは……
 あーやめやめ、今考えるのはやめよう、ワケワカランし、そうしよう。
 あれだわ、お腹も空いたので早く帰ろう、そうしよう。
 でもなー、スイご飯作ってくれるかな…… 怒ってたからなぁ)」

 そんな、考えてもどうしようもないことを考えながら、為次は借家へとレオパルト2を向かわせるのであった……

 ※  ※  ※  ※  ※

 借家に戻ると、正秀はまだ庭で大剣を振り回していた。
 ターナとスレイブの姿は見当たらないが、マヨーラは一人で退屈そうに正秀を眺めている。

 為次は玄関先に戦車を駐車すると、降車して正秀の方へと向かって行った。

 「なんだ、もう戻って来たのか」

 「うん」

 大剣を振り回すのをやめた正秀を見ると、マヨーラも近づいて来た。

 「あら、早かったのね」

 「うん」

 「どうしたの? なんだか元気ないわね」

 「うーん、そうかなぁ……」

 「なんかあったのか?」

 「なんもないよ、マジでなんもなかった」

 「本当に何も無かったのか?」

 「うん」

 「そうか、何も無かったか…… 欲しかった物も無かったんだな」

 「あぁ…… うん……」

 「欲しかった物? 何が欲しいのよ」

 為次はマヨーラの質問には答えず、正秀の方を振り向く。
 お互いの目が合う……

 「「…………」」

 「別に俺に気を使う必要は無いぜ、為次」

 「うん」

 「ちょっとぉ、なんなのよ……」

 「ところで、ターナとスレイブは?」

 「帰ったわよ」

 為次はそれを聞くと、今度はマヨーラの方を振り向いた。

 「な、何よ…… 」

 「…………」

 「私がいちゃ悪いの!?」

 「いや、別に」

 「なんか、腑に落ちないわね……」

 そんな、不満そうなマヨーラを横目に正秀は突然ドヤ顔で言う。

 「なーなー、それより、ちょっと見てくれよ為次。へへっ」

 「へ? 何を?」

 「スレイブに特訓してもらって、必殺技ができたぜ」

 「は? 必殺技って……」

 「まー、見とけって」

 正秀はそう言うと、少し離れてから大剣を構えた。

 「大丈夫なの…… マサ」

 「黙って見てなさい、カッコイイわよ」

 「へいへい」

 正秀は大剣を正面に構えた状態から、大きく上に振りかざし神経を集中させるかの如く呻り始めた。

 「はああぁぁぁ……!」

 そして、叫びながら大剣を思いっ切り振り下ろす!

 「必殺撲殺滅殺斬ヒッサツボクサツメッサツザン!!」

 超カッコイイ必殺技名が借家の庭に木霊した。

 「はぁりゃっ!」

 掛け声もヴァッチリ決まった! 決まったのだ! 決まったはずだ!

 そんな、正秀の間抜けな演出を見る為次は、とうとう狂ったかと思いながら呆れ顔をしていた。
 しかし、その必殺技の威力をの当たりにするとマジで驚愕するのだ。

 正秀がマヌケなセリフを叫びながら大剣を振り下ろすと、凄まじい音と共に衝撃波が発生した。
 あまりの威力に、空気を震わせる振動が目で確認できるほどだ。
 衝撃波は大剣から放たれ、凄い勢いで真っ直ぐに進んで行く。

 ドカーン!!

 借家の壁にぶち当たってしまった。
 周囲に埃が舞い上がり、視界が遮られる……

 「す、すげぇ……」

 正秀の自称必殺技を見た為次は、予定通り驚愕した。

 「ふふん、どう? 凄いでしょ」

 「う、うん…… なんでさつを3回も入れたし……」

 「……そうね」

 「しかも、撲殺って…… 意味わかんない、アレ殴ってるわけ? でも、最後に斬とか言ってるよね?」

 「……そうね」

 正秀は自慢げに大剣を大地に突き立て、両足を開き、柄の頭に両手をのせてナイスなポージングを取っている。
 しかし、大剣がデカ過ぎて両手が自分の頭より上にあるのでダサイのだが、そんなことはお構いなしだ。

 「決まったぜ……」

 ……舞った埃が収まってくると、衝撃波の飛んで行った先の視界が開けてくる。

 再び為次は驚愕するのだ!

 「ひ、ひでぇ……」

 「……そ、そうね」

 借家の壁に人が入れるほどの大きな穴が開いており、中のロビーが丸見えになっている。
 壁を突き破った衝撃波は外壁など容易たやすく貫通し、ロビーの床にもその威力の爪痕を残していた。

 「なんで、家に向かって撃ったし……」

 「……そ、そ、そう……」

 「やべぇぜ……」

 3人は無表情で静かに壁の穴を静観していた。
 静観しているので、静かなのは当たり前だが。
 その時であった、その穴に人影が見えた。

 「……うぐ、スイ」

 スイが壁の穴から顔を半分ほど覗かせて、為次を睨んでいる……
 為次が帰って来たので、出迎えるかどうか迷っていた。
 しかし、ご主人様をバカ呼ばわりしたのを気にして、出るに出られなかったのだ。
 だから、ロビーでうろうろしながら外の様子を伺っていたのだが、そこへイキナリ衝撃波が飛んで来て壁をぶち破ったのだ。

 「うぅぅぅぅぅ……」

 スイは為次を睨みながら何か呻っている……

 為次は面倒臭いのが嫌いだ、何よりも嫌いだ。
 なぜなら面倒臭いからだ、そうなのだ。
 面倒臭いのが嫌いだから、友達も彼女も要らないし、結婚などもってのほかだ。
 両親が死んだ時だって悲しくはあったが、老後の面倒なくていいや、なんても思ってみたものである。
 それなのに、今ここには面倒臭い連中しか居ない。
 頭のおかしな魔法少女2匹に脳筋バカが1匹だ。

 もう、ウンザリであった……
 それに、ちょっと疲れてるし。

 だから、為次はプイと横向いた。

 「ふん」
 
 ご主のその仕草を見たスイは驚愕する。

 「は、はわわわ……」

 「おい、為次」

 「ちょっと、タメツグ」

 「なんすかぁー」

 「スイちゃん、泣きそうだぞ」

 「あ、そう」

 マヨーラも何か言いたそうではあるが言葉が思い浮かばない。

 「あそう、って……」

 為次は黙ってレオパルト2の方へと歩いて行くと、運転手ハッチを開ける。
 電動スライドドアなので開け閉めは簡単だが、砲塔が邪魔で出入りがし辛い。
 でも、がんばって中に入った。

 そして、戦車の中に閉じ籠ってしまった……

 「為次……」

 「あーあ…… 拗ねちゃった」

 「うーん、どうしたものか……」

 為次が戦車に閉じ籠ったのを見たスイは、正秀とマヨーラの所に慌ててやって来た。

 「あうぅぅぅ、ご主人様はどうされたのでしょう? うえぇぇぇ……」

 スイは目に涙を溢れさせていた。

 「たまには、一人になりたい時もあるってもんだぜ。スイちゃん」

 「私は一人は嫌なのです! ご主人様と一緒がいいのです!」

 「あんたが、あんまりアイツに迷惑ばかりかけるからよ」

 「スイは迷惑なんてかけていません! ……ですよね?」

 「なんで疑問文なのよ」

 「はうぅぅ…… うえぇぇぇん…… ごじゅじんざばー うぇぇぇ、うわぁーーーん」

 とうとう泣き出してしまった。

 「スイちゃん……」

 「あーあ…… 泣いちゃった」

 「うーん、どうしたものか……」

 スイはレオパルト2に近づくと、運転手ハッチを叩き、泣きながらひたすら謝り続ける。

 「ごべんなさーい、うえぇぇぇん…… うわぁぁぁん…… ご主人様ぁぁぁ! 許してくださぁぁぁい、うわーん……」

 スイのバカ力でもレオパルト2の装甲はビクともしない、当たり前だが。
 それでも、ゴンゴン叩かれると車内に響く。

 そんな、煩い車内で為次は思うのだ……
 
 お腹空いた……

 と……
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