異世界に吹っ飛ばされたんで帰ろうとしたら戦車で宇宙を放浪するハメになったんですが

おっぱいもみもみ怪人

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異世界編 1章

第47話 紅茶

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 上級国民区画へと向かう為次は一人、戦車で借家を出発した。
 今日は車体を軽くしてないので、少しばかり燃費が不安ではあるが、屋台街までは近いので大丈夫だろうとは思った。
 もっとも、給油の目処めどが立っていない現状では、何が大丈夫なのか分からないが……
 それでも、歩くのは面倒臭いので大丈夫だと思うことにした為次であったのだ。

 そして、戦車をいつもの場所に駐車し、街中を歩いていると自分の壊した屋台や石畳が急ピッチで修復されている。
 奴隷も借り出され、街はいつもとは違う賑わいを見せていた。

 そんな光景を眺めながら歩く為次は思うのだ。

 せっかくだから、もっと広げとけ、ボケ。

 と。

 実際のとこ、屋台は全て少し後ろに下げて修復されており、為次の思っているように道幅は拡張されていた。
 これは、レオパルト2が通れるようにとのニクミの指示であったが、為次は知る由もない。

 そんなこんなで、頑張って歩いた為次は上級国民区画までやって来た。
 目的は大きな屋敷のガザフ邸だ。
 途中、いつもの門のない門兵が居たが入場証を「ホレホレ、ウリウリ」と顔面に押し付けたら、歯軋りをしながらこころよく通してくれたのだ。

 そして、ようやくガザフ邸の玄関まで辿り着いた為次ではあるが、扉の前で重大な問題を発見してしまった。
 なんと驚くことにピンポンが無い。
 輪っかの付いたコンコンするのも無いし、メイドさんも居ない。
 まったくふざけた玄関扉である。

 うーん、なんだこの扉は…… しかも、誰も居ない……
 まあいいや、勝手に入ろう。

 少々立ち尽くし、為次は考えた。

 「入るよーん」

 そう言いながら、ドアノブに手を掛けようとした時であった。
 ガチャりと内側から扉が開かれると、メイドさんが出て来た。

 「いらっしゃいませ、タメツグ様。ご主人様がお待ちです」

 まるで来るのが分かっていたかのように、お出迎えされるのだ。

 「あ、はい…… えっと、カメラ、カメラ……」

 今度こそ、写真を撮ろうと思ったら為次だが、繋がらないスマホを持っていても仕方がないので、戦車に置きっぱなしなのを思い出した。

 チキショー、また忘れてしもーた。

 と後悔した。

 仕方ないので、今回も写真は諦めて普通に屋敷の中へと通してもらうことにした。
 暗い通路をメイドさんに連れられて歩くと、一室に通された。
 そこは、闘技場のある部屋でもなく、食堂でもなかった。
 テーブルとソファーが置いてある応接間のようだ。
 ソファーの真ん中にガザフが1人座っている。
 周りには他に誰も居ない……

 為次が応接間に入ると、ガザフはこちらを振り向き言う。

 「やあ、タメツグ君。よく来たね」

 「あ、はい、どうも」

 「カーラ、もう下がっていいよ」

 「はい、ご主人様」

 返事をするとメイドさんは応接間から出て行ってしまった。

 「まあ、タメツグ君、座りなよ」

 「あいあい」

 為次は適当に返事をしながら、ガザフの向かいのソファーに座った。
 だけど、ソファーの端っこに座った。
 電車に乗るにも、牛丼屋のカウンター席に着くにも端が良いのだから。

 「それで、どうしたのかな?」

 「え?」

 「僕に用があって来たんじゃないのかい?」

 「そうだよ」

 「何かな?」

 「えっと、とりあえず、俺が来るのが分かってたの?」

 「ああ、君達を監視しているのはターナ達だけじゃないからね」

 「へぇ、そういう……」

 「使い魔だよ、使うのは鳥が多いけどね」

 「そうなんすか…… それは、まあいいや」

 「そう……」

 「めんどくさいから率直に言うけど、次元を裂く装置ちょーだい」

 「……唐突だね」

 「手記に書いてあったやつ、雪山で拾ったとかっての」

 「残念だけど、無理だよ」

 「なんで?」

 「もう使ったから」

 「えー…… 使ったって……」

 「君達が辿り着いた、桃色の花を咲かす木の所でね」

 「あの桜の木のとこで?」

 「あの木はサクラって名前なんだね」

 「知らなかったの?」

 「うん、以前の僕から装置を授かって直ぐに使ったんだが、30年前の冒険者が来た時に、一緒にこの世界へ現れたモノだからね。特に木の名前までは気にしていなかったよ」

 「そう…… それで、装置はどうなったの?」

 「消滅したよ」

 「マジすか……」

 「あの装置で帰ろうと思ったんだね」

 「そうだけど……」

 「1つだけ偶然に拾ったらしいからね。手記に書いてあっただろう?」

 「1つとは書いて無かったけど……」

 「残念だけど、僕は1つしか受け継いでないよ」

 「うーん…… でも、次元はまだ開いてるってことかなー」

 「それでも帰れないと思うよ」

 「なんで?」

 「使うときに、設定で【入るIN】と【出るOUT】があって、もしかしたら何か召喚できるのかな? と思って【出るOUT】で使ったから」

 「マジかよ…… じゃあ、俺達がこの世界に飛ばされたのってガザフのせいかよ」

 「それは、違うんじゃないかな…… もし、僕が次元の扉を開いていなかったら、迷い込んでしまった謎の空間で君達はずっと出られなかったんじゃないのかな?」

 「謎の空間ねぇ…… そういう考えもあるかな……」

 「…………」

 「まあ、無くなったものは仕方ないか……」

 トン トン トン
 
 その時だった、誰かが応接間の扉をノックした。

 「どうぞ」

 ガザフが返事をすると扉が開きメイドさんが入って来た。

 「失礼します、お茶をお持ち致しました。ご主人様」

 「ああ、ありがとう」

 メイドさんはガザフと為次の前にティーカップを置くと、ポットから紅茶を注ぐ。
 なんの紅茶か分からないが、とても素敵な香りが応接間に漂う。

 為次は注がれた紅茶を見ながら、メイドさんに話しかけてみる。

 「えっと、カーラさんって言ったよね」

 「はい?」

 「ガザフとは付き合いは長いの?」

 「ご主人様とですか? もう千年位だっかと思いますが」

 「そう…… 前に転生を受けたのは?」

 「確か3年前でした」

 「何回目?」

 「3回目とお聞きしております。自分では覚えていませんので……」

 「やっぱり300年ちょっと位か……」

 「そうだね、転生で耐えれるのはその位だよ」

 「ありがと、カーラさん」

 「はい、では失礼します」

 そう言ってカーラは一礼をすると応接間を出て行った。

 「サーサラさんも300年位ってマヨが言ってたし……」

 「君達はまだまだ時間があるから大丈夫だよ。僕はもう時間が無いけどね……」

 「うん…… それで、サーサラさんは? どうなったの?」

 「彼女か…… 彼女は王宮に送ったよ」

 「え? 転生するって言ってなかったけ?」

 「ギルドの受付嬢がチグハグなことを喋っても困るしね。それに、完全にバーサーカー化していたから」

 「バーサーカーになると転生できないの?」

 「できないことはないけど、殆ど別人になってしまうんだ。その場で作られたような、適当な記憶しか持たない」

 「はぁ…… めんどくさいね」

 「そうだね」

 為次はメイドさんの淹れてくれた紅茶を飲んでみる。
 ほんのりと甘くて、透き通るような香りが咽に染み渡る。
 とても美味しい紅茶だ…… しかし、相変わらず何か分からない……
 食物プラントを見学した後なので、それは、仕方が無いとは思う。
 だが、魚をマヨーラが知らないのが気になっていた。
 だから、それについても聞いてみることにしたが、あまり期待できそうにもない。

 「ねぇ」

 「次は、何かな?」

 「魚…… 知ってる?」

 「知ってるよ、お酒を飲む時のおかずだよね」

 「やっぱりそうなるんか……」

 魚と肴は同音異義語になる。
 だが、それはあくまでも日本語の単語によるものだ。
 この世界の人間には実際どのように聞こえているのか気になる。
 しかし、今はどうでもいいことなのでそれについてはスルーすることにした。

 「ん? 違うのかい?」

 「違うよ。海や川で水の中を泳いでる生き物だよ」

 「タメツグ君は何を言っているのかな?」

 「は?」

 「海や川に生き物なんて居ないよ」

 「はぁ? どういうこと?」

 「どうと言われても…… 居ないものは居ないから説明のしようがないね」

 「マジかよ……」

 期待できない返答は、更に意味不明な返答だった。
 水の中に生き物が居ないなど、普通ならば考えられない。

 「食物プラントのリストの中にはあったよ、お魚。削除してあったけどね」

 「ふむ……」

 「復元して一匹ほどデカイ魚を出しといたよ。気持ち悪いから置いて帰ったけど」

 「そうなのかい…… では、それに関してはこちらでも一応は調べておくよ」

 「どうでもいいけどね……」

 「まあ、僕も気になるからね」

 「じゃあそれはいいとして、最後にもう一ついいかな?」

 「どうぞ」

 「3枚目の手記って何?」

 「ああ、アレか」

 「スイが欲しがったんだが」

 「君の奴隷はアレを読んだんだね。スイは君に何も言わなかったのかい?」

 「特には……」

 「本人に聞くのがいいと思うけど…… アレは魔力のある人にしか読めないようにしてあるからね」

 「なんでまた……」

 「スイ宛の手紙だから、君達にはあまり関係の無いことが書いてあるんだよ」

 「そうすか……」

 ティーカップの中には、まだ半分ほど紅茶が残っている。
 為次はその紅茶を飲み干すとソファーから立ち上がった。

 「そんじゃ、どうも」

 「もう、帰るのかい?」

 「そうね、スイも怒ってるし」

 「奴隷が怒ってるんだ……」

 「明日にはサイクスを出るよ、知ってると思うけど」

 「ああ、ターナからの依頼だね」

 「うん、場合によっては直ぐに帰って来ないかも」

 「サダムネ君のことについては聞かないのかい?」

 「明日には会う予定だから、いっかな」

 「そうか…… それでは道中気を付けてね」

 「うい」

 「君達には期待しているよ。とりあえず、モノポールリングになんとかして辿り着いて欲しいんだ」

 「何があるっての?」

 「本当に分からないんだ…… それでも、今の状況を変えるにはもうあそこしか無いような気がするんだよ」

 「気ね…… ま、いっか……」

 「…………」

 「んじゃ」

 「またね、タメツグ君」

 「はいはい」

 そして、為次はガザフ邸を後にした……

 ※  ※  ※  ※  ※

 その帰り道に、川の中を覗いてみた。
 ガザフの言うように、魚も貝も居ない。
 透き通る綺麗な水に、小魚一匹たりとも見当たらないのだ。

 只、水が流れるだけの綺麗な川は不思議な感じで、何処となく不気味であった……
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