53 / 183
異世界編 1章
第46話 依頼その2
しおりを挟む
その日の朝、為次はベッドの横に腰掛け考え込んでいた……
同じベッドでは、スイがまだ可愛い寝息を立てながら寝ている。
一人で寝るのは怖いからと、布団にもぐり込んで来たのだ。
寝ている間も離れたくないのだろうか? 今も為次の袖を掴んだままで寝ていた。
スイはとても可愛い、少し頭が弱いが気立てもいいし、とても良く尽くしてくれる。
普通の男性ならば、こんな女の子が彼女になってくれたなら嬉しい限りであろう。
自分だって女が苦手ではあるが、嫌いではない、彼女になって欲しいに決まっている。
それに、スイは自分のことを好きなのは間違いないはずだ、それも分かっている。
だから、この娘を彼女にしたいと思うのも当然の考えだった。
だが、それは誤りだと思う…… そんなスイの好きと言う思いは、多分、愛とは違うのだから。
長年いたぶられ続け辛い思いばかりして来た女の子が、突然に優しくしてくれる人に巡り会えたならば、好きという感情が芽生えるのは当然だろう。
もちろん、それは愛などではない。
錯覚しているだけなのだ。
人の思考など、単純で曖昧なモノである。
それに、感情的なことより、もっと大きな問題がある。
いずれ自分たちは帰るつもりだ…… 違う世界に……
そんな場所に、この世界の人間を連れて行ける分けがない。
生まれ故郷を捨て、二度と帰ることのできない場所に付いて来いなんて到底言える分けもないのだ。
などと、思ってはみるものの、それも只の言い訳に過ぎないかも知れない。
本当はただ単に、面倒臭いだけなのだ。
女とは我儘で自分本位な考えを持ち、ヒステリックで手に負えない。
一時の感情で付き合ったところで、すぐに別れるはずだ。
結婚しても離婚するに決まっている。
離婚しない人々は子供と言う口実があるに過ぎない。
つまり、女とは面倒臭い生き物なのだ。
面倒臭いのは嫌いだ…… でも、エロイのは好きだ。
だから為次はスイに手を出すことはなく、見つめるだけであった。
布団を捲るとシースルーのスイのパジャマ姿が悩ましい。
つまり、スイをオカズにさせてもらったので、為次は無ノ境地に達して下らないことを考えていたのです。
先程、手を出していないと言ったが、おっぱいは少々揉ませていただいた。
ちょっとくらい、ええやろ的な考えで。
そんなバカなモーニングを迎える為次の所へ……
バタン!
突然、部屋の扉が開くと、正秀が豪快に入って来た。
相変わらず節操の無い奴だ。
「おい! 為次」
「なんでおじゃるか? 我は悟りを開いたのぞよ」
「そんなことはどうでもいいから、ちょっとロビーに来てくれ」
「いやどす」
正秀が大声で話すのでスイも目が覚めたようだ。
「はぁぅ、おはようございます、ご主人様ぁ」
「うむ」
「スイちゃんおはよう、為次を借りて行くぜ」
「はう?」
「早く来い、ターナ達が待ってるんだよっ」
「ターナが来てるの? でも、今日はもういいんだけど……」
「何がいいんだよ! 訳の分からないこと言ってないでさっさとしろ」
「どうかしたの?」
「なんでも、俺達に依頼があるんだとよ」
「しょうがないにゃー」
為次はしぶしぶベッドから立ち上がるとロビーへ向かうのだ。
そんな部屋から出て行く主を見るスイ。
「おっぱいのとこがベトベトするのですぅ」
「朝から変なとこにぶっかけてんじゃねーよ」
「へーい……」
そして、為次と正秀はスイを残し部屋から出て行った……
※ ※ ※ ※ ※
正秀に連れられ、ロビーへ行くと例の3人組がソファーに座っていた。
テーブルの上の大剣の上には、マヨーラが淹れたのであろうお茶が3つと、箱が置かれている。
「あら、タメツグおはよう」
挨拶をするターナ。
「うん」
「スッキリした顔してんな」
スレイブは言った。
「まあね」
為次はテーブルに近づくと、マヨーラの前に置かれているお茶を手にする。
「ちょっと……」
「いいじゃない、別に」
そう言うと、為次はマヨーラのお茶を飲むのだ。
「しょうがないわねぇ……」
「それで、依頼って?」
「ええ、これを見てちょうだい」
そう言うとターナは大剣の上にある箱を開ける。
為次は箱の中を覗き込んだ。
「青い石…… だね」
「マサヒデには説明しましたけど、これは高純度エレメンタルストーンですわ」
「へー」
「これをポンタの街に居る、サダムネに届けて欲しいのですわ」
「うん」
「俺は承諾したが、為次の意見も聞こうと思ってな、それでお前を呼んで来たんだ」
正秀は言った。
「別にいいんじゃない、ターナ達にはお世話になってるし、俺なんかの意見は要らないでしょ」
「そうだな。だが、一応お前は仲間だからな」
「うん……」
「それから、お気遣いは無用ですわ。報酬も出しますので」
「そうすか」
「10万ゴールドですわ。本当はもっとお支払いしたいのですが、街の修復費用もありますの」
「え?」
「あなたが破壊した屋台街や石畳ですわ。サーサラを捕まえた報酬と合わせてもっと出したいのですけれど、さすがに損害が大き過ぎまして……」
「うーん、そっか、じゃあ断れないね。でも、ニクは? 何もしてくれないの?」
「ニクミ様も修繕費を工面して下さいましたわ、それらを差し引いて10万ゴールドですの」
「分かったよ、で、ポンタって遠いの?」
正秀は答える。
「距離なら100キロ以上みたいだぜ」
「そっか、1日あれば行けるね」
「おう、そうだな」
「では、引き受けて下さいますのね?」
「ま、こちらも要望あるけど」
突然に要望などと言い出した為次に向かってスレイブは言う。
「要望の出せる立場かよ」
「どうかなー?」
「要望ですの…… それは、どのような?」
「行くのは明日以降、それと上級国民区画の入場証をちょうだい」
「入場証を?」
ターナは訊き直した。
「うい」
要望という程のことではないと、スレイブも思う。
「なんだ、そんなことでいいのか」
「いいよ」
「入場証…… ですの。どこか行かれますの?」
「ちょっとね」
「……分かりましたわ。それは直ぐに発行致しますわ」
「そりゃ、どうも」
「なんだ為次。そんなに上級国民区画が気に入ったのか?」
「まあね、静かでいいとこだし、街を出る前に散歩でもしようかと思って」
「なるほどな」
「では、依頼の件。お願い致しますわ」
「任せといてくれ」
正秀は依頼を引き受けた。
そこへ着替えたスイもやって来た。
賢者タイムが終わっていた為次は、スイを見るとちょっと後ろめたい気分になったのだが、アレは男の性だと割り切ったのでした。
「皆様、おはようございます」
「やあ、スイちゃんおはよう」
「ようやく起きたわね」
正秀とマヨーラはスイを見ると言った。
「はい、直ぐに朝食の準備をしますね」
「ターナ達も食べて行くだろ?」
正秀は訊いた。
「せっかくですので、頂きますわ」
「おう、スイちゃんみんなの分も頼むぜ」
「分かりましたです」
スイは早速、朝食の準備に取り掛かる。
するとスレイブはマヨーラを振り向いて言う。
「なあ、マヨーラは作らないのか? 朝食」
「なんで、私が作るのよ」
「料理するんじゃなかったのか? さっきそう言ってたろ」
「う…… 言ったけど……」
マヨーラはマサヒデをチラリと見る。
「そ、そうね、私も作るわ……」
「マサの食事を作らないとねー、うひひ」
「うっさいわよ! タメツグ」
マヨーラも台所の方へと行ってしまった。
「なんだ、お前らそう言う仲なのか? マサヒデ」
スレイブは正秀に訪ねた。
「いや、そうでもないが」
「ふん、まあいいか」
そうして、マヨーラとスイの作った朝食を皆で食べるのであった。
朝食の最中に為次は約束の入場証をターナにせがんだ。
特別な用紙が要るのかと思ったが、適当な紙にターナ直筆の入場許可を記載した文とサインで大丈夫らしい。
だから、直ぐに入場許可証は貰えた。
……………
………
…
食事が終わると、さっそく為次は上級国民区画へと向かおうとするのだ。
「じゃあ、俺は上級区画に行くお」
「なんだ? 一人で行くのか?」
正秀はてっきりスイと一緒に行くのだと思っていた。
「うん」
「スイも行くのです」
「スイはお留守番ね」
「スイも行くのです」
「ダメなのです」
「行くのです!」
「ダメ」
「むー! ご主人様と一緒がいいのです!」
「ダメ」
「……みゃぁーぁぁぁ、うえぇぇぇん……」
等々スイは泣き出してしまった。
それでも為次は頑なに拒否する。
「ダメ」
「ご主人様のバカー」
スイは叫びながら、為次の部屋へと駆け込んでしまった……
それを目で追いながら正秀は言う。
「連れて行ってやればいいだろ……」
「ダメ」
「はぁ…… なんでだよ」
「ダメ」
「はぁ、分かったぜ、好きにしな……」
「うん」
「んじゃ俺は何をしようかな」
「それなら俺が稽古をつけてやるぜ」
「ほんとか!? 頼むぜスレイブ!」
「おう、任せときな、この前約束したしな」
「やったぜ。それじゃ、今日はそれぞれ自由行動で、明日の朝一でポンタへ向かうぜ」
「りょかーい」
そんなこんなで、正秀はスレイブと大剣の稽古をすることとなり、為次は上級国民区画へと向かうのであった。
レオパルト2を軽くしたい為次であったが、スイがふて腐れているので今回は諦めた。
マヨーラとターナはスイが閉じ籠ってしまったので、昼飯とかの正秀とスレイブの世話をすることにしたのだった。
※ ※ ※ ※ ※
その頃、ポンタの街では…………
とある倉庫のような作業場で、仲の良さそうな夫婦が機械弄りに夢中になっている夫に朝食を早くすませるように催促をしていた。
「あなたー、何時まで陸上艇を弄ってるの? 早く食べてくれないと片付かないわ」
「ああ、分かった直ぐに行く」
妻は古びた陸上艇を見ると溜息交じりで言うのだ。
「この古い陸上艇はいつまで置いとくのかしら……」
「これは大切な物なんだよ、何時までだった置いとくさ」
「本当…… 仕方のない人ね……」
「それより、朝食の準備ができているんだろ?」
「そうよ、早く来てちょうだい」
「ああ」
そうして、夫婦は作業場を出ると、隣の家へと仲良く戻って行くのであった。
作業場を出る時に妻は古い陸上艇を振り返りながら思う。
こんな鉄の塊に、ヒトマルなんて可愛らしい名前まで付けちゃって…… 何がいいのかしらねぇ。
と……
同じベッドでは、スイがまだ可愛い寝息を立てながら寝ている。
一人で寝るのは怖いからと、布団にもぐり込んで来たのだ。
寝ている間も離れたくないのだろうか? 今も為次の袖を掴んだままで寝ていた。
スイはとても可愛い、少し頭が弱いが気立てもいいし、とても良く尽くしてくれる。
普通の男性ならば、こんな女の子が彼女になってくれたなら嬉しい限りであろう。
自分だって女が苦手ではあるが、嫌いではない、彼女になって欲しいに決まっている。
それに、スイは自分のことを好きなのは間違いないはずだ、それも分かっている。
だから、この娘を彼女にしたいと思うのも当然の考えだった。
だが、それは誤りだと思う…… そんなスイの好きと言う思いは、多分、愛とは違うのだから。
長年いたぶられ続け辛い思いばかりして来た女の子が、突然に優しくしてくれる人に巡り会えたならば、好きという感情が芽生えるのは当然だろう。
もちろん、それは愛などではない。
錯覚しているだけなのだ。
人の思考など、単純で曖昧なモノである。
それに、感情的なことより、もっと大きな問題がある。
いずれ自分たちは帰るつもりだ…… 違う世界に……
そんな場所に、この世界の人間を連れて行ける分けがない。
生まれ故郷を捨て、二度と帰ることのできない場所に付いて来いなんて到底言える分けもないのだ。
などと、思ってはみるものの、それも只の言い訳に過ぎないかも知れない。
本当はただ単に、面倒臭いだけなのだ。
女とは我儘で自分本位な考えを持ち、ヒステリックで手に負えない。
一時の感情で付き合ったところで、すぐに別れるはずだ。
結婚しても離婚するに決まっている。
離婚しない人々は子供と言う口実があるに過ぎない。
つまり、女とは面倒臭い生き物なのだ。
面倒臭いのは嫌いだ…… でも、エロイのは好きだ。
だから為次はスイに手を出すことはなく、見つめるだけであった。
布団を捲るとシースルーのスイのパジャマ姿が悩ましい。
つまり、スイをオカズにさせてもらったので、為次は無ノ境地に達して下らないことを考えていたのです。
先程、手を出していないと言ったが、おっぱいは少々揉ませていただいた。
ちょっとくらい、ええやろ的な考えで。
そんなバカなモーニングを迎える為次の所へ……
バタン!
突然、部屋の扉が開くと、正秀が豪快に入って来た。
相変わらず節操の無い奴だ。
「おい! 為次」
「なんでおじゃるか? 我は悟りを開いたのぞよ」
「そんなことはどうでもいいから、ちょっとロビーに来てくれ」
「いやどす」
正秀が大声で話すのでスイも目が覚めたようだ。
「はぁぅ、おはようございます、ご主人様ぁ」
「うむ」
「スイちゃんおはよう、為次を借りて行くぜ」
「はう?」
「早く来い、ターナ達が待ってるんだよっ」
「ターナが来てるの? でも、今日はもういいんだけど……」
「何がいいんだよ! 訳の分からないこと言ってないでさっさとしろ」
「どうかしたの?」
「なんでも、俺達に依頼があるんだとよ」
「しょうがないにゃー」
為次はしぶしぶベッドから立ち上がるとロビーへ向かうのだ。
そんな部屋から出て行く主を見るスイ。
「おっぱいのとこがベトベトするのですぅ」
「朝から変なとこにぶっかけてんじゃねーよ」
「へーい……」
そして、為次と正秀はスイを残し部屋から出て行った……
※ ※ ※ ※ ※
正秀に連れられ、ロビーへ行くと例の3人組がソファーに座っていた。
テーブルの上の大剣の上には、マヨーラが淹れたのであろうお茶が3つと、箱が置かれている。
「あら、タメツグおはよう」
挨拶をするターナ。
「うん」
「スッキリした顔してんな」
スレイブは言った。
「まあね」
為次はテーブルに近づくと、マヨーラの前に置かれているお茶を手にする。
「ちょっと……」
「いいじゃない、別に」
そう言うと、為次はマヨーラのお茶を飲むのだ。
「しょうがないわねぇ……」
「それで、依頼って?」
「ええ、これを見てちょうだい」
そう言うとターナは大剣の上にある箱を開ける。
為次は箱の中を覗き込んだ。
「青い石…… だね」
「マサヒデには説明しましたけど、これは高純度エレメンタルストーンですわ」
「へー」
「これをポンタの街に居る、サダムネに届けて欲しいのですわ」
「うん」
「俺は承諾したが、為次の意見も聞こうと思ってな、それでお前を呼んで来たんだ」
正秀は言った。
「別にいいんじゃない、ターナ達にはお世話になってるし、俺なんかの意見は要らないでしょ」
「そうだな。だが、一応お前は仲間だからな」
「うん……」
「それから、お気遣いは無用ですわ。報酬も出しますので」
「そうすか」
「10万ゴールドですわ。本当はもっとお支払いしたいのですが、街の修復費用もありますの」
「え?」
「あなたが破壊した屋台街や石畳ですわ。サーサラを捕まえた報酬と合わせてもっと出したいのですけれど、さすがに損害が大き過ぎまして……」
「うーん、そっか、じゃあ断れないね。でも、ニクは? 何もしてくれないの?」
「ニクミ様も修繕費を工面して下さいましたわ、それらを差し引いて10万ゴールドですの」
「分かったよ、で、ポンタって遠いの?」
正秀は答える。
「距離なら100キロ以上みたいだぜ」
「そっか、1日あれば行けるね」
「おう、そうだな」
「では、引き受けて下さいますのね?」
「ま、こちらも要望あるけど」
突然に要望などと言い出した為次に向かってスレイブは言う。
「要望の出せる立場かよ」
「どうかなー?」
「要望ですの…… それは、どのような?」
「行くのは明日以降、それと上級国民区画の入場証をちょうだい」
「入場証を?」
ターナは訊き直した。
「うい」
要望という程のことではないと、スレイブも思う。
「なんだ、そんなことでいいのか」
「いいよ」
「入場証…… ですの。どこか行かれますの?」
「ちょっとね」
「……分かりましたわ。それは直ぐに発行致しますわ」
「そりゃ、どうも」
「なんだ為次。そんなに上級国民区画が気に入ったのか?」
「まあね、静かでいいとこだし、街を出る前に散歩でもしようかと思って」
「なるほどな」
「では、依頼の件。お願い致しますわ」
「任せといてくれ」
正秀は依頼を引き受けた。
そこへ着替えたスイもやって来た。
賢者タイムが終わっていた為次は、スイを見るとちょっと後ろめたい気分になったのだが、アレは男の性だと割り切ったのでした。
「皆様、おはようございます」
「やあ、スイちゃんおはよう」
「ようやく起きたわね」
正秀とマヨーラはスイを見ると言った。
「はい、直ぐに朝食の準備をしますね」
「ターナ達も食べて行くだろ?」
正秀は訊いた。
「せっかくですので、頂きますわ」
「おう、スイちゃんみんなの分も頼むぜ」
「分かりましたです」
スイは早速、朝食の準備に取り掛かる。
するとスレイブはマヨーラを振り向いて言う。
「なあ、マヨーラは作らないのか? 朝食」
「なんで、私が作るのよ」
「料理するんじゃなかったのか? さっきそう言ってたろ」
「う…… 言ったけど……」
マヨーラはマサヒデをチラリと見る。
「そ、そうね、私も作るわ……」
「マサの食事を作らないとねー、うひひ」
「うっさいわよ! タメツグ」
マヨーラも台所の方へと行ってしまった。
「なんだ、お前らそう言う仲なのか? マサヒデ」
スレイブは正秀に訪ねた。
「いや、そうでもないが」
「ふん、まあいいか」
そうして、マヨーラとスイの作った朝食を皆で食べるのであった。
朝食の最中に為次は約束の入場証をターナにせがんだ。
特別な用紙が要るのかと思ったが、適当な紙にターナ直筆の入場許可を記載した文とサインで大丈夫らしい。
だから、直ぐに入場許可証は貰えた。
……………
………
…
食事が終わると、さっそく為次は上級国民区画へと向かおうとするのだ。
「じゃあ、俺は上級区画に行くお」
「なんだ? 一人で行くのか?」
正秀はてっきりスイと一緒に行くのだと思っていた。
「うん」
「スイも行くのです」
「スイはお留守番ね」
「スイも行くのです」
「ダメなのです」
「行くのです!」
「ダメ」
「むー! ご主人様と一緒がいいのです!」
「ダメ」
「……みゃぁーぁぁぁ、うえぇぇぇん……」
等々スイは泣き出してしまった。
それでも為次は頑なに拒否する。
「ダメ」
「ご主人様のバカー」
スイは叫びながら、為次の部屋へと駆け込んでしまった……
それを目で追いながら正秀は言う。
「連れて行ってやればいいだろ……」
「ダメ」
「はぁ…… なんでだよ」
「ダメ」
「はぁ、分かったぜ、好きにしな……」
「うん」
「んじゃ俺は何をしようかな」
「それなら俺が稽古をつけてやるぜ」
「ほんとか!? 頼むぜスレイブ!」
「おう、任せときな、この前約束したしな」
「やったぜ。それじゃ、今日はそれぞれ自由行動で、明日の朝一でポンタへ向かうぜ」
「りょかーい」
そんなこんなで、正秀はスレイブと大剣の稽古をすることとなり、為次は上級国民区画へと向かうのであった。
レオパルト2を軽くしたい為次であったが、スイがふて腐れているので今回は諦めた。
マヨーラとターナはスイが閉じ籠ってしまったので、昼飯とかの正秀とスレイブの世話をすることにしたのだった。
※ ※ ※ ※ ※
その頃、ポンタの街では…………
とある倉庫のような作業場で、仲の良さそうな夫婦が機械弄りに夢中になっている夫に朝食を早くすませるように催促をしていた。
「あなたー、何時まで陸上艇を弄ってるの? 早く食べてくれないと片付かないわ」
「ああ、分かった直ぐに行く」
妻は古びた陸上艇を見ると溜息交じりで言うのだ。
「この古い陸上艇はいつまで置いとくのかしら……」
「これは大切な物なんだよ、何時までだった置いとくさ」
「本当…… 仕方のない人ね……」
「それより、朝食の準備ができているんだろ?」
「そうよ、早く来てちょうだい」
「ああ」
そうして、夫婦は作業場を出ると、隣の家へと仲良く戻って行くのであった。
作業場を出る時に妻は古い陸上艇を振り返りながら思う。
こんな鉄の塊に、ヒトマルなんて可愛らしい名前まで付けちゃって…… 何がいいのかしらねぇ。
と……
3
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる